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ヤジロウ戦う

 まだ危機を切り抜けていないの周りには敵がいないどうして?でもその脅威は空からやって来た。

「厄介な敵が来る。僕でも対抗できるかどうかわからない」

 輝也は弱気なことを言っていることがさらに不安を覚えさせた。バサバサと大きな音を立ててその脅威は降りたった。緑色の鱗に凶悪な鋭い牙が覗く口元からはよだれが垂れていた。

「ドラゴノイドだ。異世界で一二を争う戦闘力を持つ人種だ。僕を残してみんな早く逃げろ!」

「ほう私のことを知っているようだが、きさまたちがこいつらを倒したのか。なるほど少しはやるようだなここで全員始末しておいた方がよかろう」

 槍を掲げて輝也に近づいていく逃げろと言われてもボクは敵の目を見ると足がすくんでしまっていた。

「早く逃げるんだ!」

 槍は呻り輝也を横殴りに捕らえた。ガードするが海へと吹き飛ばされていく。アカネがそれを追い海へと飛び込んでいった。そして奴はボクを見た。


つゆしもの

ころもまといし

氷壁(パレーテ)


 敵を氷の壁が覆った。アオイは

「この隙に逃げましょ。ひなたかなわないよ」

 バリバリと氷が砕けていく時間稼ぎにもならないのかよ。槍を大きく後ろに引きボクとアオイをターゲットに捕らえた。後ろに飛ばなきゃと思った瞬間、はっちゃんがドラゴノイドに衝突して吹き飛ばした。誰が?リサ先輩なの・・・いやボクらの後ろにいる。

 先輩ははっちゃんの後部積み下ろしハッチを開けて中から気絶したヤジロウを運び出していた。

「ヤジロウは大丈夫なの」

「衝突のショックで気絶しているだけ、この子も無茶をするわ」

 ヤジロウのほっぺを数回叩くと意識を取り戻した。

「ひなた、アオイ、二人とも怪我はない」

 ボクのことじゃなく君の方だよ心配されるのは、アオイはすぐにヤジロウのもとへ駆け寄っていた。

「ヤジロウさんありがとう、でもこんな危険なことしないでね」

 ヤジロウは立ち上がるとケースからメダルを取り出して親指ではじくと空に飛ばして落ちてくるメダルをフックパンチのように受け取ろうとしたが下に落とした。

「あれ、もう一回」

 もう一度同じことをすると今度はキャッチして

「ノウマク サンマンダ ボダナン バク!」

 僕より早口で不動明王?の真言を唱え

「来たれわが眷属(けんぞく)!その力を示せ」

 メダルを倒れているドラゴノイドへ投げつけた。そんなメダルぶつけたってだめだよ。


 メダルは不思議な光を放つと人の形に姿を変えた。顔には梵字(ぼんじ)が刻まれた包帯を巻きその耳を覆い隠し筋肉隆々な真っ白な毛をはやした大猿が片膝をついてドラゴノイドの前にいた。

「ヤジロウ!あれは誰?」

「あとで説明するよ。助かればね」


 大猿は顔を上げドラゴノイドを見ると手に持つ両端に金色(こんじき)(たが)がはめられた棒で敵を何度も叩きつけていった。あの大きなドラゴノイドの体が浮くほどの打撃だ。血反吐を吐く敵は

「厄介なやつを呼びやがって、今度会う時はお前たちの最後だ。首を洗って待ていろ!」

 とありきたりの捨て台詞を吐き飛び去って行った。

「は~よかった。喜多屋君あれは何?どういうこと」

 先輩もそうだがボクも全然わからない。海からはアカネが輝也に肩を貸して戻ってきた。

「みんな無事だったのあいつは何処?それにあの大猿」

修羅猿(しゅらさる)がどうしてここに」

 輝也も驚いていた。ヤジロウも呆然とした顔をしていた。

「それが・・・八式の中からみんなを見ているとメダルから声が聞こえたんだ」

 メダルから声?恐怖で幻聴が聞こえたんじゃないのかな

「僕の眷属だって言って真言を唱え叫べと言われたんだ。輝也も吹っ飛ばされるしひなたもアオイも大ピンチだろ、イチかバチかそれに賭けて八式を走らせたんだ」

 大猿は立ちすくんでいるだけであった。

「そうかバスクルから渡されたあのメダルに封印されていたんだな。修羅猿(しゅらさる)のうちの一体、異世界の住人だ。もとはグル、ゲル、ガルという猿人だった。オーディンの馬がないと具現化できないと思っていたよ。喜多屋の秘められたサテュロスの血のおかげだな」

 わからない言葉が沢山出て来たけど今はあのお猿さんだ。

「このままボクたちと一緒に連れて行くの目立つよ」

「そうだねメダルに戻るかな?戻れメダルに!」

 大猿はまた不思議な光に包まれるとメダルに戻りヤジロウの手に戻っていった。

「不思議だなこんなメダルが大猿になるなんてしかも僕だけにしか使えないなんて」

 しばらく眺め服の裾で拭くとケースに戻したのだった。

「そうだ助けてくれてありがとうヤジロウ、死ぬかと思ったよ。あのお猿さんはなんて名前」

「さあ?そうだな聞か猿のメダルから出たからキカザルかな」

 というとふらふらと気絶してしまった。輝也が受け止めて

「大丈夫だ。スタンアウトだ。魔法力を使い果たしただけでしばらく休めば回復するよ」

「よかった。私が介抱するから輝也さんこちらへ」

 ヤジロウをアオイは背負ってはっちゃんの中へ運んでいった。するともう一体の八式がこちらにやって来た。


「やはり鬼無瀬大佐でしたか」

「桑原曹長、無事でしたか」

 ボクのはっちゃんの前の乗組員で佐藤なんたらに置き去りにされていた人だった。

「その子たちが例のスーパーチャイルドですか。すごいですねベアビートルを三体、そして謎の敵を蹴散らすなんて、初めまして自分は桑原です。支援していただきありがとうございました」

 敬礼をして礼を述べていた。先輩は

「どうして異界獣に追いかけられていたのですか」

「はい、大井川付近に謎の飛行体、飛行船らしきものが飛来したとの報告を受け調査に向かっておりました」

「飛行船?敵のか」

「はい、レクチャーを受けておりました。オーガ、ゴブリンなど複数その飛行船の周りにおりました。偵察行為を見つかり後退を余儀なくされ今に至ります」

 そんな侵略が行われているのかと脅威を感じたが、どうやって大井川から向こうへ行けばいいんだろう。まさに越すに越されぬ大井川だ。

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