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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

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招かれざる客の処遇 3

 ちょっと色々と取っ散らかってきたような気がする。私は頭があまり良くないので、しっかり話を整理しないと段々話を追えなくなってくる。

 えーと・・・。

「ノア。私、寒い所は平気だよ」

 ヤイヤイやり合っていたビアンカ様達がピタリと口を閉じた。

 お祖母ちゃんの家は東北にあったから、お正月に泊まりに行った時は毎年雪が降った。積雪が多い時は雪かきも手伝った。隣近所の人達と一日中雪かきをしていたようなお正月もあったなあ。

 きっとノアと一緒なら、そんな寒い場所で暮らすのも楽しいと思うけど。

「でもね。私、エスティナで暮らせるように少し頑張ってみたい。今日ここでしている話って、全部繋がってると思うんだ。ビアンカ様とサージェ先生は、国王様にスタンレーへの対応を相談したいんですよね?」

「そうだな。誰に相談をと考えれば、やはり国王になるな」

 私の問いに、ビアンカ様とサージェ先生は頷いた。

「それで、私の問題なんだけど。もう王族達にバレちゃったし、こそこそ隠れる必要も無いですよね。それで、もし王都へ呼び出されたら、国王様にエスティナにずっと居たいですって、私とノアの気持ちを伝えたいと思う。それでも私達の言う事を聞いてくれないなら、その時はノア、私と余所の国に行ってくれる?」

「カノン、喜んで。あなたが居る場所が、私の居る場所ですから」

 ノアは私の手を握ったまま、ニッコリと微笑んでくれた。

「それじゃ、ビアンカ様。サージェ先生。私、もし国王様に呼び出されるなら、一度話をしに行ってこようかと思います」

「その時は当然、私はあなたと行動を共にします」

「ありがとう、ノア」

 ノアはお願いしなくても一緒に来てくれるもんだと私も思っているよ。

「私も行くぞ」

 そして意外な声はビアンカ様からだった。何を驚いている、と。ビアンカ様はキュッと眉間に皺を寄せて私の頭を揉んで来る。

「可愛い弟子の進退に関わる話だ。師の私が同行するのは当たり前だろう」

「あ、ありがとうございます。ビアンカ様」

 これには正直驚いた。まさかビアンカ様が国王様との話し合いにまで付いて来てくれるなんて。ビアンカ様はグリーンバレー防衛の要なんだけどいいのかな。

「エスティナに隠して守り通すつもりでいたのだが、当のカノンが腹を括ってくれたのだからな。全く私の弟子は潔いな!」

 ビアンカ様は大笑いしながら私の頭をぐちゃぐちゃにしてくる。

「よし、国王がカノンに対してとやかく言ってくるようなら、この私も国王の相手になってやる」

「そうか。カノンの件を考慮せずに良いのなら、俺は当初の予定通り塔の爺共に大森林のスタンピードとスタンレーの結界、聖女降臨の因果関係についてそれらしい学説を発表させよう。それから国王と交渉だな。ジュリアン殿下、今回あなたに頼む事は特に無さそうだ。お好きに過ごしてお好きな時に王都に戻られると良い」

 国王が何か言ってきたらこちらの希望について話をしてみるという、私の行き当たりばったりな案が採用され、それに伴いビアンカ様とサージェ先生が今後の動きをサクサクと決めていく。

「ちょっと待て!お前達、私には何も利用価値が無いと言うのか!」

「はっきり言わせて頂けばそうです。王子殿下と組む事に、こちらとしての利点を特に見出せませんでした。私達は自力で王族達と対決します」

 ノアにしては全く相手に気遣いの無い直接的な物言いだった。

 協議の結果、第二王子には特に使い道が無いと結論が出たのだった。第二王子はノアに言い返せず、悔しそうにグヌヌと歯を噛みしめている。

「頼む!お前達の力を貸して欲しいのだ!」

 とうとう恥も外聞も、なけなしの王族のプライドもかなぐり捨てて第二王子が頭を私達に下げて来た。

 うーん・・・。

 可哀想っちゃあ、可哀想なんだけどね。

 第二王子のお母さんは物凄い美人さんだったのだそう。それで身分が低めなのに国王に望まれて第二王妃となった。国王もさあ、自分の手元に置くならちゃんと妻子を守れよって思うんだけど、第二王妃はともかく、第二王子の事はあんまり可愛がっていない感じだよね。子供は生まれを選べないってのは、王族にも言える事なのかもしれない。

「俺が臣籍に下ると言っても、王位継承権を返上すると言っても、兄上は俺を信用しては下さらなかった。俺が兄上を殺め、王太子の座を奪うという考えに囚われているのだ。俺が生き続ける限り、兄上も王妃も俺の命を狙い続けるだろう。だが俺だって、望んで第二王子として生まれた訳じゃない!俺は王位など望んでいない!それなのに俺は、ただ生きる事すら許されないのか!!」

「!」

 第二王子が叫んだ時だった。

 第二王子の碧眼が金色に光り、全身が淡い金色の光に包まれた。

「ビ、ビアンカ様。第二王子の目と体が」

「む・・・」

 うわあ・・・。アニメの効果みたいに、第二王子の全身が金色のオーラに包まれている。目も金色のまま輝いている。何これ。

 眉間に皺を寄せて目を眇めるビアンカ様と、目も口もまん丸にした私に凝視されて、第二王子も興奮から我に返った。

「な・・・、何だ。どうかしたか?」

 あんまりにも凝視する私とビアンカ様を前に、第二王子は戸惑いつつも居心地が悪そうにしている。

 でも依然として第二王子の全身は金色に光り輝くままだ。

「カノン。お前の目に第二王子はどう見える?」

「全身金色に光っています。目も金色です」

「目が?」

 私の説明にサージェ先生が食いついた。

「ジュリアン殿下、失礼する」

「う」

 第二王子の隣に移動したサージェ先生が第二王子の顔を無遠慮に掴み、下瞼を押し下げてジーッと第二王子の瞳を覗き込み始めた。

「カノン。私には第二王子の周囲を金色の細かな粒、金色の砂塵のような物がずっと体を風と一緒に取り巻いているように見える。瞳は、金色に輝いては見えんが・・・」

 私と見え方に違いはあれど、ビアンカ様にも第二王子が金色に光って見えているようだ。

「んー・・、お。殿下の虹彩が変化しているな。いつからこのような色彩に?ベースは濃い青だが、瞳の中心から放射状に煌めく金が伸びている。これはなんとも美しいな」

「いつ変化したかなど、知らん」

 第二王子は我慢強く、サージェ先生が顔面を押さえつけて瞳の観察をしてくるのを許して大人しくしている。

「サージェ、これは誰にも言った事は無かったが・・・。先代ラシード王は、強く美しい金色の光を常に全身に纏っていた。当代のジギムンド王は何の色も纏っておらん。第一王子もな」

 ビアンカ様の発言に再び室内には沈黙が降りる。

「ビアンカ様。殿下の金色は何なのか分かりますか?」

「わからん。金色を纏っていた人間は先王しか知らん。他に私に見える物は、人や獣に纏わりつく黒い穢れだけだからな。金色以外の色を纏っている人間も見たことは無い。ちなみにカノン、お前は命の息吹とやらを発しているそうだが、私には無色透明、何の色も見えんぞ」

「そうですか」

 突然金色に発光し始めてしまった第二王子について、この場に理由が分かる人は居なかった。

 ならば、理由が分かりそうな相手に尋ねてみるしかないよね。



「お、おい!娘!だ、大丈夫なのか・・・・!」

「殿下、大丈夫です。白竜は人間を食べません。齧ったりもしません」

「し、信じるぞ!信じるからな、娘!」

「カノンが大丈夫だと言っているのです。無駄な抵抗は止めて、もっとこちらに近づいてください」

「ま、もっと、ゆっくり!うわああああ!」

 両足を突っ張って頑としてその場に留まろうとする第二王子の手をノアがグイと引っ張る。

 私とノアと第二王子がワチャワチャ騒いでいるのは、エスティナ防護柵の真ん前だった。

 そして私が呼び出した白竜は防護柵に寄り添うようにして寝そべって、防護柵の天辺の円錐状の丸太に顎の下をコシコシと擦っている。防護柵の天辺の円錐の突起が顎の下を掻くのにとっても使い勝手が良いらしい。

 ちなみに白竜の呼び出し方だったんだけど、防護柵前に来てから「白竜―」と空に向かって声を上げたら普通に来てくれた。私の声が白竜の寝床まで物理的に届くわけが無いから、やっぱり私と白竜は何か精神的な繋がりがあるのかもしれない。私が人外の可能性もますます高まったけど、今はその事は置いておく。

 私は防護柵の5メートル位の手前、白竜の顔の下に立つ。

 私の後ろには第二王子を引きずりながら近づいてくるノアと、更にその後方からゆったりと歩いてくるビアンカ様とサージェ先生がいる。防護柵での白竜との対面も4回目になり、私達も白竜に慣れたものだった。

 防護柵の傍の物見櫓にいる、見張り番の冒険者も取り乱して鐘を鳴らすことも無い。

『娘。変わりないか』

「元気だよ、白竜。来てくれてありがとう」

『お前が呼べば、いつでも何処へでも。地の果てまでも駆け付けよう』

 ブフーと森の香りの鼻息を吹きかけながら、白竜が答える。

 呼んだらそんなにホイホイ来てもらえるもんなの?白竜、私が思う以上にフットワークが軽いらしい。でも呼ぶ時と場所は、考えないとなー。エスティナの防護柵近辺なら、この先冒険者の人達も慣れていってくれるかなと思うけど、領都で白竜を呼ぶわけにはいかないだろう。大パニックになっちゃうよな。

 白竜を見上げていると、私の隣にノアが立つ。そのノアは及び腰の第二王子の左手首をしっかりと握っていた。

 その第二王子は、うん。今日も金色のオーラ的な物に包まれているし、瞳も金色に輝いているように見える。第二王子が金色に発光し始めてから3日経つのだけど、第二王子が纏う金の光は一過性の物ではなかったようだ。

『人の王、久しいな』

「・・・・・」

 白竜に第二王子を紹介しようと思ったら、白竜から先に第二王子に親し気に声を掛けてきた。

「えーと、殿下。もしかして、白竜と以前からのお知り合いでしたか?」

「・・・そんな訳があるか。鐘が鳴り響いた日に初めて見たに決まっておろうが」

 第二王子の声ちっさ。

 なるべく白竜を刺激したくないという第二王子の気持ちがひしひしと伝わってくる。

 ノアに左手を掴まれている第二王子は逃げる事も出来ず、ノアの身体になるべく体を隠し、白竜の視線から逃れようとしている。でも残念ながら、白竜はもうバッチリと第二王子を認識しているんだけど。

 しかし、白竜の言う人の王とは?

「ビアンカ様、サージェ先生。白竜が殿下を「人の王」と言っています。久しぶりだなって、とても親し気です」

 私が白竜の言葉を伝えると、ビアンカ様とサージェ先生は考え込み始めた。

『しかし人の王よ、その姿はどうした。しばらく見ない内に命の息吹が随分小さくなった。穢れも凝り固まっているな。障りがあるならば我が娘に見てもらうがいい』

「あと、殿下の命の息吹が前よりだいぶ小さくなって、穢れも固まっているそうです。殿下に、私に見てもらえって勧めています」

「命の息吹だと・・・?」

 第二王子の顔色が悪くなった。

 第二王子は自分の生命力だと誤解しちゃったみたいだけど、白竜の言う命の息吹って魔力とか体力の残量ってよりも、体力と魔力が充実した時に体外に噴き出す生命力の発露のみたいなものだろうと、これまでの白竜との対話の中で推測している。


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― 新着の感想 ―
でた、白竜診断! やっぱり穢れたっぷりかー
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