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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編
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グリーンバレーの魔女と弟子 10

 気が付けば留守番で残っていたというベテラン騎士の方達も、いつのまにやら訓練場に集められていた。

「動物達に好かれ、傷を負った我々を癒してくださるカノン様はまるで物語の聖女様のようだと、騎士団内ではよく話しておりました。才ある方としてノア様と一緒にアシュレイ様が城内へと招かれた方です。我々はカノン様、ノア様には敬意を持って接し、有事には命を投げ出してでもお2人をお守りするつもりです。指示が無くとも、主の臣としてそう心得るのが当然の事です。ですが、この3人は、何を思い違いをしたのか・・・」

 訓練場に集まったベテラン団員さん達10人程が若手の騎士の左右、後ろに立ち、全員が一斉にアシュレイ様と私に向かって平伏した。

「この者共の不始末は、現在城の留守を預かっている我々の責任です。ですからどうか、連帯の咎は我々までとさせていただきたく。カノン様、我々が共に罰を受けるという事でどうか、騎士団の此度の失態をお許しください」

 若手の騎士達の周囲でベテラン騎士達が土下座をすると、若手の騎士達は堪え切れずすすり泣きをし始めてしまった。

 うん。これ以上大きくなれないって位に騒ぎが大きくなった。

「のあ、あしゅれいしゃま!おねがい!ちょっとしょうだんしゃしぇてぇー!」

  

 それから今回の落し所として、私が望む形の若手騎士達への罰が言い渡された。

 私を揶揄って笑った若手騎士の3人は半年間、エスティナの冒険者と共に哨戒任務に就く事となった。もちろん無休無報酬。エスティナでは領主館預かりとなり、監視ももちろん付く。そして半年間の働きぶりをみて、騎士団に復帰させるかを判断する事となった。

 私の希望は3人がエスティナに行って、エスティナの人達がどんな思いでグリーンバレーの防衛戦を守っているのか知ってもらう事。エスティナの人達の想いが分かったら、訓練を受けに来たエスティナの子供達の前でふざけたりなんか絶対に出来ないでしょう。絶対にするんじゃねえぞ。これで心を入れ替えられないようなら、私ももう知らん。

 今回一番可哀想なのは、突然に自分達の指導役が殴られるのを見せられた子供達だったよ。

 領都の騎士団に入団するという事は、何かしら守りたいという志は持っていた筈だよね?まだ3人の騎士達に良心がある事を信じたい自分もいる。

 今回の顛末の詳細は手紙にしたためられ、付き添いという名の監視役の騎士さんがケネスさんに渡す事になった。うーん、ムキムキのオジさん達に若手の騎士達は揉まれそう。体つきからしてして基礎体力も全然違いそうだもん。エスティナのオジさん達は、予備兵力の人達でさえも3人の騎士と比べて余裕で体の厚みが勝ってるな・・・。

 めっちゃ扱かれそうだけど、それを乗り越えた先で更生出来るかって所だもんね。

 私はもちろん見送りなんかしなかったけど、付き添いの騎士さんと一緒に若手の3人はグスングスンと鼻を啜りながらエスティナに旅立っていったそう。

 それからしばらくして、遠征訓練から帰って来たステファンさんと騎士団長さんが私に謝罪とお礼を伝えにやって来た。

 カノン様のご厚情に感謝いたしますとか言われて、何が?と疑問で一杯だったんだけど、ノアが言うにはスタンレーならその場で首が物理的に飛んでいる所だったそう。

 お国が変わればってやつだね。じゃあ、アシュレイ様の領都追放だって十分優しい罰だったんじゃん?そして、半年の奉仕作業の後、働きによっては騎士団復帰の目もあると言う私の処罰は激甘だったという訳だ。

 でもアシュレイ様と相談してそれでよし、となったからまあ良いのだ。

 ノアが口酸っぱく一人で出歩くなというのは、こう言う事が起こるからなんだな。今回はミンミも一緒だったんだけど、女2人しかいないと言う所であの3人も魔が差したというか、先輩方の目もない解放感からバカやっちゃったんだろうなー。

 それか、先輩方が礼を持って接している私が、ただの庶民にしか見えなかったというのもあったのかな。私は気に入っているけど、ルティーナさんのお下がりの町娘風ワンピースを毎日着てるからね。

 これからはミンミと2人だけで出歩かない方が良いかノアに確認すると、「ミンミの戦闘力には問題ありませんし、女性だけだと侮る愚か者の炙り出しに役立つ場合もあるので、城内に限り許可します」と、はんなりと微笑まれた。

 うーん、今回みたいな騒ぎはもうごめんだから、愚か者が居たら出来るだけ近づかないように気を付けたい。でも良い人か愚か者かを見極める自信は無し。

 私が出来る事は絶対に一人で部屋の外に出ない!位だね。



 とまあ、そんな大騒ぎを経て今に至っている訳だけど。

 私に変な事をしてきたのは後にも先にもその若手騎士3人だけだった。

 他の先輩騎士の皆さんは私が治癒魔法の練習をさせてもらう以外は、礼儀正しく5メートルは離れた先から会釈してくれたり微笑んだりしてくれる。

 うん、気を使っていただいてありがとうございます。

 距離を取られすぎな気もするけど、お互いトラブルを防ぐためにも住み分けは大事だしね。

 でも治癒魔法をかける時は、息を殺さなくても普通に呼吸してくれても良いんですよ・・・。私の事を呼吸音1つでびっくりして森に逃げ帰る赤リスか何かと勘違いしているんじゃないだろうか。

 団員さん達も人によっては私に対してガッチガチに緊張している人もいるしね。私のバックのノアとか激おこモードベル様に恐れを成しての緊張なのかもしれないけど。

 


 そんなこんなで私は騎士団の訓練場にて、2カ月以上にわたり魔力コントロールの練習を続けた。

 そしてもうすぐ3カ月にもなろうかという頃、いつもお茶を頂くサロンで、私はビアンカ様に訓練の終了を告げられた。

「カノン。修行は終わりだ。私はもうお前に指導はせん」

「えっ・・・・」

 ビアンカ様はいつも通りに一人掛けのソファにゆったりと座り紅茶を味わっているけど、私はビアンカ様の言葉に血の気が引いた。

「そ、それは、どういう・・・?」

「うむ、カノン。この2カ月ほど、魔力コントロールの指南をお前にしたが、お前は多分、魔力という物をどれほど努力しても感じる事出は来んだろう」

 ビアンカ様の言葉には少なからずショックを受けた。

 確かに全くもって手ごたえは無かったけど、実は全くもって上達も実感できてなかったけど、私なりに努力をしたつもりだったんだよ。

「ああ、勘違いするなよ?お前が魔術士の才能がないだの、そういった次元の話ではない。お前が努力をしてきた姿を私もずっと見て来た。だが努力しても報われない事も有る。魔力を感知できなければ、魔力のコントロールなど出来ないのが当たり前なのだ。だが気を落とすな。お前の枯渇間際の魔力を節約して使う事はもう考えん。カノン、お前ほどの大きな魔力の器を持っているなら、もう魔力の繊細なコントロールなど考えなくともよい。という事に考え方を切り変える」

「え?」

「カノン、まずお前はエスティナに戻って3カ月ほど休養しろ。その間、魔術の行使は控えろよ?お前の魔力の回復スピードであれば、多分3カ月と少しで、お前の魔力は全回復する計算になるのだ。3カ月休んで魔力が全回復したならば、思い切りグリーンバレーの為に魔術を行使してもらう。手加減はせんでもいい。3カ月に一度。それが切り札であるお前の使い所だ。その時に思い切りぶちかませ」

「お、おおー」

 なるほど・・・。

 少ない魔力をちまちま使う方法を考えるんじゃなくて、3カ月に一回ドカンと魔法を使うようにするわけだ。

 これまでは魔力の枯渇状態から少し回復すればすぐさま魔力を使っていた状態だったから、全回復には遠い状態が続いていた。けれど、3カ月。魔術を行使しなかったら?

 10日で1割の回復なら、およそ100日で私の魔力は全回復する計算になる。

 私がジッと魔力を温存していれば、来年の春には魔力が満タンになっているだろうという話は分かった。

 で、思い切りぶちかませって?

 いつ、どこで、何を?

「ノアの人知を超えた戦闘力と、カノンの無尽蔵と言ってもいい魔力によって行使される魔術。是非お前達の力をグリーンバレーの為に貸してほしい。これを全力でぶつけ来年の春、ゴルド大森林南方の白竜を討伐する。これは我々グリーンバレー騎士団からノアとカノンへの正式な依頼で、依頼料ももちろん支払われるぞ。カノン、お前は騎士団と冒険者ギルド混成白竜討伐軍の切り札だ。良く体を休め、魔力の回復に努めろよ?」

「え?」

 寝耳に水とはこのこと。

 ちょっとビアンカ様が何を言っているのかわからないんだが。




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