十二
体育祭のF原の発言から、数名に聞いたところによると、なんとK岡が様々な人に僕と付き合っているということを言いふらしているという情報が手に入った。
その時僕はやっと彼女に不満感を覚え始めた。
T村が言っていた「アイツは嘘つきや。」という言葉が本当だった。性悪かどうかはまだ分からないけど。
そしていつの間にか、僕の周囲に僕がK岡と付き合っているという情報がまわった。K岡と同じ小学校だった人々は、口をそろえて僕に言う。
「アイツはやめとけや。」
「アイツは絶対だめや。」
一人、櫻井翔(嵐ではない)という名前の人物が僕に言った言葉が衝撃的過ぎて覚えている。
「アイツなんかよりお前にはもっといい奴いるって。」
そこまで言われてしまうのか。あのK岡さんは。何か大犯罪でも犯したのか。あらゆる男子からのヘイトを買っている彼女は、もしかすると本当に――――
「席について。帰りの会を始めます。」
いつの間にかS野先生がいて、いつの間にか帰りの会が始まった。思考に深く入り込んでいると、時間の進みが分からなくなる。
いつまでも考えていても仕方ない。一旦結論は保留することにした。僕の中で整理がつくまで。
「皆さん、そろそろ後期中間テストが始まります。皆さん―――」
テスト。学習委員の仕事がやって来た。しかし今はそれどころではなくて、対策問題なんて作っている時間は無い。
僕は僕の事で精一杯なのに、どうして他人のために対策問題なんて作ってやらなきゃならないんだ。
しかしI部の仕事を減らすためにも、僕は学習委員の仕事に着手しなければならなかった。
――――あれ。
――――いや違う。
後期が始まった時、珍しくI部が図書委員なんていう委員会に立候補したのを思い出した。
――――僕もI部も、後期は別の委員会になったんだった。
「―――気を引き締めて取り組むように。」
僕とI部はいつからか、一切会話することが無くなっていた。
『僕の中でK岡さんは特別な存在になって、僕の周囲が少しずつ変わっていった。』