十八
修学旅行、二日目。
今日はグループごとテーマ別の研修を受ける。ただ、それだけ。
テーマというのは例えば京都の歴史だったり、伝統だったりを学ぶものがある。本当に、ただそれだけ。
というわけで
割愛。
修学旅行三日目、朝。
ホテルのベッドで寝るのにも慣れてきた朝、朝食を食べにビュッフェ会場へとやって来た。
「おはようS井、N村。」
S井とN村がちょうどビュッフェの列に並んでいたのでその後ろに並んだ。
「おうおはよう、お前自由行動の日なのに意識低くねーか?」
「朝起きんのは苦手なんよ。」
言いながら、皿に次々と料理をのせる。僕やN村はソーセージや唐揚げ、ローストビーフやポテトなどをそのさらに盛りに盛り付けていたが、S井はその皿にポテトのみを盛り付けていた。
「え、S井、それはどういう…?」
「ええ?だってポテトって野菜でしょ?」
だからと言って大量に摂取しても良いわけではない。S井の偏食は今に始まったことではなく、一昨日は鹿せんべいを食べていた。いや、これは偏食じゃないか。
料理を運んで席につく。男子と女子は別れているが、その席は固定ではない。
どういうわけか、僕の座った席の後ろにK岡達が腰かけた。
とりあえずそんなことは気にせずに、S井と今日行く場所について会話をした。ついでに隣にいたM倉とも、金閣寺についての話をしていた。
突如として、後ろから呼びかけられる。
「二宮!二宮!」
僕やS井、他の男子たちもその方を見た。案の定、K岡やその他の女子たちがこちらを見ていた。声の主はK岡ではなくて、その隣にいたY下という女子だ。モアイの様に彫りが深い彼女は、陰でモアイと呼ばれている学級委員長だった。
「二宮はK岡ちゃんのこと好きなんだよね?」
なんて言う。公衆の面前で。
「ちょっともうやめてよ!恥ずかしいよ!」
と、Y下の言葉をK岡が遮った。ニヤニヤしながら。恥ずかしいくらいなら元からお前が他人に共有しなければ良かったのに。
――――そうだ、僕は悪くなかったんだ。
「でも二宮君、私のこと好きじゃないもんね!」
冗談めかして言う。「えぇー?」なんて周囲の女子たちは言う。
――――限界だった。
「そうだよ。お前の事なんか嫌いだよ。」
言った。
言ってしまった。