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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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聖女と勇者の活動報告 2

「Sランク認定を受けるにあたり、冒険者に課せられる責任、義務は何があるのでしょうか」

 場合によっては断る!という警戒心バリバリのノアの顔を見て、アシュレイ様はフッと笑った。

「冒険者ギルドはその国によって独自に運営される物で、さらに各領地でギルドの知名度や特色が異なる。自分で言うのもなんだが、グリーンバレーギルド支部はこの大陸の中でも武力に特化した名の知れた冒険者ギルド支部だ。クノーテ共和国でもグリーンバレーギルド所属のSランク冒険者としての立場は一目置かれるだろう。そして、我がグリーンバレーギルド支部ではノア・ブランドンに一切の義務・責任を課さない事とする。ノア、お前が守るべきものの中にはカノンだけではなくエスティナも入っているだろう?有事にエスティナを助けてくれるならそれで十分だ。だから黙って認定を受けておけ」

 冒険者ギルドの仕組みがイマイチ分かっていなかったのだけど、アシュレイ様の説明によると、各ギルドの支部によって集まる冒険者の特色が違うという事みたいだ。グリーンバレーには領都のグリーンバレーギルドとその派出所的なエスティナギルドがある。今回は領主からの認定という事でグリーンバレー支部から認定証が出された。グリーンバレー冒険者ギルドは武闘派ギルドとしてこの大陸では名を馳せていて、Sランカーともなれば国を越えてもその冒険者の実力の証明になるのだそう。ちなみにグリーンバレーと肩を並べるこの大陸の武闘派冒険者ギルドがあるんだけど、それはクノーテ共和国の砦の近くにある辺境都市のギルドなんだそう。やはり過酷な地の冒険者ギルドは武力が求められるし、戦闘力が高い冒険者が集まるんだろうね。

「本当は昨年の内にお前にはSランク認定を出したかったのだが、昨年はまだ王族達の問題があったからな。だが、現王は全面的にお前とカノンの味方をしてくれるだろう。あの方は裏表がなく、王族としては稀有なお方だ。この夏は色々あったが、やっと憂いなくお前をSランク冒険者として認定できるようになったな。ノア、隣国へ行くと言うなら自分達の身を守る武器としてSランカーの身分を存分に誇示しろ。グリーバレーギルドの認定証は国外でもお前の実力を保障するし、勇者の称号はアストン王がお前達の後ろ盾であることを示す。使える物は使い、やるべきこと成して、春には一人も欠ける事無くグリーンバレーに無事に戻って来い」

「・・・謹んで、Sランク認定をお受けいたします」

 アシュレイ様は私達の事を想ってクノーテ共和国に行く前に、ノアに持てる限りの最高の社会的地位を持たせてくれようとしたんだ。砦の人達は皆さん良い人達だったけど、首都にはどんな人がいるかは分からないもんな。アシュレイ様の気遣いに感動してしまった。

 アシュレイ様は私とノアをとっくにグリーンバレーの一員だと認めてくれていたんだなあ。

 ノアも色々と思う所があったと思うけど、最終的にはSランク認定を受け入れたのだった。

キラキラと白く光る細めのチェーンと、ノアの名前とランク、認定を出したギルド名だけが刻印されたタグは武骨な鉄のAランクのタグと比べて何ともおしゃれ。ノアに似合っている。そして思った通り白く輝く金属はプラチナだった。

 生活に困ったらこれを売りましょうかと、プラチナに負けない位のキラキラの笑顔でノアが言い出して、そこまで困窮する前に一言相談しろとアシュレイ様をげんなりさせた所でその日はお開きとなった。

 元は侯爵家の次男だったノアがこんなに性根逞しく生活力が付いてしまったのは、全て私の所為だなとちょっと反省した。お金が大事って言いすぎたかな。いくらお金に困っても、アシュレイ様の心遣いの認定証を売る羽目にならないように私も自分の食い扶持くらいは稼がないとな。

 私の魔力回復期の爆食が結構お金がかかるんじゃないかなと、最近心配になって来た所だったしね。

 私の収入は年に数回参加できるかというエスティナギルドで募集されるアルバイトと、突発的な聖女活動に対しての臨時収入だけだからなー。あんまり爆食しないように済むと良いんだけどね。治癒とか回復のお礼はすぐ食べられる食料でもらったら良いのかな。まあこの問題は追々考えていこう。

 今回はヴィゴ閣下のご依頼を受ける形なので、とりあえず聖女の力を行使する時は必ず大量の食事を用意してもらおう。砦の優しい味の煮込みも美味しかったけど、首都の名物料理とか何があるのか楽しみだなー。


 それから一晩アシュレイ様のお世話になって、私とノア、ビアンカ様は王都へと飛んだ。

 騎士団の訓練場の真ん中で白竜を呼ぶと、すぐに白竜は来てくれた。ビアンカ様も一緒に乗せて欲しいと頼むと、あっさり承諾してくれる白竜。白竜は本当に温厚で優しい。何でもお願いを聞いてくれるしね。

 でも小さい人間が背中に何人乗ろうがどうでもよいからなのかもしれない。背中に人間を100人乗せてと頼んでも白竜は断らなさそうなのだ。私も頭に小鳥が1、2羽乗ってもまあ良いかって思うし、そんな感じなのかな。悠久を生きる白竜にとっては大抵が些末な事なんだろうなー。

 でもそんな白竜が私の事は気に掛けてくれているのが、何だかすごくありがたいし嬉しいなあと思う。

 白竜の背中のポケットは楕円形の形で、縦が1.5メートル、横幅が2メートルほど。深さは50センチくらいあるので、ポケットに収まると非常に安心感がある。余裕のあるポケットなのでビアンカ様も一緒に乗り込んで、私は変わらずノアの膝の上に乗せられてもまだ余裕はあった。

 ビアンカ様は白竜に臆することも無く、身軽に白竜の背中に昇って来た。この夏の王都の競技場でもビアンカ様はミンミをおんぶして余裕で白竜の頭まで駆け上がってきたもんね。

 ちなみにビアンカ様の本日のお召し物は特注の騎士服だ。純白のロングジャケットにタイトな黒いパンツに黒のブーツといういで立ち。ジャケットには金糸で豪華な刺繍がされていてとってもビアンカ様にお似合いだった。豊かな黒髪も無造作なハーフアップにしていて、宝塚の男役みたいに麗しくてカッコよい。反して私とノアは、もうジュリアン王の前でおめかしする気もなく、庶民の普段着のままだ。まあ庶民の普段着でもカッコいいノアはともかく、私は今年もマタギの娘風コーデが冬の定番となっている。

 今回の私達の旅の荷物はみんなそれぞれにマジックバッグを腰に着けているだけだ。

 以前エスティナや王都へ馬車で行った時には荷物だけで1人馬車1台を使っていた。だったらマジックバッグで最初から持ち運びしたらよかったんじゃね?と思ったんだけど、馬車行列は貴族の見栄と体裁の為にも必要なんだって。でも今回は白竜で王都に乗り付ける、と言うだけでホーン辺境伯の力を周囲に誇示できるので身軽に動けるとの事。

 貴族ってやっぱりめんどくさーと思う話だった。

 まあそんなこんなで、準備の出来た私達とビアンカ様は身一つで白竜に乗り込み王都に飛んだ。



 王都のアシュレイ様のタウンハウスでは白竜が離着陸する庭を整えたというので、まず私達はアシュレイ様のタウンハウスに向かった。

「白竜、あの赤い尖塔が1つ立っている緑の空き地です。あれがあなたの休憩地のようですよ」

 ノアが白竜のうなじ辺りに立ち、地上を見下ろしながら白竜に下降ポイントを指示している。ノアの言葉に白竜が『わかった』とゆるく咆哮をあげた。

 白竜の言葉をノアは理解できないけど、人の言葉を白竜は理解できるんだよね。なので、ノアは結構白竜に話しかけたりしている。白竜とノアの会話が何となく成立しているのは傍から見るとほっこりする。

 しかし、ノア。結界が張られているから落下の心配はないとビアンカ様も言っているけど、よく、よくあんな、つるりとして掴まりどころもない白竜のうなじに立っていられるね?!

 私はビアンカ様に抱っこしてもらいながら、白竜の背中のポケットにほぼ仰向けになって収まりながら、チラッとノアを見ては心の中で悲鳴を上げていた。白竜のポケットに収まって空だけを見上げているから空の旅を耐えられているけど、普通に飛行中に地上が見えたりしたら、怖すぎて無理!

 ビアンカ様は怖がる私をよしよしと宥めながら胡坐座の上に抱っこしてくれている。幼児体でもない良い大人なのに、申し訳ない事この上ない。でもこの状況で私とノアだけだったら、私は恐怖のあまりに腰砕けで白竜のポケットに這いつくばっていただろうから、ビアンカ様が付いて来てくれて本当に良かったー!

 ノアの雄姿をチラ見しては私1人が震えあがっている内に、私達の着陸点に白竜はどんどんと近づいていく。

 アシュレイ様からは王都の辺境伯家のタウンハウスに白竜専用の庭が出来たと聞いていた。目印は王都の中心の空き地に立つ赤い尖塔との事だった。

 やがて白竜はお尻からドシーンと着陸した。ちなみに白竜の守護結界は衝撃も吸収してくれるので、多少の揺れは感じるけど私達にはノーダメージ。私の結界と大差ないなと、ビアンカ様は白竜の結界に感心していた。

 白竜の背中から私達が降り立つと、アシュレイ様のタウンハウスからは執事さんを筆頭に使用人の皆さんが駆け足でお迎えに来てくれた。といっても白竜からはだいぶ距離を取っていたけど。

 先頭にいる執事さんは笑みを湛えているけど、その後ろの使用人さん達は白竜を見上げながら若干顔が青い。これは執事さんがさすがの胆力といった所で、使用人さん達の反応の方が普通だと思う。

 前回は中庭に居る白竜を使用人さん達が遠巻きに見ているだけだったから、自分から白竜に近づくのはそりゃあ怖いよなあ。私達の出迎えのために申し訳ない。そして巨大な白竜専用の庭を作ってくれるなんて、采配してくれて執事さんに感謝だよ。

 白竜は早速庭の端の溜め池を寝っ転がりながら後ろ足で破壊し、溢れた水とめくれ上がった芝生の下の土を体で捏ねながらゴロゴロし始めた。こんな白竜の動きを見るのは初めてだ。泥浴びでもしているのかなー・・・。

 白竜専用の庭として、白竜が余裕をもって過ごせるスペースを取りつつも、芝生や小さな溜め池をあしらえて景観も整えてくれていたのに、執事さん、すみません。一瞬で庭がこんな無残な様子に・・・。

 身体の側面を地面に擦り付けるようにゴロゴロしている白竜をバックに、菩薩のような笑みを浮かべる執事さんに私は謝っておいた。執事さんはとんでもございませんと笑顔を崩さない。プロの執事さんだ。

 熱心に泥遊びをしている白竜は放置して、タウンハウスの中に招き入れられた私達には、休む間もなく王城からすぐさま呼び出しがかかった。白竜は前の世界で言えば街中に唐突に立っている大観音のように王都のどこからでも姿を認識出来るので、私達がアシュレイ様のタウンハウスにやって来た事は連絡を入れるまでもなく王城にはバレバレだったという。

 そして王城からの手紙には、私達が登城する際には白竜で王城の中庭へ乗り付けるようにとの指示があった。ジュリアン王・・・。白竜がジュリアン王とも関係深いと印象操作する気満々じゃんね。今白竜はご機嫌で泥浴びをしている所ですが・・・。

 知性を脇において本能の赴くままに泥浴びに熱中している白竜に申し訳なく思いながらも、今度は王城まで乗せて行って欲しいと頼むと、すぐに泥浴びをやめて『構わん』と鷹揚に頷いてくれた白竜。ほんとに温厚で優しい竜だよねえ。

 王城でもホーン辺境伯邸に倣って中庭に白竜が離着陸するスペースを作ってくれたのだそう。王城の目印は青い尖塔という事だった。ホーン辺境伯邸も王城も、夏の終わりからのほんの数カ月で塔を1つ白竜の為に作っちゃうなんて、貴族と王族の力半端ないな。

 

 私達は休む間もなくアシュレイ様のタウンハウスから王城へと白竜に乗って飛んだ。

 アシュレイ様のタウンハウスには庭を荒らしに来ただけになってしまったという。何たる迷惑。

 改めて執事さんにはお詫びしたけど、いつでもお好きな時にお越しくださいと執事さんは言ってくれた。更には「白竜様のお好みは、むき出しの土でございましょうか」と白竜の嗜好調査までしてくる執事さん。執事さん、なんて良い人なんだ。

 泥浴びが気に入ったようですと伝えると、うんうんと頷きながらまた溜め池を整えておきますと執事さんは言っていた。好きに泥浴びしに来て良いらしいと白竜に伝えると、白竜も『時折寄らせてもらうか』とか、言っていた。白竜は人の営みに関わらないって言っていたような気もするけどね。まあ長い竜生の中での少しの間、人と関わる事もお互いに実害が無いなら良いんじゃないかなと、私の考えもどんどんとブレて行っている事は否めないな。

 白竜が時々寄らせてもらうそうですと執事さんに言うと、執事さんは感極まったようにすこし目を潤ませて私達に深く頭を下げた。いや、あの、結果白竜が庭を荒らしただけだけど、執事さんが喜んでくれるなら良かったな。

 そんなアシュレイ様のタウンハウスの皆さんとお別れした私達は、ほんの一瞬の飛行で王城の青い尖塔のポイントへ到着した。

 再びドシーンと、ほぼ尻もちの着地をした白竜は、今度は王城の白竜の為の庭で、芝生のうえでゴロゴロしていた。あれは泥を芝生で擦り落としているな。冬でも青々とした美しい芝生がどんどんと白竜の下で抉れていく・・・。そして私達の案内の為に駆け付けたものの、30メートル級の脅威を至近距離にして、蒼褪めて硬直している衛兵さん達。私からしたら白竜も獣の本能の赴くままに芝生でゴロゴロするんだーと微笑ましいんだけど、慣れてない人からしたら怖くて当然だな。

 白竜には気が済んだら自由に森に帰ってもらうようにした。『相分かった』と返事をくれたけど、白竜は泥を擦り落とすためのゴロゴロをしたまま。遠くから見れば白竜の両後ろ足が右へ左へと半円を描いて行ったり来たりしているように見えるだろう。案外物音は静かだけど、王都民の皆さんを戸惑わせるに十分な白竜の奇行だろうな。

 まあ、建物を壊される訳でもないし、実害は白竜のための庭が荒れる位だから、暖かく見守って欲しい。

 大丈夫ですよー、怖くないですよーと案内の衛兵さん達をお城に追い立てながら、私達はジュリアン王の元へと向かった。



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