表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/110

招かれざる客の処遇 1

 アストン王国には2人の王子が居る。

 1人は、ベルトラン第一王子。御年24歳。母親は第一王妃。第一王妃の実家はアストン王国の侯爵家で、母親の実家の権力、影響力は大きい。

 もう一人は、ジュリアン第二王子。御年24歳。母親は第二王妃。母親は子爵家の出。母親の実家の力は、第一王妃と比べるまでもない。

 この2人の王子は同じ年に生まれたのだが、第一王妃の御子が1カ月だけ早く生まれた。

 たった1カ月差ではあるが先に生まれた御子が当然第一王子となり、アストン王国王族の歴史を振り返ってみても、通例であれば第一王子が王太子となる。

 第一王子は現アストン王国国王、ジギムンド王に瓜二つ。

 第一王妃に溺愛され、国王からもまあまあ愛されている。

 ベルトラン第一王子は、国王と共通の趣味も持っていた。

 有能な人材の収集である。

 騎士、学者、音楽家、画家、ジャンルを問わず王宮に招き侍らせるのが、国王と第一王子の何よりの楽しみだった。

 ジギムンド国王は、同好の士でもある第一王子を憎からず思ってはいた。

 ベルトラン第一王子は、ジギムンド王と同じく容姿も中身も凡庸だった。その点も、現王は第一王子に親しみを覚える点だったかもしれない。

 一方で、第二王子は、父王、兄王子と比べて異質だった。

 第二王子は、ジギムンド王の父、先代ラシード王に瓜二つだった。

 先代ラシード王は豊かな黒髪に煌めく碧眼を持つ、眉目秀麗な美男子だった。そして更に、天は三物を与えたとでもいうべき文武両道の優れた王だった。20年の治世において、ラシード王は国内を良く富ませ、辺境の支援も手厚く行った。17年前、病により急逝した際は、アストン王国全体が長らく悲しみに包まれた。

 その後消去法にて次代の王となったジギムンド王にとって、先代アストン王は偉大過ぎる父王だった。そしてその父王に瓜二つの第二王子は、その容姿だけで周囲から愛される王子だった。

 それでも幼い内は、2人の王子は分け隔てなく育てられた。

 だが第二王子は大きくなるにつれ、先代ラシード王の生き写しのように聡明で凛々しく、美しい王子になっていった。

 先王と第二王子は陽気な気質もとても良く似ていた。第二王子は庶民との距離が非常に近く、時には城下町に降りて庶民の輪に入り、一緒に騒いで酒を酌み交わす事もあった。高貴な姿形の第二王子が城下町の庶民と肩を組んで一緒に酒を飲む様は、先代ラシード王の若かりし日の行いと重なった。先代ラシード王は貴族、庶民の区別無く、国民の全てを愛していた。

 容姿は先王に生き写し、そして先王と同じように貴族、庶民と分け隔てなく気さくに接してくれる。第二王子の人気は庶民、下級貴族の間で爆発的に膨れ上がった。

 第二王子こそ王太子に相応しいという世論が高まるにつれ、第一王子陣営は黙ってはいられなくなる。しかし第一王妃が国王に我が息子の立太子を迫るも、現王は世論を無視しきれずにハッキリと結論を出さない。

 業を煮やした第一王妃は我が子を何としても王太子にするため、第二王妃、第二王子への牽制を激しくしていく。その牽制は命を狙うものになるのはあっという間だった。

 油断をすれば命に関わる気の抜けない日々の中、心労に倒れた第二王妃は実家の子爵家の領地へ下がる事が国王より許された。それから第二王妃は王宮へ戻ることは無かった。

第二王妃が城を去ると、それからはもう誰に気兼ねすることも無く、第一王妃は第二王子の宮へ堂々と自分の手の者を送りこむようになった。

 第二王子の宮では、王子が幼い頃から面倒を見てくれた侍従、侍女達が全員が入れ替わり、第一王妃の息がかかった者達となった。自分の宮の中で事故に見せかけて命を狙われる。毒の混入の恐れがあり毎食の食事にも気を抜けない。そして日々命を狙われる中、とうとう唯一の味方である側近が王子の代わりに毒を受け、療養のために城を下がる事になった。

 孤立無援となった第二王子は、命を守る為に王宮から脱出したのだった。


「そんなこんなで、今現在崖っぷちに追い詰められて後がない、我が国の第二王子、ジュリアン殿下だ」

「サージェ!本当の事だとは言え不敬だぞ!」

 サージェ先生の流れる様な、アストン王国の2人の王子についての説明だった。

 そのサージェ先生に抗議の声を上げているのは、白竜のすったもんだで私もすっかり存在を忘れていた、冒険者風の怪しい男だった。

 何が怪しかったかって。

 その男は冒険者のような装いをしていたのだけど、顔は日に焼けないで真っ白。髪の毛も手入れされていて艶々の長髪を結びもしないで下ろしていた。そして細身タイプの冒険者と比べてみても、細すぎた。サイズの合っていない生成りのシャツの中で体が泳いでいた状態・・・。

 それは冒険者の装いをしていたからの違和感だったんだと、今日の姿を見て納得した。

 その怪しい男は、今は冒険者風の装いを脱ぎ捨て、お高そうな、アシュレイ様が着ていたような貴族服に身を包んでいる。というか多分、アシュレイ様の服なのかな。ちょっと見覚え有。

 アシュレイ様よりも細身だからかまだ服のサイズが合っていないけど、たっぷりとした純白の生地が使われた服を身に付けた男は、何処からどう見ても庶民ではなかった。

 前回遭遇した時は、致命的なまでに冒険者の格好が似合って無かったから違和感凄かったんだなあ。今のお貴族様の装いは、手足が長くてスタイルの良い男に似合っている。

 そしてその男は現在、領主館の中でも一番豪華な来賓室で軟禁されている。来賓室のドアの前には騎士が2名護衛兼見張りで24時間監視をしているそうだ。

 不敬だ、とかこの前もサージェ先生に叫んでいたけど、この男はそこら辺のお貴族様とか飛び越えて、なんと王子様だったのだ。

 その第二王子殿下が滞在して(軟禁されて)いる来賓室の応接セットには部屋の主である第二王子と、サージェ先生、ビアンカ様、そして私とノアが腰を降ろしていた。

 その第二王子は私の顔を見るなり、またもや妃にしてやろう!と言ってきたのだけど、帯剣を許されていたノアがすかさず抜刀。第二王子の鼻先に剣を突き付けた。

 死にたくなかったら軽口は控えろとビアンカ様に言われて、第二王子は発言をすぐに撤回した。「もう言わん!許せ!」と笑顔ですぐさまノアに謝る第二王子は、言動がやたらめったら軽かった。

 第二王子の容姿は黒髪碧眼の目を引く様な美男子なんだけど、とにかく陽気で明るい。そしてこちらの反応に構わずにグイグイ来る。サージェ先生が話す合間もまあ黙っていない。

 合間合間に口を挟んでくるので、隣のビアンカ様が黙ってろと終いには頭を押さえつけていた。

 サージェ先生から結構厳しめの第二王子のバックグランドを聞いたわけだけど、当の第二王子、底抜けに明るい。お城では四面楚歌状態だったんだよね?と思うんだけど、全然へこたれてない感がある。

 そして不敬だ不敬だと、二言目には口にする第二王子だけど、サージェ先生にもビアンカ様にもとても気安いように見える。

「あの、ビアンカ様とサージェ先生は、ジュリアン殿下とお知り合いだったんですか?」

「その通りだ、娘。サージェとビアンカは第二王子派だからな!」

「違う。王宮でウロチョロしているガキの面倒を見たら、それがジュリアン殿下だった。それから顔見知りではあるが、俺は中立派だ」

「私は第二王子派になどなった覚えもないし、そもそも第二王子と知り合った覚えもないな」

「全く、サージェもビアンカも慎み深いな。今なら俺の陣営の主要ポストの何処でも選び放題だぞ。遠慮などせず、とっとと俺の味方になれ!ビアンカ、俺の妃の座も空いているのだぞ。6年前のお前への求婚は無期限有効だからな」

「黙れクソガキが!」

 うーん。実情はサージェ先生とビアンカ様への第二王子の片思いといった所かな。ビアンカ様にも妃に来いと言った前科があるらしく、第二王子の言う、俺の妃になれ!は挨拶代わりっぽいと心にメモしておく。しかしこの第二王子、ビアンカ様に求婚するなんて怖いもの知らずというか、結構胆力があるんじゃないか。

 そしてこの場に私とノアが呼ばれた訳なのだけど、第二王子をこちら側に取り込むメリットがあるかどうか見極めるためだった。スタンレーに揺さぶりを掛けるために王族を動かしたいというビアンカ様の思惑もあるし、私に興味を示した第二王子をどうするかという問題もある。

 ケネスさんはアストン王国の一般国民である訳で、王族に対して気軽に口を利けるはずも無いので今回は呼んでいない。

 サージェ先生とビアンカ様は長年王宮勤めをしていて、王宮内での影響力も大きい。ビアンカ様は元魔術師団長であり、国王と直答できる身分だった。サージェ先生は賢人の次期候補として研究塔に国から招かれ続けているのを固辞し続けているのだとか。サージェ先生も国王と親しく話せる身分。何気にビアンカ様とサージェ先生も賢人のお爺さん並みに王族と距離が近かった事実を今知った・・・。

 まあそのように、国王と仕事を通して何度も顔を合わせているお2人にとって、赤ちゃんの頃から存在を知る第二王子は恐れ多くもなんともない存在だと、お2人は本人を前に言い放っていた。

「ははは、褒めるな褒めるな!俺は親しみやすさに定評のある王子だからな」

 それに対して第二王子はとにかく底抜けにポジティブ。

 そんな王族の威厳の欠片も無い、立場も微妙な第二王子を、どう利用できるかという話である。

 以前は王族にバレないように身を隠せと、私とノアはアシュレイ様から言われていた。

 でも今回の白竜の騒ぎで私の能力がバッチリと第二王子に目撃されてしまった。

 そして、もう一つ懸念点がある。

 すんでの所で賢人のお爺さん達を馬車に詰め込んで領都に送り返したものの、私が白竜の声が聞こえるって、お爺さん達にバレてたよね?お爺さんの1人が騒いでたよね?「その娘は竜の声が聞こえるのかー!」って。

 ギリギリで、アウト寄りのセーフだったと思い込みたかった私達に、お爺さん達を領都に送り届けてエスティナに戻ってきた騎士さんが「賢人の皆様はカノン様の能力について、思い切り興味を持たれていましたよ」と冷静にビアンカ様に報連相してきたのだ。

 だよねー!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ついに王族来ちゃったけど、微妙に王族らしくないね。これも新しい因縁になっちゃうのかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ