Episode5 〜2人目の覚醒者〜
翌朝、尖が目を覚ますと、何人もの人が廊下を走る音がしている。
状況を理解できないこともありボーッとしていると、医務室の扉が勢いよく開く。
「尖!尖はいるか!?」
「ここにいるよ、剛。そんなに大きい声出さなくても聞こえてるよ」
「よかった・・・じゃなくて、とりあえず逃げるぞ!早く靴を履いて準備してくれ」
「いきなり、どういうこと?逃げることだけ言われても分からない。火事でもあったの?」
剛は少し間をあけて一言だけ呟く「爆弾だよ・・・」
その言葉を聞いて、パニックになりながらも、尖は自分の身支度の用意が早くなるのが分かる。
「でも、なんで爆弾があるって分かったの?ここは国会議事堂だし、すごい安全な場所のはずでしょ?」
剛もまだ頭の中で上手く整理できていない部分もありつつ、
「俺も廊下から聞こえてきた警官の話を聞こえてきただけなんだけど、15分前くらいに国会の警備員に手紙が届いたらしい。警備員が差出人不明の手紙を開けると、こう書いてあったらしい」
「拝啓
日本で最も愚かな者たちを守るものたちよ
本日、国会議事堂内に2つの爆弾を仕掛けた。1つは5分後に爆破し、もう1つは国会議事堂内で最も癒される場所で20分後に爆発するだろう。
この手紙を受け取ったあなたが聡明であることを願う」
「たしか、そんな内容だったと思うぞ。もう準備できたか?あと3分くらいしかない。急げよ!」
「・・・ねぇ剛、国会議事堂内で最も癒される場所ってもしかして医務室だったりしてね。」
少し茶化すように呟いた尖の頭の中で声が響いた。「今こそ、汝の力を使うとき・・・」
その声が聞こえたと思うと、尖の目には医務室全体が透けた3D画像のように見えていた。
「まただ・・・これが力なの?すごく頭が疲れる。ん?あれはなんだろう?」
尖の目には、何かコードで絡まったような医務室には不釣り合いな箱が映った。
「剛!あの高い棚の上にある医療箱を取って!」
「こんな時にそんなことしてる場合じゃないだろ!」
「いいから早く!」
怒鳴るように大きな声を出す尖に少し驚き、剛は言うとおりに医療箱を尖に渡す。
そして、恐る恐る開いてみると、そこにはデジタル時計のような文字盤と赤く点滅する光が見えた。
同時に、尖の目にはその中身が透けて見えるように立体的に捉えることができ、瞬時に爆弾だと分かる。
「剛、これ爆弾だよ!残りはあと20秒しかない!」
「どうしよ・・・どうしよ・・・」
とっさのことに動揺した剛も3秒ほど沈黙し、気づいた時には尖の手から爆弾を奪い、医務室から飛び出していた。
(ちょっと待て、オレ何やってんだ。次はどうする?こんな持ってたら確実にオレ死ぬじゃん!)
1秒にも満たない時間だが剛は心の中で葛藤し、次の循環には廊下の窓を突き破り、国会議事堂の外にいた。
(残り時間は?!あと5秒かよ!どうする・・・どうしたら皆を巻き込まないんだ。映画とかでよく観るのは・・・上に投げてるシーンだけど。爆弾はそこそこ重いし、こんなのちょっと上に投げただけで爆発から逃げれるのかよ。あ〜わっかんねえ)
混乱している剛の周りの音が一瞬消えたかと思うと声が聞こえた「「汝の力を信じよ・・・」
剛にはなんのことか分からなかったが、とりあえず力いっぱいに爆弾を上に投げた。
そうすると、ものすごいスピードで爆弾は空に上がり、約1,000mほどの高さまで到達したかと思うと、とてつもない爆発音とともにオレンジ色の光が見えた。
(なんだ今の・・・あれ本当にオレがやったのか?)
自分の力に驚きを隠せずボーっとしていると、「剛!大丈夫?爆弾は?」と尖が駆け寄ってきた。
剛は、思わず上空の光を指さして苦笑いする。