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永禄九年

 ボクが目覚めたのはぼろぼろの廃寺、みすぼらしい仏像のあるお堂だった。隣に見知らぬ僧衣を来た青年が座っていた。

「あんたは誰?ここはどこなの」

 警戒し後ずさった。ボクは自分が巫女姿をしていることに気がつきそれにも驚いていた。

「巫女さんも誰ですか?それにどうして僕はこんなかっこをしているんだろう」

 どうやら二人とも同じようなことを言い返していた。頭の中で誰かが語りかけている。頭を押さえると青年も同じ仕草をしている。なんだこれ?先に言葉を発したのは青年だった。

「もしかして君はひなた」

 ボクの名を呼ぶ、その時語りかけていた声が情報となって頭に飛び込んできた。

「僕だよヤジロウだよ。ひなた解かる」

 よく見ると18歳くらいに成長したヤジロウの姿のように見える。

「ヤジロウなの貴方、そうだよボクはひなただよ。間違いないけどなんだか違う気もする?」

「ひなたは大きくなったみたいだよ。17,8才くらいに見える。僕たち転移したかもしれない。ひなたも心の声聞こえた?」

「うん、でもこの子の名はひな、巫女で修行僧のあなたとここに雨宿りしていたんだ」

 ピッカと光ると雷の音が聞こえた。雨の音にやっと気が付いた。

「僕の名前は水無瀬弥治郎っていうみたい。有馬の国の出身だといっている」

「私も有馬村の温泉宿の娘で食い扶持を減らすために熱田神宮に巫女として売られたみたい」

 どうやらボクたち二人は同郷の幼馴染でしかも恋仲だった。しかも巫女なのにその資格を失っている。げっげっ最悪初めての相手がヤジロウだなんて。

「まあいい、ここからはヤジロウとひなただ。過去のことはすっかり忘れてやって行こうじゃん」

「僕もその方が気が楽だよ。いったんリセットしよ、心の声くんそのつもりでいてね」

 ヤジロウも気まずかったらしい。でもボクの体はどうだったんだろう、いやいやそんなこと考えちゃだめだ。赤面しながら

「どうしてこんなことになっちゃったのかな」

「時代の感じから過去転移ってやつかな。あのお香の匂いがトリガーになったのかな」

「ラベンダーじゃないけど時をかける二人だな。でもどうやったら元に戻れるの」

「大抵は転移した条件を繰り返すてなことが物語には定番であるけど」

「信長と家康とかそんなこと言ってたじゃん、あのお香」

「いや家康は違うけど、条件クリアが難しそうなお題だよ。織田信長を探すなんてまいったな」

 ボクたち二人はうつむいて体育座りして向かい合った。


 その時お堂の扉が勢いよく開かれて誰か入ってきた。

「くそっずぶ濡れだよ。急に雨かよ・・・おっと誰かいるのお邪魔するよ」

 ボクたちは抱き合って驚いた。角の生えた男の子だった。

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