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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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1/14 ☆おむすび

「ごめーん、おむすび一個貰ってくねー!」


 まだ薄暗い朝いちばん、娘がキッチンで何やら騒がしい。


 お風呂掃除をしながら洗濯機を回す私の耳に声を届けようと、大きな声を張り上げているようだ…なんと律儀な。

 ちゃんと伝えてくれるのは良いんだけど、もうじき出勤時間だというのにまだ顔も洗いに来てないぞ、大丈夫なのか。


「へいへい、自由にお持ちくださいな、っていうか君急ぎなさいよ、間もなく六時ですよ。」

「ヤバイ!!顔は向こうであらお!!行ってきます!!!」


 ドタバタと廊下をかけて行く重みのある足音を聞きながら、朝イチコーヒーの準備でもしよまいか…と、のそのそキッチンに向かうと……げえ!!


 人が作ったお弁当が…忘れられとるがな!!!


 娘は少し離れた場所に駐車場を借りている。今すぐ追えば、たぶん追いつけるはず!!!あわてて私は靴下も履かずにズックに足を通し!!!くー、早朝の全力疾走は…きつい!!!


「あ!!お弁当忘れてた!!ありがとー!」


 老いた身で力の限り駆けた結果、愛車に乗り込む寸前で何とかお弁当を手渡せたよ…ああ、疲れた。


「君ね!!ゼイゼイ…おむすび持ったからって安心してハアハア…昼飯を置いていくのはどうかとゲホ、ゲホ…思うよ!ふひー!!」


 おむすびというのは、おにぎりのことではない。


 おむすびという美味しそうな名前で呼ばれてはいるが、その実態は、レジ袋を三角形に畳んだ代物である。

 レジ袋ってかさばるじゃない?私はそれをおにぎり形に畳んでコンパクトにしているのですよ。見た目の印象から、我が家ではこの折りたたまれたレジ袋はおむすびと呼ばれてわりかし重宝されていたりするのだな。


 その作り方はいたって簡単。


 レジ袋を横にして広げ、持ち手部分同士と底の端っこ同士が重なるように半分に折り、折った端の部分を二回ほど巻くような感じで畳み、細長くしたら、あとは底部分の方から、三角形になるようにしてパタパタと巻き込んでいき、最後はキリの良い所でビニールの隙間にねじ込んだら完成。


 旦那がすぐにレジ袋を購入してはあちこちにほったらかしにするので、我が家のキッチンにはおむすびが収納されている引き出しがありましてですね。

 ちょっとした買い物の際やゴミ出しの時に使えるようになってるんだよね。


「だって今日社販の日じゃん!!レジ袋持って行かなきゃってそればっか考えちゃって!ごめんね!いっぱい買ってくるから許して!!」


 娘は水産品加工会社で働いているのだけど、週末になると作り過ぎただか予想外に捌ききれなかっただかの製品を格安の社員価格で販売して下さるのですよ!先月はお節料理のあまり物をそれはそれは安くたんまりと買わせていただき、大喜びだったんだよねえ…。もう毎月正月がやってこないかしらと本気で願った私がここに!!


「なに、おむすび一つで足りるの?底が抜けるといけないからさあ、余分に持って行きなよ!遠慮せずたくさん買ってきてね!!あのねえ、お母さんはね、ウニ食べたいな、イクラでもいいよ、ネギトロもいいよね、だし巻玉子もあったよね…おせちはもうないんだよねえ?」


 なお、私の上着のポケットの中には常に二、三個のおむすびが常備されている。今晩のアテを期待して、三つほどおむすびを娘に手渡す♡


「あーも―!!わかったよ!!じゃあね、行ってきます!!!」

「行ってらっしゃい♡ご飯だけたくさん炊いとくわね♡」


 安全運転で駐車場を出ていった娘に手を振り、私はてくてくと歩いて自宅へと向かう。


 今日は何買って来るかな?ちょっといい酒でも探してこようかしらん、巻き寿司にしてもいいかも、そうだワサビもいいやつ買っちゃお、カルパッチョとかもいいよね、モッツァレラとオリーブオイル買ってこなきゃ、クラッカーも買っとこうかな、ネギはカットネギでいいかな、多めに買って贅沢に使っちゃお…早朝だというのに頭の中は晩御飯のことでいっぱいだ♪



 一日中ご機嫌で過ごした私であったが。


 今週…思いがけず販売が絶好調だったらしくてですね。

 まさかの社販なしとか……。マジか……。


 仕方がないので、たっぷり炊いた米で、本物のおむすびをこしらえてですね。


 家族みんなで米の美味さをしみじみと噛みしめたという、お話ですよ……。

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