記念撮影ー川崎へ
「ごめんね怖い思いをさせてしまったかな。私は自衛隊情報保全隊呪術班に所属していてこんな事態に対応しているの。でも大神君って何者?」
ボクが聞きたいくらいだよ先輩
「リサ先輩は知らないんですか」
「ええ、御堂幕僚長からは何も聞かされてなくて彼を補佐するようにとだけ言われているのもしかして国家レベルの機密事項なのかな」
こっ国家レベル、冗談じゃない国家機密が同級生なんてまたしてもボクの処理能力が停止した。あきれているボクたちに
「ちょうどいいこの辺で昼の休憩を取ろうか」
時計を見ながら大神がそう言って近くの公園に向かって行った。
「私は処理をしてあとで行くから」
先輩は異界獣の死体の方へ行くとガソリンをかけて燃やし始めた。
ボクたちは公園の芝生に腰かけるとアオイとアカネが作ったおにぎりとタッパに詰められたおかずを食べ始めたが
「ピクニックみたいだね。輝也がいれば安心だね。でも異界獣ってなんなだろうね」
大神に質問したいのは見え見えだがボクの顔を見て黙っているようだ。ボクも何もなかったように
「あそこが品川駅だよね。とりあえず目的達成だよね」
あそこから新幹線に乗ればアッと間に帰れるのにな。恨めしくも思えた。
「ひなた品川駅は港区だよまだ、このもうすこし先が本当の品川宿、昔は遊郭が沢山あったんだって遊郭ってそそる響きだよね」
なにを言っているんだかヤジロウはでも東海道をよく調べていたなと校外学習にかける意気込みを感じたんだった。ひとしきり妄想を終えると
「ほんとはここが第一宿だからそこでお昼ご飯となれば次は川崎まで行けちゃうね」
食事を終えると第一京浜道路を南下しだした。
「あれ見てよ。変わった名前の駅だよ、青物横丁駅だって」
ボクは道すがら変な名前の駅を見つけた。
「なんだって通り過ぎるところだったよひなたありがとう」
ヤジロウは自転車を止めて道を探すように周りを見ていた。
「どうしたっていうの」
「いやここから海岸の方へ進めば昔の東海道なんだ。それに青物横丁駅は明治時代からある由緒ある駅だよ。青物は野菜のことだけど江戸時代からこの辺で市場が開かれていたといういわれだから」
本当に東海道おたくだ。夏休み中調べてたんじゃないだろうか。ボクらは海へとルートを変えた。
「どこら辺りが広重の風景かわからないけどこの海沿いで写真撮ろうよ」
ヤジロウはいうがスマホが動かないので写真なんて取れないよ。
「いいわよ私が撮ってあげるからそこに並びなさい」
リサ先輩は一眼レフの真っ黒なカメラを取り出した。
「あれそれ動くんですか」
「ああこれはね。大昔のカメラ、フィルムに記録するのよ。戦場でも活躍した名機なのさっきの異界獣も記録用に撮影しているの」
「なるほどアナログのカメラなんですね」
アオイは感心していた。ボクは大神を無理やり引っ張て来て5人で記念写真を撮ってもらった。
ルートを第一京浜道路に戻して大きな川沿いまでやって来た。
「これが多摩川だ。この橋を渡れば川崎ゴールだよ」
ヤジロウが言っているがボクもゴールが近いとホッとしていた。
「ひなた、玉川って言えば晴ニイがなんとかたまがわってとこに住んでたんじゃないの」
そうだった兄は大学を卒業して東京に就職してなんとかたまがわに住んでいたんだった。頼ればいいかなと思ったが場所がわからない。
「それは二子玉川じゃない。ここから上流で遠いわよ」
先輩が言った地名それだと思いだした。
「お兄さんはどうしているの」
意外にも大神の重い口が開いたがしまったといった表情を見逃さなかった。
「晴明兄ちゃんのことが気になるの?アラサーにもなるのに独身でパパと一緒の芸大を出た後、フリーランスのライターしているけど」
「そうか、いいお兄さんなのか」
「うん、優しくて頼りになるよ」
一瞬大神の顔に笑顔をが見えた気がした。大神も兄さんがいるのかな。
橋を渡り川崎駅へとたどり着くころには薄暗くなってきていたのだった。