十五
三年生になった。
担任がS野先生ではなくなって、R子先生に変わった。僕はなんだか寂しくなった。
だけれどS井とN村は相変わらず一緒のクラスで、S井に関しては中学生活三年間ずっと一緒のクラスとなった。
「同じクラスじゃん。よろしく。」
「…よろしく。」
僕のテンションがあんまり高くないのには理由がある。もちろんK岡の件もあるが、冬から塾に行かされるようになったことが一番である。
分かることは増えていったけど、何分宿題が多すぎて憂鬱だった。
K岡も同じクラスになった。
「同じクラスだね!よろしく!」
「…うん、よろしく。」
………憂鬱だった。
割愛。
このクラスにも慣れてきた頃、一回目の席替えの時間がやって来た。出来る事なら窓際の後ろの席が良いなと夢想する僕だったのだけど、残念なことに廊下側の前から二番目の席だった。
溜息を吐きながら席を移動し終えた僕は、隣の人は誰だろうと考えていた。
その時、あの腰まで伸びた黒髪が僕の目の前を通って行った。そしてそのまま、隣の席に机と椅子を配置する。
「え、隣じゃん!」
驚いてみせる彼女に対して、僕は―――
「え、そうだね!」
―――同調することしか出来なかった。
割愛。
中間テストが終わり、二回目の席替えがやって来た。今度こそ窓際後方の席が良いなと夢想する僕だったが、なんと今回も廊下側の、前から二番目の席だった。
呪われているのかもしれないな、なんて思いつつ、席を移動する手間が省けたことに少しだけ嬉しくなっていると、隣の席の人も動いていないことに気付いた。
「………え、K岡って席移動しないの?」
「うん!この席だから!」
二回連続。こんな奇跡が果たしてあるだろうか。いや、無い。無いけれど、純粋過ぎた僕は、それが運命による操作だと思ってしまった。
「皆さん、ゴールデンウィークが終わったら待ちに待った修学旅行なので、ちゃんと宿題をやって来てくださいね。もしやってこなかったら、修学旅行に行けなくなりますからね!」
R子先生のその脅し文句的台詞で、ホームルームは終わった。
修学旅行の班はS井と一緒なら良いな。
そんなことを思って、ゴールデンウィークを迎えるのだった。