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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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再びクノーテ共和国西方辺境の砦にて 1

 最近、白竜を物凄く便利な乗り物扱いをしているなーと思うのだ。

 私は今、ノアの膝の上に抱っこされて、ひたすらに空だけを見ている。今日はとても天気が良いなあ。クノーテ共和国も晴れていると良いけど。

 私とノア、そしてビアンカ様とサージェ先生はみんなで白竜の背中のポケットに収まって、クノーテ共和国西方辺境の砦へと向かっている。ノアとビアンカ様、サージェ先生が足を楽にして座れる位のスペースがあったので良かったけど、サージェ先生の荷物もマジックバッグに入れてもらって手荷物は極力少なくしてもらった。

「このように飛行中の白竜の背中を観察できるとは、夢のようだな。この翼の大きさで巨体の白竜が飛翔に十分な揚力を作る事は出来んだろうから、魔法を使っているのだろうな。ビアンカ、どうだ?」

「我々の頭上にドーム型の守護結界が張られていて、外部の冷気を遮断している。空気は通すが我々の身体は通さない。結界の中の我々、まあカノンの為だろうが、いかに居心地よく過ごせるか感心するほどによく考えられている。この結界は外部の衝撃まで吸収するのだぞ。それとお前が言う通り、風魔法を使って飛行しているな。二つの魔法を同時に使うなど、私でも出来ん。そんな芸当を出来るのはアストン王国において白竜とカノンだけだな」

 ビアンカ様はそういうけど、私の場合は勝手に2つ同時に魔法が発動したりするだけで意識して出来ているわけでは無い。本能のままにしか魔法を使えない辺り、私は魔法の行使については人よりもやっぱり魔獣に近いのかもしれない。

「やはりな。しかし上腕骨に纏う筋肉のなんと力強い事か。魔法頼みだけで飛んでいるわけでもなさそうだな。それにあの飛膜の薄青の美しい事といったら。どのような質感なのだろうな。この肩甲骨の間の俺達が収まっている窪みも非常に不思議だ。どうしてこのような形になっているのか。いったい何の必要がある。鱗は白竜の巨体からすれば非常に小さく、滑らかに背中を覆っている。だが腹部の鱗は大きくぶ厚いし、硬い。背中を攻撃される危険がほぼ無いからなのか」

 そう言いながらサージェ先生は猛烈な勢いで白竜の背中のスケッチをしている。それがまるで写真みたいに写実的でビックリ。聞けば魔獣や野生動物の図録をサージェ先生は何冊も描いているのだとか。頭が良くて絵も上手なんて凄い。

 そんなサージェ先生は白竜の背中に乗る事が出来て非常に楽しそうだった。

「白竜―。サージェ先生に後で翼を触らせてあげて欲しいんだけど」

『構わんぞ』

 そう言うと思ったー。

 白竜は私のお願いをホントに断らないよね!ちょっと私は一方的に白竜に助けられ過ぎかな。まあ、クノーテ共和国に来る事になったのは、元は白竜のお願いを聞く形での事だったけど、それだってフェンリルを助けるための話だし、白竜自身のお願いとかは聞いた事なかったな。

「白竜。沢山ありがとうね。私、白竜にいつも助けてもらっているよ。何かお返ししたいけど、白竜は私にして欲しい事とか、何か困っている事とかは無いの?」

『困りごとはこの前カノンの助けで解決した。我の知り合いが災禍とならずに済んだからな。カノンには健やかに過ごして欲しい。それが我の望みだ』

「~~~!!」

 私は白竜の返事を聞いて思わずノアの腕の中で悶えた。

 白竜って、愛と慈しみの塊!

「カノン、白竜はなんと?」

 膝の上でうおおと身動ぎしていると、私の奇行をよしよしと宥めながらノアが聞いてきた。

「白竜は私が健やかでいる事が望みなんだってぇ。美味しいご飯とか、可愛い小物とか、可愛い服とか、食べたいなあ欲しいなあって私の頭は欲で一杯なのに、白竜が心清らかな良い竜過ぎて自分がちょっと恥ずかしくなったよ」

「ははは!お前が望めば王国中の貴族共から高級食材が届き、豪奢な宝石やらドレスも山のように集まるだろうに。領都の雑貨屋で、若い娘が普段使いするような髪飾りを買ったと満足しているお前のいったい何処が欲深いのやら」

「ビアンカ様。ただの髪飾りじゃありません。ちょっと良い髪飾りを2つも買ったんです。2つも。贅沢しました」

 昨日クノーテ共和国の砦の皆さんへのお土産を買うついでに、たまにはと自分の髪飾りも購入したのだ。1つは飾り彫りされた艶々のこげ茶の木の土台にキラキラ光る小さな水晶が嵌っているもの。その木の土台には落ち着いた暖色系の組み紐が何本も結ばれていて、単純に髪をまとめても良いし、組み紐を髪に編み込んでも良し。もう一つはシルクっぽい光沢の深緑の細いリボンがマリーゴールドみたいに花の形に花びらが立つように編まれていて、それがさらに太めの緑のリボンに縫い付けてあるもの。カチューシャみたいに頭に巻いて首の後ろでリボンを結ぶんだよ。

 可愛すぎる!ルティーナさんのお下がりのワンピースに合わせたら非常に良いと思う。気持ちが上がるなー。日常生活の中でちょっとしたオシャレを楽しめるなんて、なんて幸せなんだろう。

 まあお金はノアのギルド口座に預かってもらっているんだけど、もしものために貯金をしておきたいし、手元にあるからパーッと使っちゃうぜ!とか怖くて絶対思えない。この辺の沁みついた貧乏性はもうどうにもならないと思う。食べるにも困る貧乏苦学生だった事が非常に尾を引いている。

「その堅実な所はカノンの美徳だと思いますよ。まとまった一時金が何度か手に入りましたが、エスティナに戻ったら2人で真面目に働きながら暮らしていきましょうね。でもカノンは食べる事が好きなので、日々の食事は節約しすぎずに楽しみましょう」

「うん!」

「全く、我が国の聖女と勇者は無欲なことだな」

「本当になあ」

『水晶が欲しければ、いくらでも出してやるが』

「・・・大丈夫、要らないよー」

 小さな水晶が付いた髪飾りをご機嫌で思い出したからか、白竜が人を誘惑して堕落させる悪魔みたいなことを言ってきた。

 出来るんだろうなー。

 土魔法で鉄を生成して鉄壁を作った白竜だから、ひょっとしたら色々な宝石とかも作れちゃうのかもしれない。それこそ、金銀、プラチナ、宝石の原石も各種際限なく生み出せちゃうのかも。こ、こわー。

 それをやっちゃったら、人として終わりって感じがする。良心の塊の清らかな白竜の土魔法で、金銀財宝を手に入れるなんて、絶対にしてもらっちゃだめだ。

 髪飾りの小さな水晶が奇麗だねってノアに言ったら、ノアはノアで「フェンリルの巣から水晶の塊を貰いましょうか」とか言ってくるので、ノアにも気をつけないといけない。白竜もノアも、私がうっかり物欲しそうにすると私が思う以上のお宝を貢いできそうな気がするので!はー、怖い怖い。コツコツと堅実に生きていくのが私の性に合っている。

『要らぬか』

「うん。必要があれば自分でどうにかする。人ってお宝を手にすると性格が変わったりするから、あまり土の中の鉱物はむやみやたらに渡さない方が良いかもよ」

『そのようなものか。覚えておこう』

 白竜はあっさりと私の返事に納得し、穏やかに飛行を続ける。

 白竜便に乗っていると王都から砦まではほんの数時間。みんなで軽食を食べたり、のんびり会話を楽しんでいる内に、クノーテ共和国最西端の砦へと私達は到着したのだった。



 アストン王国に戻って僅か1週間ほどで私とノアはこの砦に戻ってきた。

 戻ってくる時は白竜で砦の真ん前に乗り付けて良いとヴィゴ閣下にお許し頂いていたので、遠慮なく私達は砦の真ん前にドシーンと白竜で降り立った。

 それから白竜はお座りからゆっくりと伏せの姿勢を取る。

 私達が白竜から各々飛び降りると同時に(私はもちろんノアにおんぶされながら)砦からダレンさんと軍人さん数人が駆け足で出てきてくれた。

「カノン!随分早かったな」

「ダレンさん、ただいま戻りましたー。今回は私のお師匠のビアンカ様と、えーと、賢人のサージェ先生と一緒に来たんですけど、みんなで砦にお邪魔して良いですか?」

「賢人?!」

 私達の前に駆け寄ってきたダレンさんがギョッとして足を止めた。

 固まった軍人さん達にサージェ先生はゆっくりと歩み寄った。

「先触れも無く失礼をした。私はサージェ・ブロック。アストン王国の知識の塔に所属する身だが、今回はアストン王国大使としてクノーテ共和国を訪問させてもらった。そして、これはビアンカ・ケープゴッド。アストン王国前魔術師団長を務めていた者だが、今回はカノンの護衛役として同行させている。この砦にはあの名高いヴィゴ上級大将閣下がおられると聞いた。我々の取次ぎを頼めるだろうか」

「・・・このような見苦しい身なりで大変失礼いたしました。私はダレン・シュトラウス。階級は少佐。ヴィゴ閣下の第一副官を務めております。辺境基地ゆえ満足なもてなしも出来ませんが、どうぞ中へお入りください。閣下の身なりを整えさせろ!」

「はっ」

 ダレンさんはサージェ先生に挨拶をし、最後に一緒に来た軍人さんに指令を出した。指令を受けて2人の軍人さんが砦の中にダッシュで戻っていく。

 ちょっと慌てさせてしまったかも。白竜で乗り付けていいとは言われたけど、色々と突然で申し訳ない。

「白竜、ここまでありがとう。またアストン王国に戻る時は迎えをお願いしていい?」

『我が娘。お前が呼べば、我はいつでもどこへでも飛んでいこう』

「ありがとうねー」

 白竜の鼻が私の目の前に下がって来たので、私は白竜の鼻に手を伸ばしてちょんとハイタッチした。

 白竜はブフーと森の香りの鼻息を私に吹きかけると、後はふいと頭を巡らして垂直に空に飛び上がった。助走もせずに飛んじゃう辺り、ビアンカ様が言うように風魔法もバリバリ使っているんだなーと分かる。

白竜は元来た方角へと戻らず、防護壁の向こうへと飛んでいった。あの方角はフェンリルに会いに行ったのかもしれない。

 そして白竜が居なくなると同時に私達の結界も解除された。

「さむっ!」

 私とノアは砦に御厄介になった際に用意してもらった防寒着をしっかり着用してきた。私だけではなく、ノアも一揃え、男性用の冬服を閣下から頂いたんだよ。黒い厚手の、裏地もしっかりした毛織物のロングコートはノアに似合っていて滅茶苦茶カッコいい。本当にヴィゴ閣下にはお世話になりっぱなし。このご恩はこれから働いて返しますので。

そんなわけで身体は暖かいんだけど、油断していたむき出しの顔に痛い位の冷気が突き刺さる。

「おお、これはなかなかの過酷な環境だな。見る物全てが凍り付いているようだ」

「氷点下の気温は俺も始めて体験する。このような雪国ではどのような植生が見られて、どのように獣達が暮らしているのか。出来たら調査をしてみたいものだな」

 私が首をすくめて縮こまっている隣で、ビアンカ様とサージェ先生は堂々と地面に降り立ち周囲を見回している。私と同じ顔はむき出しだし、首元だってマフラーも何も巻いていないのに2人共平然としている。鍛え方が違うから?それか、筋肉量が違うから?とにもかくにも、ノアもビアンカ様もサージェ先生もフィジカル強いからか全然寒くなさそう。

 ビアンカ様とサージェ先生は2人共、豪奢な毛皮のロングコートをお召しになっている。サージェ先生の毛皮はクリムゾンベアの明るい茶色で、ビアンカ様はシルバーフォックスの白銀の毛皮だ。

 2人の毛皮のコートはアストン王室の宝物庫に保管されていた物で、ジュリアン王から今回2人に下げ渡された。大昔にクノーテ共和国から友好の印にとアストン王国に送られた毛皮のコートは、非常にサイズが大きく、王族に着られる人も居なくて長らく仕舞いっぱなしの物だったのだそう。それがまるで2人の為にあるかのようにピッタリ、お似合いです。

 以前砦のお姉さま方を雪の女王みたいと思ったけど、雪の女王はここに居た。まさにビアンカ様が雪の女王だった。ビアンカ様に比べたら砦のお姉さま方は可愛らしい感が強かった。

 そしてサージェ先生はダレンさん達に負けない位にガタイが良く、クリムゾンベアの毛皮のコートが圧強めの覇王感を出している。

 ダレンさんと、一緒に来てくれた軍人さん達も何とも言えない迫力のビアンカ様とサージェ先生を前にちょっと気圧されている感じがする。

 あの、皆さん、そんなに緊張しなくても。

 ビアンカ様もサージェ先生も、ただ黙って立っているだけですので・・・。

「へぶしっ!」

 謎の緊張感が高まっていく中、私は空気も読まずに可愛くないくしゃみをしてしまった。

「いかん!カノンが風邪を引いてしまう」

「早く中に入りましょう!」

「どうぞこちらへ!」

「カノン、鼻を拭け」

「ふぐ」

 私の水っぽいくしゃみにより、ワッとみんなが動き出した。

 私は半ばノアに抱えられるようにして、周囲をビアンカ様、サージェ先生、軍人さん達に囲まれながら砦に運び込まれた。

 砦の内部に入ると空気が暖かくて、縮こまった体がホッと緩んだ。

 砦の中が予想外の温かさでビアンカ様とサージェ先生もビックリしている。わかるー。私もビックリしたもんなあ。石の砦は外から見るととても寒そうなのに、驚きの暖房設備が備わっているのだ。日本でも半端に寒い地域よりも北海道の方が家の中が暖かいとか聞くけど、防寒と暖房がしっかりしていないと命に関わるもんな。

 暖かい砦の中の客室にいったん私達は案内され、午後のお茶にヴィゴ閣下からお呼ばれする事となった。


 今回私達がお茶にお呼ばれされたのは、私とノアも初めて入る応接室だった。

 床には赤絨毯が敷かれ、壁にはクノーテ共和国の国旗のタペストリーが掲げられている。それも精緻な刺繍の織物で、美術品として十分鑑賞できる感じ。まあとにかく、色々とお高そうな調度品が整えられていて、庶民の私からすると豪華だな!というお部屋。

 私とノアは、ヴィゴ閣下から買っていただいた冬服をヘビロテで今も着ているけど、ビアンカ様はいつもの黒いドレスに10センチピンヒールという戦闘服をお召しになっていた。ドレスの裾がキラキラしているのは、何か黒い石を縫い付けているのかな。ただの石な訳ない。宝石でしょうなー。

 そしてサージェ先生は、深緑のローブを身に纏っているんだけど、それには金糸銀糸でふんだんに刺繍があしらわれていた。そのローブの上に結ぶ幅広の帯には金糸銀糸の刺繍はもちろん、あれ、あの赤い石、ルビーか何か?お金かかってそう・・・。

 なんか2人共、初手でぶっ飛ばしてやるからな、みたいな気迫が滲んでいる気がする。

 そして私達はヴィゴ閣下にお呼ばれしたはずなんだけど、応接室にはダレンさんともう一人、見知らぬ大男が待っていた。

「よくぞ参られた。我々はアストン王国からの御客人を歓迎する。私はこの砦の責任者をしているアンブロシウス・ヴィゴだ。ようこそクノーテ共和国へ」

 この見知らぬ大男、ヴィゴ閣下だった!

 この2メートルを大きく超す長身でガタイが良く、且つイケメン(髭無し!)の大男はヴィゴ閣下だったんだー!砦の人達はみんな髭を伸ばしていたけど、お客さんの相手をする時は髭を剃るんだね・・・。ダレンさんは髭のまんまだけど、もう最初に髭面をサージェ先生達に披露してしまったからもういいや、って感じなのかな。

 そしてヴィゴ閣下、普段の白シャツにズボンとか、カーキ色の上下の軍服とかじゃなくて、黒いジャケットに金糸の刺繍が入った軍服をカチッと来ていて、いつも無造作に一つに結んでいる金髪もツヤツヤのウェーブを描いて後ろに流している。辺境の荒くれ者の風貌から一転、軍上層部の威厳が滲み出ている感じ。

 私とノアも一応お茶にお呼ばれしているのだけど、何となく応接室の壁際に立つ。その私達の前で、ヴィゴ閣下はサージェ先生、ビアンカ様と対峙した。


ブクマ、評価、イイね、感想をありがとうございます。

とても嬉しいです(*'ω'*)

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