侵入者2024
ここは月の女神アルテミスが治める建国間もないアルテミス国……
俺……そう、悪魔であるルキは、この世界に名の通った偉大な大賢者、ササーヤンの研究施設、ササーヤン研究所のラボに、俺専用のバトルアンドロイドである黒きゴスロリ美少女カーリンと共にやって来ていたはず……だったのだが……
俺は気づくと薄暗い空間に座っていた……
ものすごい圧迫感だ……
「あれっ、たしか俺……ササーヤン研究所のラボにいたよな……」
俺はそう呟きながら、この薄暗く狭い空間を、だんだんと薄暗さに慣れてきた目で見渡した
「壁……」
やはり思った通り、顔を上げても、左右に首を振っても、圧迫感の元となっている壁がそこにはあった
突然、前方の壁が揺れた
だが、それは壁ではなかった
(前に誰かいる……)
「あの……すいません……」
俺は恐る恐るその人物に声をかけた
「何? 私?」
その人物は、そう言ってすぐに振り返ったが、その人物とは、誰あろう大賢者ササーヤンだったのだ
「なんだよ、ササーヤンじゃん、ここはどこだよ、俺はどうして座ってるんだよ」
俺は緊張から解放された勢いもあって大賢者ササーヤンに矢継ぎ早に質問をした
「えっ、ルキ、覚えてないの? ここは私が衝動買いで買った超小型空浮艇の中だよ、一緒に乗り込んだやん」
「そうだっけ? それにしても大賢者様でも衝動買いってするんだな」
「衝動買いは、しょっちゅうするやん、特に水族館に行った日にゃ、あれやん、ヤバい私が出てくるやん?」
「知らねーよ」
俺は冷たく言い放つと、大賢者ササーヤンをくすぐってやった
「いひひのうふふのおほほのほ……ルキ! や、やめるやん!!!!!!」
「ケロケロ」
突然後ろから声がし、俺は驚き後ろを振り向くと、そこには黒きゴスロリ戦士の二つ名を持つ、美少女バトルアンドロイド、カーリンがいた
「ケロケロ」
カーリンは、もう一度カエルの鳴き真似をした
俺は、何も言わずに優しい微笑みをカーリンに向け、カーリンの頭を優しく撫でながら、カーリンの後ろに乗っている人物に声をかけた
「君は誰?」
すると見るからに眠そうなその人物は言った
「私か? 私は睡魔君だ! ちなみに私の後ろに座っているのが、睡魔君ママだ、そして睡魔君ママの後ろに座っているのが睡魔君ママのママだ、そして睡魔君ママのママの後ろに座ってるのが睡魔君ママのママのママだ、そして……」
「あっ、もういいでーす」
俺は慌てて睡魔君の話を遮ったあと、窮屈な座席から立ち上がりササーヤンの耳元で囁いた
「で、結局、今どんな状況なんだよ」
近未来的なパネルに囲まれた操縦席にいるササーヤンは、俺の言葉を聞くと急に真剣な表情に変わり言った
「ルキの斜め上にあるモニターを見るやん、1つは船外モニターで、もう1つは小型ドローンを飛ばしているから、そこからのモニターやん」
俺は斜め上に2つあるモニターの内、まず小型ドローンからの映像を映し出すモニターを見た
「な、なんだよ、この超小型空浮艇は! まるで、さやえんどうじゃないか!!!!」
小型ドローンのカメラがとらえている俺たちが乗るこの超小型空浮艇は、まるでさやえんどうその物の形状をしていたのであった
そして驚きもつかの間、俺はすぐに、もう1台のモニターに目が釘付けになった
なんとその船外モニターには大巨人が大ジョッキでビールを飲んでいる姿が映し出されていたからである
「おい! 一体どういうことだよ!」
俺は大賢者ササーヤンを問い詰めたが、ササーヤンは、その問いには答えず、ただ「逃げるやん……」とだけ言った
突然モニターに映し出されている大巨人がこちらを見たかと思うと大巨人が持っている巨大な箸が近づいてくるのが見えた
「あっ、この船がつかまれるぞ! 全速前進だ、早く早く!」
俺はそう言ってササーヤンの両肩を揺すったが、ササーヤンは余裕ぶっこいた表情で、薄ら笑ったまま、ダルそうに言った
「分かってるやん」
超小型空浮艇さやえんどう号(仮)は、ギリギリのところで大巨人の箸をかわした
俺は、とっさに前方に見えた枝豆が山盛りになっている皿を指さし叫んだ
「あそこだ! あそこの枝豆の中に隠れるんだ!」
「はいはーい、アクセル全開やーん!」
大賢者ササーヤンは、見事な操縦テクニックで超小型空浮艇さやえんどう号(仮)を枝豆の中に潜り込ませることに成功した
俺がホッと胸を撫で下ろしていると大巨人の娘らしい大巨人の少女が叫んだ
「あっ、ママー、枝豆の中に、さやえんどうが混ざってるよー!」
俺はその時、重大なミスをおかしたことに気づいた
「そりゃ、見つかるわな……」
そして大巨人のママがやって来る大きな足音が聞こえてきた
俺たちは緊急脱出することにした
大賢者ササーヤン、そして俺、さらにカーリンの順で、超小型空浮艇さやえんどう号(仮)からチュルッと上空に勢いよく飛び出した
だが、睡魔君一族は逃げ遅れ大巨人少女に超小型空浮艇さやえんどう号(仮)もろとも食べられると、すぐに大巨人の少女はスヤスヤ寝てしまった
「こんな所で寝ちゃダメでしょ」
大巨人のママはそう言うと大巨人の少女を連れ行ってしまった
その様子を見ながらテーブルの上空で、ササーヤンに続きカーリンもパラシュートを開いた
「えっ!!!!!!!!」
俺は叫んだ
パラシュートを開いた次の瞬間、カーリンは巨大なカエルの姿になっていたからである
「カ、カーリン!!!!」
巨大カーリンガエルは俺の叫び声を聞いたのか、こちらに一瞥をくれたが、すぐに何食わぬ顔をしてぷかぷか浮いたまま、クロールをしながら飛んで行ってしまったのだった
俺は気が動転しながらもパラシュートの紐を引いた
その瞬間、ものすごい煙と共にパラシュートは開いた……が
「あ、足?」
俺が上を見上げると美しい両足がパラシュートの下部から突き出ていた
「ん?」
よくよく見ると、パラシュートもスカートのようなデザイン、形状であった
その時パラシュートの上の方から声が聞こえてきた
「ルキ、あんまり、見上げるでないぞよ!」
「えっ、その声……もしや、ヘラ様?」
俺がそう言った途端、テーブルの上に着地したのか、俺の上にヘラ様の美しい両足とパラシュートのようなスカートが覆いかぶさってきた
気づくと仰向けの俺の上にヘラ様が座っている
ヘラ様とは俺のフィアンセで女神様である
「ヘラ様……どうして……」
「ルキ、よく聞くのじゃ、ここは、夢の中じゃ、そなたは大賢者ササーヤンによってこの世界に連れて来られておるのじゃ、はよう目覚めるのじゃ」
「えっ、そうなんですか? ササーヤンめ! あとでお仕置だな! ところでヘラ様、目覚めると言ってもどうやったらよいのですか? 感覚的には現実ですけど……」
「それはじゃな……わらわとキスをするのじゃ、さすれば目覚めるであろう」
「じゃあ、すぐに俺とキスをしましょう!」
「嫌じゃ!」
「はっ、何でですか?」
「こんなムードもへったくれもない場所では嫌なのじゃー!!!!」
「はぁ……分かりました、じゃあどこなら良いのですか?」
「あそこじゃ!」
ヘラ様はそう言うとビールを大ジョッキでグビグビ飲んでいる大巨人の方を指さした
「あの、真っ白なチャペルの前がよい」
「いや、あれは、ひややっこですけどね」
「なんじゃと? ルキ、わらわと熱いキスをしたくはないのかの?」
「いや、もちろんしたいです!」
「では、行くぞよ」
俺はため息をつくと、ヘラ様の手を掴み大巨人の方に歩き出した
大巨人に見つかると事である
ようやく焼き鳥の皿のそばまでくると俺は振り向きヘラ様に言った
「じゃあ、ここから、ひややっこまで走りますよ」
「分かったぞよ」
だが、ひややっこの手前、およそ100mの所で、大巨人に見つかったらしく、大巨人の手が迫ってきた
その時である……
大賢者ササーヤンが、俺たちの前に飛び出したかと思うとチーちく、らしき物をバズーカのごとく肩に担いだ……と思ったら大きな音と共にチーズが飛び出し大巨人の手についた
大巨人は慌てて手を引っ込めた
「一体、どんな仕組みだよ!!」
だが俺のツッコミを聞く間もなく、ササーヤンはすぐに今度は、ちくキュウを肩に担ぎ、ぶっぱなすと、ちくわバズーカからキュウリが飛び出し大巨人の目にぶち当たったのだった
「わー、なんだ、キュウリが、キュウリが……」
大巨人は叫び、大巨人の注意が俺たちから、それたのがハッキリ分かった
「今やん! 走るやん、ルキ!!!!」
俺はその声を聞き終わる前には、もうヘラ様の手を引き走り出していた
そしてついに真っ白なチャペル……いや、ひややっこの前にたどり着いたのだった
俺はすぐさま、ヘラ様と向かい合いヘラ様の両肩を持ちキスをしようとした
「ルキ、神父はどこじゃ?」
だが俺はヘラ様のその言葉を無視し、ヘラ様が喋っているにも関わらず、喋りを遮るかのようにヘラ様に熱い熱いキスをした……
しばらくして俺は目覚めた……
すると、そこには……
ご高覧いただきありがとうございました
恐れ入りますが、星評価していただけると、幸甚に存じます