表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/198

2/10 ★こわいはなし

「ねえねえ、怖い話して」


 キッチンで絶賛晩御飯調理中の私のもとに、息子が突撃してきた。


 このところ、小学五年生の息子は怖い話に興味がある模様。

 怖い話を聞いて、それを学校で友達に聞かせて、怖がらせることに夢中なのだった。


 …なんという悪趣味な。

 誰に似たんだ。


「いいよ、よく聞いてね…。


【悪の十字架】


 あるところに怪しげなお店がありました。

 ドアはいつも、閉まっています。

 大きな十字架のデザインの重厚なドアは開く気配を見せません。

 少年は、そのドアが開く時をずっと心待ちにしていました。

 そこに、背の曲がったローブを着込んだ鼻の長い魔女が現れました……


 少年は魔女に問いかけました。

『この店は、いつになったら開くのですか!!』


『十時だよ』


 ばたん!

 重厚なドアが閉まってしまいました。


 少年が自分の腕時計を見ると、九時半でした。


『 あ く の 、 じ ゅ う じ か … 』


 少年は、三十分待ったのち、

 ようやくお店にはいれたという事です」


息子が何やらおかしな顔をしている。

……愉快な子供だ。


「怖くない」

「なんだ、じゃあ別の話にしよう、よく聞くように。


【恐怖の味噌汁】


 ある日、お母さんがぶつぶつ言いながら、鍋をかき回していた。

 ……何を言っているのか、聞き取れない。

 いつもの優しいお母さんの顔が、なんだかとても怖い。

 この人は、本当に…、僕のお母さんなんだろうか……。


 心配になった僕はお母さんに声をかけた。


『お母さん……、何を、作っているの』

『おいしい、みそ汁よ』


 ……嘘だ!!

 見たこともない怪しげなものが表面を覆っている!


『これは、本当に……、みそ汁なの?』

『ええ、今日、ふの味噌汁なのよ』


『き ょ う 、 ふ の み そ し る ・・・ ?』


 初めて食べた、ふのみそしるは、

 恐ろしく美味かったという事です」


息子が何やらおかしな顔をしている。

……見ていて飽きない子供だ。


「ちょっと、違う…」

「なんだ、お気に召さない?じゃあ最後ね、よく聞いてね。


【悪魔のぬいぐるみ】


 ミカちゃんには、大事に大事にしているぬいぐるみがありました。

 けれど、汚れてしまったので、お母さんが捨ててしまいました。

 ミカちゃんは泣いて泣いて、お母さんに言いました……。


『ぬいぐるみがないと、さびしくて眠れないよぉ…』


 お母さんは、ミカちゃんのために新しいぬいぐるみを買ってきて、袋に入ったままの状態で手渡しました。


『あけていい?』

『かわいがって、あげてね……?』


ミカちゃんが袋を開けると、中から可愛いぬいぐるみが出てきました。


『あ、くまのぬいぐるみ!!』


…おしまい」


息子が何やらおかしな顔をしている。

……表情豊かな子供だ。


「全然怖くない……」

「いや……だって、怖いの聞いたらさ、君寝れなくなるよ、ホント。それでもいいの」


息子が震え上がった。

……なんだ、ずいぶんかわいいじゃないか。


「寝れないのは困る」


息子がプンプンしてリビングに行ってしまった。

……なんだ、面白い人だな。


いや、まあ、ねえ……。


怖い話すると、、、いろいろ怖いことになっちゃうかも、しれないでしょう?

怖くなってからじゃあ、、、取り返しが付かなくなっちゃうかも、しれないでしょう?


……現に、今だって。


怖くない、愉快な話をしただけなのに。


でっかい十字架を背負ったクマのぬいぐるみが、ドロンドロンの怪しげな物体の入った鍋を持って、ここにいるんですけれども……?


さてどうするかなと思って、下を見たら。

……うっかりくまちゃんと、目が合ってしまったじゃないの。


『 食 べ る … ? 』


「頑張って作ったんだね、偉いと思うよ。でもねえ、ごめんね、今ね、もうご飯作っちゃってるから、おなか空いてる子の所に、持ってってあげて?」


『 う ん 、探 し に 行 っ て み る ……』


 くまちゃんがふわりと消えたのを見て……、安心した私は、晩御飯の調理を再開。


 コンロでぐつぐつ煮える鍋の中には、卵が五個。

 ……うん、もう茹で上がった頃かな。


 一気にざるに開けて、冷水につけてと。


 あれ、一個派手に割れてる。


 ……食べちゃえ。

 卵の殻をむいて、パクリと、食べる。


「ゆでた まごを たべる、お母さん…、か。」


 ああ、おもしろい、おもしろい。


 ……明日はもっと面白い話をしてあげようかな。



 怖い話は、しなくても、……ねえ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 懐かしのベタネタ集合やなwwwwww……と、オモてたら(汗) [一言] 【それは死後の亡霊】 ソレ! 梯子登れー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ