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嫌いだ  作者: 蓮根三久
13/24

十三



 おかしい。



 何かがおかしかった。



「お前ってK岡と付き合ってるん?」



 帰り道、別のクラスのはずのS木が問いかけた。



「え、それは誰から聞いたん…?」



「え?結構いろんな人が言っとったよ?」



 脳が真っ白になっていく感覚がする。考えることが限りなく困難になる。



 僕はS木の事が嫌いだ。だけどそれは、友達にしては嫌いな方というだけで、少なくとも一年二年一緒に過ごしていただけの人達に比べると距離は近い。



 浸食されたような気がした。僕のテリトリーを。いろんな人に僕の恥ずかしいところを見られている様な、気持ちの悪い感覚だった。



 S木と別れて、家に帰った。



 今日は姉の帰りが遅い日だ。僕は、パソコンの方をちらりと見た。



 ちらりと見るだけ見て、視線を外し、自分の机に置かれた『D.gray-man』を読み始めた。



 僕は漫画が好きだった。初めて読んだ漫画は『まおゆう 魔王勇者 外伝 まどろみの女魔法使い』だ。『まおゆう』自体読んだことが無かったけど、漫画の世界が面白くて、現実から逃避したいときは決まって漫画を読んでいた。



 それと、小説。金曜ロードショーで続きを見たかった『ハリーポッター』が図書室に置かれているのを見て、小学校の頃に読み始めた。



 創作の世界は心が自由になる。現実を一切忘れて没頭できる。



 つらいこと、苦しいこと、小学校の頃の僕は地域のバスケットボールチームでしかその経験は積まなかったけれど、でもその小さな積み重ねを一気に解放できるのが創作物だった。



「………僕も、書こう。」



 気付けば新品のノートに物語を書きだしていた。一ページ、二ページ、三ページと、瞬く間に埋まっていく。



 創作は、作られたのを見るのも楽しかったけれど、作っている瞬間が一番楽しかった。そのことに気付いた。



「ただいまー」



 玄関から声が聞こえた。咄嗟にノートを棚の中に隠す。姉は部活で遅いので、帰って来たのは母だ。



 母は荷物をリビングに置いて行ってから、すぐに夕飯を作り始めた。リビングにその匂いがふんわりと漂ってくる。今日はカレーらしい。



 夕食の時間。母の作るカレーはこの世で最も好きな料理の一つなので、僕はそれを頬張った。



「そういえばさ、」



 と、母。僕は「ん?何?」と問い返す。



「あんたって彼女いるの?」




―――――思考が止まる。

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