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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編
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【閑話】秘密の乙女会とエスティナ抱き枕ブーム 中編

 ずっと私の話だけど、みんなのコイバナもこの後引きずり出してやるからな!

「あっはー。ノアの鉄壁の守りは領都でも健在だったもの。まあ、私とラッシュもカノンちゃんから離れなかったし、私達の守りを突破してカノンちゃんに接触したのはあの若手の騎士達だけだったわ」

「ああ」

「あの、3人ね」

 あの3人とは、今エスティナで無給無休の哨戒任務をさせられている、騎士団の訓練場で私を揶揄ってミンミとベル様にボッコボコにされた若手騎士の3人の事だろう。

「あの3人、エスティナでどんな感じ?」

「エスティナ送りになった経緯はアシュレイ様からの手紙で詳しく書かれていたし、ケネスさんや他のベテラン冒険者達が最初に相当しごいていたわ。今は哨戒任務のチームとして普通に組み込まれてる。まあ真面目に奉仕作業しているわ」

 そうかー。ルナの話だとあの3人は腐る事なく頑張っているようだ。真面目に奉仕作業に取り組めば、上手くいけば春には騎士団に復帰できるもんね。あんなしょうもない事で人生を棒に振る事無く、ちゃんと元居た場所に戻れると良いけど。

「カノンちゃんにした事は騎士団の規律的に許されない事だったけど、場所と相手が違ったら若い男が町娘にちょっかい掛けるってよく見るものだったわ。カノンちゃんがどういう存在か周囲の態度から察する事が出来ない時点で、おバカな未熟者でしかないけどね。そんな大バカ者がカノンちゃんから相手にしてもらえる訳が無いわ」

「ええー。私はそんな大層なもんじゃ」

 ミンミがブニッと私のほっぺに人差し指を突き刺してきた。

「ほらカノンちゃん、またー。私なんかって、言わないの。何回言っても分かってくれないんだから」

「ごめん」

 めっ!と眉間に皺を寄せて見せたミンミはすぐに笑顔に戻る。

「それと、カノンちゃんの事を熱心に見ている騎士は他にもちらほら居たわよ」

「ミンミの事見てたんじゃないの?」

「あはは、それは無いかなー」

 笑って否定するけど、ミンミは健康的な褐色肌でスタイルも良く、漆黒の美しい髪を持つ美人だ。モテると思うんだよなあ。まあ、そう言ったらこの場に居る3人全員がすこぶる美人。しかも元気系と清楚系とお色気系。バラエティに富んでいる。

「ねえ、みんなは恋人か好きな人は居ないの?」

「居ない。最低限父さんより強くて稼ぎがある人じゃないと嫌」

「居ないなー。私より弱い男は嫌かなあ。あと、私より稼げる男が良い」

「今は居ないわね。私は父さん位に強くて父さん位に料理上手な宿の婿に来てくれる人が良いの」

 3人中2人は少しファザコンが過ぎると思う。

 でもなあ、ダンカンさんもテリーさんも良いお父さんだもんなー。そういう考えになるのも仕方が無いか。

 ちなみにルナは20歳。ミンミは24歳。元居た世界基準では全然若いお嬢さんなんだけど、賢明にもアリスはこの2人には嫁ぎ遅れなどとは言わなかった。2人には言わずに私にだけは遠慮なく言う辺り、アリスめ!と思うけど、私は心の広いお姉ちゃんなので可愛い妹を許してやるのだった。

「そっかー。でもいつかはみんな結婚したいと思ってる?」

「もちろん!私は結婚して宿を継いで、子供もたくさん産むわ!お父さんとお母さんとお祖母ちゃんに可愛い赤ちゃんを見せてあげたいの」

「私は一生ギルド窓口担当でも良いかな。道具屋は遠縁の子が継いでくれるっていうし。当分私は冒険者全員の心の恋人でいるわ」

「私は良い縁があったらねー。30代になったら子供だけ作るのでも良いかな。私の母さんは40過ぎて私を産んだしね。旦那の当たりが悪くて生活が不安定になる話も聞くし、私は自分で今の内に将来の生活費を稼いでおきたいかな」

 これまた三者三様の考え。

 なんかそれぞれらしくていいなー。

「でもカノンちゃんは選択肢無いかも」

「性格はともかく、ノア以上に顔が良くて稼げる男はまずいないわね」

「ノアさん以外をカノンが選んだら、相手の男が無事でいられるかどうか・・・」

「そんな、そんな・・・。わかんないじゃん!」

 異議あり!異議を申し立てます!

「ノアにだって選ぶ権利があるんだよ!何でか今は私に気があるみたいだけど、人の心は変わるじゃん。ところ変わって出会いがあれば、ノアも私以外に好きな人が出来るかもだし、私もノア以外に好きな人が出来るかもしれないし。もし私がノア以外の人を選んだら、ノアは兄として祝福するって言ってくれたし!」

「ひゃあああー」

「その場面を見たいけど、同じ部屋には居たくない!」

 ミンミとアリスが悶えて敷布団の上をゴロゴロしている。

「ふーん。じゃあ、ノアがカノン以外の女を好きになったら、カノンは妹としてノアの恋を祝福するの?」

 ルナの質問に私はしばし考える。

「・・・す、するよ!」

「即答できないじゃないのよー」

 ルナが私のほっぺをムニムニと揉んで来る。

 ちょっと想像してみる。

 そう遠くも無い将来に、なかなか結論を出さない私に業を煮やしたノアが、素直にノアの好意を受け入れてくれる物凄い美人と付き合い始めるのだ。

 私は、ああノアにお似合いの人がとうとう現れたと思って、妹としてノアとその女性の幸せを祝福する。

「ひぐう」

 私の鼻から変な音が鳴った。

「あーあ。ルナが泣かせた!私の可愛いカノンちゃんを苛めないでよねー」

「カノン、やっぱりノアさんが居なくなったら悲しいでしょ?」

「ち、違う。これは、お酒のせいだから。ひっくぅ。酔っ払ってるせいだからあ。ノアが私以外の人を好きになったら、ちゃんと良かったねって言う、ううぅー」

「全くもう。とっとと認めればいいのに、何が引っかかってるのかね。この意地っ張りは」

 質の悪い泣き上戸の酔っ払いと化した私を、ルナが懐に抱き込んでくれた。若手冒険者達垂涎のお色気受付嬢の抱擁、ごちそうさまです。

「よっと」

 そしてルナは私を抱き込んだまま布団に横になって添い寝の体勢に。

「カノンがだいぶ酔っ払ってるわ。今日の所はもう寝ようか。乙女会の続きはまた今度ね」

「そうね」

「みんな、お休み」

 そう言ってミンミとアリスも私の背後で寝具を整え始めた。

 私は酔った自覚が無かったけど、もう瞼が自然に落ちてきてしまう。

「ふふ。泣かせたお詫びに優しくしてあげるわよ」

 私の背中にルナが腕を回して、背中をトントンと叩いてくれる。あ、この感覚。


「やっぱり添い寝、気持ちいい」


「・・・きゃあああー!」

「カノンのエッチー!!」

「な、何で?!エッチじゃないし!一緒に寝るだけで何もしてないし!」

「「「きゃあああーー!!」」」

 もう部屋のランプの火も落としたのに、みんなが叫び始めるから私も真っ暗な部屋の中、布団から起き上がった。おかげで眠気も吹き飛んだ。

 その時ルナの部屋がノックされ、ゆっくりとドアが開いた。

「・・・お代わり、要るわよね?」

 ドアの向こうには笑顔でランプを持つカティさんと、お盆に山盛りのおつまみやおやつ、飲み物のお代わりを持ったダンカンさんが居た。

 ルナがお盆を受け取ると、ミンミがすかさずもう一度部屋のランプを付ける。

「騒いでごめんなさい」

「すみません」

「かまわん。存分に騒げ」

「良い夜ねえ。たっぷり夜更かししなさいな」

 カティさんとダンカンさんは長居はせずに食べ物飲み物を手渡すと、すぐにドアの向こうに消えた。ほんとに良いお母さんとお父さんだなあ。

「さてと、応援物資も届いたし。秘密の乙女会、第二部の開催よ。カノンの気持ちいい添い寝の話をたっぷり聞かないとね」

 私を見てルナがニヤリと笑った。

 私の両腕をミンミとアリスが両脇から抱き込む。そんな捕まえなくても、この部屋の何処にも逃げ場は無いじゃないか。

「カノン。今後の参考にするわ。男の人と一緒に寝ると何が気持ちいいの?どんなふうに気持ちいいの?」

「いやあー!アリスのその聞き方、なんか嫌―!」

「しっかし、ノアの忍耐力にも驚きよね。カノンちゃん、ほんとにノアに何もされてないの?」

「されてないよ!」

 せっかくほろ酔いで気持ち良く眠れそうだったのに!!

 みんなに囲まれてあれこれ事細かに聞かれて、ノアと一緒のベッドに眠っている時の事を色々と思い出す。幼児退行中は全然恥ずかしくも何ともないのにな。

「本当に?少しも?」

「ほんとに!されて、ない・・・」

 大人の身体に戻ってからも思い切りハグされる事とか、領都でも一緒のベッドで寝ていた事や、私が寝ぼけて自分からノアに思い切り抱き着いて寝ていた事とか思い出して、グワッと顔が熱を持った。ノアが私の頭頂にキスを落とした事まで思い出すと、胸までドキドキしてきてしまう。

「あー、ちょっとはされたんだ?」

「そそそんな、凄い事はされてない!チュウだけ!」

「「「きゃああーー!!!」」」

 もうこうなっては私が何を言おうがこの3人に燃料を投下するだけだ。

 でもノアの名誉?の為にもこれだけは言っておかないと!

「チュウって言っても頭の上にだからー!」

「えっ」

「・・・ちょっと」

 私のチュウの説明の後、乙女会の熱狂が嘘のようにスンッと静まった。

「カノン、頭や頬にキスなんて家族でもするわよ」

「カノンちゃん、聞きたいのはそういう話じゃないんだなー」

「それじゃあ、気持ちいい添い寝の話に戻るわよ」

「ひいい」

 その後私は、すったもんだの末に別々に寝る事になったけど一人寝が寂しいという恥ずかしい気持ちを白状させられてしまった。アリスは顔を真っ赤にして叫ぶし、ミンミとルナはニヤニヤしながら更に私を追及してくる。

 みんなそれぞれのコイバナにはなかなかならず、私が吊るし上げられ続ける時間が続く。

 秘密の乙女会は深夜にまで及んだのだった。



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