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嫌いだ  作者: 蓮根三久
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 先生に少し言われた程度で、止まるような僕らじゃなかった。



 いや、()()じゃなかった。



 少しの刺激はカンフル剤となり、彼らの熱を助長する。僕はその熱に当たるのが嫌で、少しの間その集団から離れることにした。



 それは()()だった。これまで何度も何度もあった。既存の人と関わるのが少し嫌になる時期。新たな人との出会いを探索する時期。



…僕は集団生活に向いてない。



 溜息を吐いて、他所のクラスに行こうとした時、視界の端に何か映った。



「それって―――」



 なんとなく、なんとなく口を開いた。そして初めて、認識した。



 髪が長くて、腰まで伸びていて、しかし枝毛の一つも無くて、黒色で、



 小柄で、整った顔立ちで、目がまん丸で、大きくて、



「―――〇〇さんの絵だよね?」



 言われたその時、彼女も僕の事を、きっと初めて認識した。



 彼女は驚いた様に、大きな目をさらに大きくした。



「あ、はい。そうですけど。」



 その口から出た声は、なんだかアニメとかでよく聞く声をしていた。つまりは高く、幼い声。



「僕もその人の動画観るんだよ。ていうか絵、上手いね。」



 それは僕の人生において、まったく新しい風だった。なんだか普段の喋り方が出ない。嫌いだから出なくていいが。



 今初めて、僕はちゃんと喋っているんだと思った。



 K岡さんは、少し狼狽えていたけれど、僕は絵が上手い奴が好きだった。



「ほんとすごい。これ上手すぎるよ。」



「あ、あの…」



 絵をベタ褒めしている僕の事を、彼女は見上げる。



「そんなに気に入ったんだったら、あげますよ?」



「え、いいの!?ありがとう!」



 僕は絵が描かれたノートの切れ端を、自分の鞄のクリアファイルに挟んで持って帰った。

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