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アンニュイなオレの日常 4


「ドラゴンとは好都合だ・・・てめえら!! あいつを倒せ!!」

「グギャッギュゴアーー!!(ふざけんな無理に決まってんだろ!!)」


 召喚契約の効力の1つで、命令を理解するために、召喚奴隷は召喚術者の言語を理解できるようになってる。

 そして優秀な召喚術者は召喚奴隷の言葉を理解出来るようになるらしいが、ミシェリアはそこまでの召喚術者じゃない。

 つまりオレが何を言ったところでミシェリアに通じないのは分かってるんだが、さすがにこんな無理難題を吹っかけられては黙ってられなかった。

 ちなみに、レオンだけはミシェリアと意思疎通が出来るようだが、なんでかは知らん。


「今回はいつもの検分役だけじゃなく国からの視察も来てるんだ!! ここでドラゴンを倒せば莫大な報奨金が手に入るだけでなくあたしの名前も知れ渡る!!」

「ギャジュゴドラゴンガグゴアギアギャ!!!(だからってオレらだけでドラゴンと戦えるわけねえだろアホか!!!)」

「はっ! てめえも戦いたくて仕方ないってか!」 「グギャッゲギャーーーーッ!!!(一言も言ってねえーーーーッ!!!)」


 ・・・まあ言葉が通じたところで、これまでのことを思い返してみると、こいつが考えを改めるとは思わねえが・・・さすがにドラゴン相手はキツイ。

 命令には抵抗出来ない以上、なんとかこいつに心変わりを――、


「・・・それに、この程度のドラゴンも倒せねえようじゃ、あいつには絶対に勝てねえ・・・」

「アギャ?(はぁ?)」

「・・・・・・・・・」


 ふと隣を見ると、レオンも訳知り顔、みたいな感じでミシェリアを見てる。

 オレにゃ何のことだかさっぱりわからねえが・・・考えてみりゃ、召喚契約の時にこいつの名前だけは覚えさせられたが、それ以外のことは何にも知らねえや。別に知りたくもねえけどよ。

 ちなみに検分役ってのは、傭兵の戦果や戦いを見て報酬を決める連中のことだ。


「とにかくやれ!! 戦え!! てめえらが死んでもドラゴンは殺せ!!」


 ・・・説得は無理っと・・・。


「ど、どうするにゃ?」

「どうするもこうするも、命令された以上やるしかねえだろ」

「でもでも! ドラゴンちゃんの相手にゃんか無理にゃ!」

「・・・ここはドラゴンではなく、その召喚術者をやるしか道はない」

「お、なるほど! その手があったか! さすがだぜフォーテル!」


 召喚術者さえやっちまえば、ドラゴンは召喚契約から解き放たれる。

 そうなりゃドラゴンとも戦わなくて済むはずだ。

 ドラゴンを倒せって命令だが、これでも十分・・・の、はず。

 っていうかこれ以外は無理だしな。どう考えても。


「そうと決まったら、味方の連中が全員逃げ出しちまう前にやろうぜ!」


 ドラゴンのせいで形勢は逆転されつつあるが、今はまだ戦場に味方が数多く残ってる。

 やるなら今しかねえ。


「機動力のある俺とレオンとニャン吉がドラゴンの注意を引き付ける。その間にリザドは召喚術者を狙ってくれ」


 フォーテルたちの機動力を10としたら、オレなんて2、3だから妥当な采配だな。


「わかった。無理すんじゃねえぞ」

「おぬしも気をつけるんじゃぞ。それと、出来るだけ急いでおくれ」

「わかってるって」

「絶対に生き残ろうにゃ!!」

「ああ!!」

「さっさと行きやがれてめえら!! 命令が聞こえねえのか!?」

「ギャギャグゴゲキヤ!!(今から行くんだっつの!!)」


 ったく、折角意識を高めてたってのに水差しやがって、この暴君にはマジまいるぜ・・・。


 ・・・同時刻・・・


「いやはや、さすがはドラゴンですな。あの劣勢を覆しそうですぞ」


 戦場から少し外れた高台の上で、2人の人物が戦場を見物していた。

 1人はいかにも太鼓持ちが好きそうな、低身長で小太りな中年の男性。

 そしてもう1人は、涼やかな顔の、美形と言っても差し支えのない美青年。


「ドラゴン1匹で大丈夫かと心配しましたが、平気そうですね」

「そりゃもう! 当初から敗戦が濃厚でしたが、これで巻き返せそうですぞ!」

「それはよかった。僕もドラゴンを差し上げた甲斐があったというものです」

「しかし、本当によかったのですかな? 貴重なドラゴンを1匹頂いてしまって?」

「ええ、構いませんよ。素材にしようと捕獲したドラゴンでしたが、思った以上に特徴もなく、大して使い物にならないドラゴンでしたから」


 ドラゴンと言えば、知らぬ者がいないほどの強力な生物。

 それを本当に大したことがないとばかりに言う青年に、中年の男性はあんぐりと口を開けた。


「・・・は、はは、ははは。さ、さすがは放浪の天才召喚術者と呼ばれるだけのことはありますな」


 青年はその賛辞は当然のものとばかりに、にっこりと微笑んだ。


「それで、僕は合格ですか?」

「もちろんです! もちろんですとも!! なぜ何処の国にも属さない放浪の天才召喚術者様がこのような場所に現れたのかと疑って試してしまいましたが、これだけのものを見せられれば本物であることは間違いない!! いや本当に申し訳ない!! これこの通りです!!」


 中年の男性は青年の前で土下座すると、まるで青年の靴を舐めそうな勢いで頭を下げている。


「あはは。気にしないでください。言われてるように僕は各地を放浪してますし、そんな僕がたまたま立ち寄った場所で、突然力を貸しましょうか? なんて言ったら誰だって不審に思いますよ」

「そう言って頂けるとありがたい! 今後はこのようなどうでもいい戦場ではなく、もっと重要な作戦に参加して頂きますぞ! ではさっそく王へお目通りに――」

「・・・ん? あれは・・・?」


 戦場を見ていた青年の目が、戦場で動き回る1人の女性を捉えた。


「どうかしましたかな?」

「・・・いえ、知ってる人かと思ったんですが、どうやら人違いのようです。僕の知ってる人は、このような戦場とは無縁の、吹けば飛んでいきそうな可憐な女性でしたから」

「ほほぅ? 確かに貴方様のようなお方でしたら、女性が放っとくはずがありませんものなぁ。やはりその女性とも何か?」

「ははは。彼女はそのつもりだったみたいですけど、僕はそんな気はありませんでしたよ。ただ遊び相手には丁度良かったですけどね」


 青年はそれだけ言うと戦場に背中を向け、1度も振り返ることなく中年の男性と何処かへ消えて行った。

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