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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

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白竜との対話を経て 1

 白竜と対話をした日から4晩を経て、私は元の身体に戻った。

 白竜にはちょっと話を盛って、5回寝たら大きくなるよと言っておいた。白竜は私が幼児退行を起こした事にショックを受けて、魔力量が極限にまで減ってしまった私を前に泣き出してしまったので、大人の姿に確実に戻ってからもう一度会おうと考えたのだ。

 本当に大きくなった!と白竜には安心してもらいたいからね。


 春になって、白竜調査隊がエスティナに到着し、白竜の調査の末に解呪作戦の決行。

 昨年領都でビアンカ様が話していた予定が物凄い勢いで動いたなーって感じ。計画実行力と優れた指揮能力があるビアンカ様だからこそといった所だ。ビアンカ様は組織の長として立つ才能にも溢れる方なんだなあと改めて思った。私にとっては頼もしい魔術のお師匠様なんだけど、大森林では騎士団の人達に並んで良い返事をしたくなる場面が多々あったもんな。

「全くお前は。それもこれも作戦の要であり、白竜との対話も出来たお前が居てこその結果だったろうに」

 ビアンカ様の計画執行力を褒め称えていたら、隣のビアンカ様がむんずと私の頭を掴んでモミモミと揉んで来る。

「私の計画など、出たとこ勝負も良い所だった。全てはカノンの能力頼み。褒められるような物ではない。私ではなく、お前が凄いのだ」

 そう言われましても。

 この世界に来てから何でか知らないけど手に入れた聖女の力と、何でか知らないけど手に入れた動物に絡まれやすくなり、白竜にすら絡まれ且つ会話もできるスキル。自分の努力で手に入れた訳でもない力を褒められても、やっぱりピンと来ないんだよねえ。テリーさんに野菜の皮むきが早いって褒められる事の方がよっぽど嬉しい。野菜の皮むきは元の世界で物凄く練習したもんな!

「まあ奢らない所がカノンの美点ですよ。どうしても自分の立場が理解出来ないようですので、普段から一人歩きしない事だけを気を付けてもらえばもう、それでいいです。周囲の者がカノンの安全に気を付けるようにします。カノンも、どこかに出かける時はエスティナの中であっても、必ず私かグイード達かルティーナさんに報告してくださいね」

 ノアからの私のフォローのようでいて、とうとう私の危機感の無さに匙を投げるような発言がなされた。私も最近は自分の危機感の無さに自覚が出て来たので何も言えない。気を付けているつもりなんだけど、私が暮らしていた日本はこの世界とは比べ物にならない位に平和な国だったから、私の危機感の持ち方はてんでなっていないらしい。

「お腹を空かせた冒険者の前にフラフラ出てくるピーカのように、何が危ないのかカノンは分かっていないようですから」

 更にはノアからピーカを引き合いに出される始末。私、そこまで酷かった?私は自分の危機感の無さを棚にあげて、ピーカに気を付けなさいと注意をしていたという事なのか。

 でも確かに、この世界の知識が乏しい私は何が危ないのかまだまだ分かってない。こればっかりは、この世界で過ごすうちに経験則で覚えていく部分もあると思うし。

「ごめんね、ノア。私、この世界で何が危険なのか全然分かっていない事がやっと分かったよ。だから、エスティナでも一人で出歩かないように絶対に気を付ける」

「偉いです、カノン」

「偉いな」

「偉いぞ」

「良い子だ」

 そしてこの部屋のメンツ。領主館の会議室の中の1つで、6人掛けの大きい長テーブルが1つ収まっているだけの部屋に私とノア、ビアンカ様とサージェ先生、ケネスさんがいる。うん、私に激甘な人しかいないので、あまり皆さんのお褒めの言葉を真に受けてはいけない。

 さて今日集まったのは、白竜との対話内容の共有の為だ。

 冒険者風の変な男についてはもうしばらく放っておいても良いとサージェ先生が言うので、まずは明日会う予定の白竜への対応について相談し、話をすり合わせていく。

「白竜には高い知性があって、私と普通に話が出来ました。だけど私がこの世界の常識が足りない事もあって、理解しきれない部分も沢山あったと思うんです。なので、皆さんには白竜の話についての解説と考察をお願いします」

 そうお願いすれば、集まった皆さんはうむと真剣な顔で頷く。

 そうして、白竜との対話について皆さんに包み隠さず話して聞かせる事となった。

 私が特に疑問に思ったのは、白竜に我が娘と言われ続けている所かな。魂だか命の成り立ちが同じって言っていた。私、ひょっとして人間じゃない?みんなと同じ人間のつもりだったんだけど。

 他には、娘達って、私以外にも白竜が娘と呼ぶ人が居そうなこととか。娘の嘆きが大森林の魔獣達に悪さしているとかも言ってたなあ。嘆きや呪う気持ちが黒いもやになって、魔獣達を狂わせるとか。そして、その黒いもやは熊やイノシシから白竜の手に移っていた。穢れは命あるものに伝染していくっぽい。うーん、思った以上に深刻なのでは?大森林には黒いもやが付いた獣達がまだたくさんいると思う。

 白竜が自我を失った災厄になる一歩手前だった話をすれば、ビアンカ様、サージェ先生、ケネスさんは天を仰いだり、両手で顔を覆ったりして深くため息を吐いていた。本当に危機一髪、危ない所だった。

「娘達、という言い回しと檻という表現には思い当たる事があります」

 そう発言したのはノアだった。

「カノンはスタンレーから追放され、この国に逃げ延びて来た聖女ですから」

 室内にしばらく沈黙が降りた。

「・・・おい、おいおい。ちょっと待てよ。じゃあ、なんだ。獣達が狂暴化する呪いは、スタンレーの聖女達が原因って事か?長年、大森林の獣害の対応に頭を悩ませているのは俺達だけじゃない、他国も一緒だぜ?」

「いや、そう決めつけるには判断材料が足りない。あと、カノンは被害者だからな。きっとこれまでの聖女もな。聖女を責めるような流れになるのはいかん」

「・・・すまない、カノン」

 ビアンカ様の指摘にハッとして、ケネスさんが私に謝って来た。

「ケネスさん、大丈夫です。スタンレーでは、私は最低限の衣食住を与えられて放置されていました。スタンレー王国は、聖女を結界維持に必要な燃料位にしか考えていないようでした。スタンレー王国で私に一人の人として声を掛けてくれたのは、ノアだけでした。あのような環境では、元の世界に帰りたいと思い続けるのは当たり前ですし、この世界を恨んで呪ってしまうのも仕方がないかもしれません」

 でも私に限っては、3食ご飯を食べられた事で栄養状態がかえって元の世界に居た頃よりも改善していた事は黙っておく。

「ったく!胸糞悪ィ話だぜ!!」

 心優しいケネスさんは、スタンレーの可哀想な聖女達を思って今度は憤慨している。

「白竜が言う娘達とは、スタンレーの聖女達で、檻がスタンレーであると考えれば辻褄が合うような気がするな」

 サージェ先生の意見に、室内のメンバーも概ね賛成だった。なんで聖女が白竜の娘か、という疑問は残されているんだけどね。

 歴代の聖女達は多分、魔力を無理に搾り取られ続けて早逝した。可哀想な聖女達は檻から逃げる事が出来ずに、今も檻の中で眠っているという事なんだと思う。

「穢れや呪いの原因がスタンレーにあるなら、元を断たない限り大森林の獣は次々と狂暴化して、またスタンピードが起こるかもしれん」

「あ、その事ですけど、すこし次の穢れが発生するのに猶予があるかもしれません」

 サージェ先生の懸念ももっともだけど、私はスタンレーを追い出される前に暴虐王子達が言った言葉を思い出していた。

「スタンレーの魔術士が、私が結界の補修をしたのであと2年結界がもつと言っていました。その間に急いで次の聖女を召喚すると暴虐王子が言っていて、私を使って10年結界を維持する予定が狂ったとノアにすごく怒っていて」

「10年だと?」

 ビアンカ様が呟いて、会議室がまたシンと静かになった。

「10年搾取され続ける聖女と、10年おきに起こるスタンピード。嫌な符合だな・・・」

 サージェさんが苦虫を噛み潰したような渋い顔をしている。

 私が10年ぶりに召喚された聖女で、私が結界を修復した事が大森林の獣達に影響を及ぼしていたとしたら。

「・・・ひょっとしたら私が、去年のスタンピードを起こした原因かもしれません。白竜は、穢れに侵された獣達が苦しみの原因になった私を食べにエスティナに集まったって言っていました。私がエスティナに居る限り、私のせいでまた、エスティナにスタンピードが起こるかも」

「カノンの所為じゃねえ」

 私の言葉を力強く否定したのはケネスさんだった。

「エスティナのスタンピードは、ひょっとしたらスタンレーの聖女達が原因の一端なのかもしれないが、聖女達だって望んでこの世界に来たわけじゃねえ。誰のせいかっつったら、スタンレー王国だろ」

「カノン。私達を見くびるなよ?私達は小娘のお前にグリーンバレーの獣害の歴史を背負わせる気などさらさら無いからな。これから起こるかもしれん獣害もお前の所為ではない。国家間の問題であれば、尚更お前の出る幕は無い。もしも将来スタンレーとやり合う事となったら、矢面に立つのはスタンレーと国境を接する我々グリーンバレー騎士団だ。まあ、旗頭は国王代理となるアシュレイ、指揮官は私だな。得体の知れない結界の内に引き籠っているスタンレーなど、我々が一捻りにしてくれるわ」

「ありがとうございます・・・」

 ケネスさんとビアンカ様の言葉に、サージェ先生も力強く頷く。私の周りの大人達が、頼もしカッコ良すぎる。

 皆さんに頭を下げたら、涙が少し零れ落ちてしまった。ノアが何も言わずに私の頭を撫でる。

 私が白竜の娘と言われる謎はさておき、聖女不在の空白期間、2年間は聖女の恨みや呪いは発生しないのではないかと意見が出た。でもスタンレーでその話を聞いたのは1年前の事。実質猶予はあと1年だ。

「白竜の長年積み重なったのであろう大きな穢れは払われた。後は、森林内に居る穢れに侵された大型魔獣を全て殲滅出来れば、理論上スタンピードは起こり得ないのではないか。次の聖女召喚がスタンレーで行われるのか、聖女召喚がされた後、大量の穢れがスタンレーの周囲に放たれる事になるのかは様子を見るほかはないが」

「現在スタンレーに聖女が不在な事は確かです。その間に凶暴化した個体をとにかく間引いて行けば、ゴルド大森林の安全性が高まる事は間違いありません。今打てる手と言えばそれ位でしょうか」

「それで、カノン。白竜とまた会う約束をしたのだな?」

 サージェ先生の確認に私は頷く。

「はい。5回寝た後、防護柵の所で会うという話になったので明日ですね。私が幼児退行を起こして、残存魔力がとても減ってしまった事にショックを受けていたので、大人に戻った体を白竜に見せて安心させたいと思います」

「そうか。その時にはもちろん我々も同行する。カノン、白竜が知る知識を他にも色々と引き出せたらと考えているんだ。カノンが疑問に思った事、分からない事があれば俺達にも話を振ってもらえるか?白竜の言葉を俺達にも共有してくれ」

「はい。多分、大丈夫だと思うんですけどねー・・・」

 人の常識が通じる相手じゃないかもだから、気を付ける必要はあるよね。

 何せ人と関わることも無く森に長く生きる白竜なので、こちらがビックリするような言動だってまだまだすると思う。白竜は穏やかな気質だと思うけど、人間にとって安全とは言い切れない。

 これから交流を深めながらお互いに理解し合っていかないとね。

 明日は連絡を取り合いながら、午前中には防護柵の前で白竜を待とうという事になってその日の会議は終了となった。

 しかし、白竜は人間達の常識では計れない生き物であると、私達は分からせられたのだった。


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