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嫌いだ  作者: 蓮根三久
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 僕がK岡さんと話すようになって、一週間が経った。



 彼女と話す内容は、決まってあのYoutuberの話題ばかりで、しかし僕はその会話が楽しかった。



 そのYoutuberは別にマイナーな人たちではない。ただ、その人の事を表沙汰にして取り上げる人がとにかく少なく、つまりはスカイピースやはじめしゃちょーの様な実写系Youtuberではなく、ゲーム実況者だった。



 まだその時代で流行ったばかりのYoutuberという職、その中で取り立てて表で話題にされることが少ないゲーム実況者。そして、今まで委員会等以外で関わらなかった異性。



 僕の中でK岡さんは特別な存在になって、僕の周囲が少しずつ変わっていった。



「お前とK岡、付き合ってるん?」



「は、はぁ?」



 T村は昼休み、僕に尋ねた。急に男女が仲良くなったら疑われるのも自然なことだ。



「別に付き合ってないで?」



 そう。僕は彼女と付き合っていない。ただ仲が良くて、話しているだけで、趣味が合うだけ。



 ただ、それだけで。



「あのK岡ってやつ、小学校の頃さ、授業中に××××してたんよ。」



 T村はそれがさも面白いことかの様に言う。口角を上げて、口を開けて、面白がっている。



 T村は性格が悪い。ことあるごとに毒を吐く。だけれど刺激を欲する思春期では、その毒は劇薬と扱われてしまう。



 僕は横目でK岡の方を見た。彼女は今日の休み時間も変わらず絵を描いている。



「そ……そうなんや。」



 僕と彼女はただの、趣味が合うだけの



「だからさ、お前あいつと関わんのやめた方がええで?」



 特別でもなんでもない関係で



「てかあいつ、勉強できんし、休み時間もずっと絵を描いとる。陰キャやで。」



 本当にそれだけの、それだけの関係で



「嘘つきやしな。小学校の卒業式で北海道行く言うてたのに、まだここにおるんや。」



 ただ、それだけで。



「あーんな性悪、そうおらんで?」



「あの、さ。」



 口が開いた。



「そうやって人の事悪く言うの、やめた方が良い…で。」



 ぼそっと溢した台詞。T村の顔を見る。彼はなんだか不満げで、そしてなんだか呆れた様な顔をしていた。



「つまんね。おもんねーよ、二宮。」



 T村は吐き捨てて、窓際に固まっている男子の中に入って行った。



 T村があの集団に話している内容が気になる。けれども僕は、もう言ってしまった。T村と僕はもうこれまでだ。



 僕はいつも通り、K岡さんの席へと歩いて行った。

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