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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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6/5 派手な色の飲み物に目がない

 私はわりとかなり、口にする飲み物に抵抗がない。


 とりあえず気になったものを口の中に入れてみることがまず大事で、味が二の次になりがちというか…飲んでみたいという好奇心が抑えきれないというか。

 鰻コーラ、ワサビドリンク、蛍光色のラムネにイカ墨サイダー、一見ギョッとするようなものを、市販されているんだからそこまでヤバイ味はしないであろうという謎の安心感を胸に、躊躇することなく飲んでみるタイプである。


 特に、派手な色のやつが大好きで…目がない。ついつい目に鮮やかな色が映ると、ホイホイと手が伸びてしまうのだ。でもって、ぐびぐびといってしまうのだ。


 好きと言っても、味が好きなわけではない。

 もともと、怪しい感じの飲み物全般が好きなのだ。


 子供の頃は、溶かして飲む粉ジュースのお菓子?が好きだった。

 駄菓子屋の胡散臭いチューブ入りのドリンク各種が好きだった。

 そのまま食べるような飴やラムネ菓子でさえ水に溶いて飲んでいた。


 なんとなく甘くてぼんやりしたラムネ風味のやつ、確かに甘いんだけどなんの味なのか見当がつかないやつ、中途半端な酸味と炭酸っぽさがいけ好かないやつ、粉でなめたらそれなりの味なのに水に溶いたらまずくなるやつ…、うまい飲み物はたくさん溢れているというのに、買って飲んだことを後悔するくせに、ついつい見た目の麗しさから派手な色の…なんとなく面白そうな飲み物を求めてしまうくせがあるのだ。


 派手な見た目の、一風変わった感じの飲み物に…魅入られているとしか、思えない。


 およそ、体に悪そうな飲み物。

 明らかに自然界に発生しない、作られた色。

 人工的な、わざとらしい品。


 随分年を重ねたというのに、未だ子供の頃のくせは抜けず…最近のカラフルなドリンクブームが、かなり私の心をくすぐっている。


 ピンク色に水色系、黄色に蛍光色…体に悪そうな色の飲み物がたくさんあふれていて、地味に大喜びしている。はりきって輸入もののドリンクを買ってきては、大喜びで開けて…わりとかなりの確立で、「うーん・・・」と唸ってみていたりして…。

 色合いこそは私の好みど真ん中のドンピシャなのに、味がどうも…、まずくはないが、親しみの無い感じと言うか、微妙というか、なんとなく腑に落ちないというか。


 …おそらく、こういう感想は…子供の時にもあったはずなのだ。


 初めて炭酸のきつい某ドリンクを飲んだ時、半分も飲み干せず…いつまでも冷蔵庫の中に残っていて親にめちゃめちゃ怒られたのを思い出す。好きじゃないと思ったはずなのに、周りの子がおいしいおいしいと言うからつられて飲むようになって…きっと何回も飲んでるうちにその味に慣れて。いつの間にか気が向いたらチョイスしてしまうレベルまで格上げされたのだなあ。今では親しみを持つほどに仕上がってしまったという。


 つまり…今飲んでいるこの絶妙なマズ感もやがては薄れ、私に馴染んでいくという事なのだ。

 あと何本くらい飲めばいいのやら。…馴染むまで販売してればいいけど。


「ただいまー!!アッ!!まーたおかしなもの飲んでる!!!今度はナニ?!おいしかったらあたしも欲しい!!うわ、これちょっと前にバズってたやつじゃん、ホントお母さんは新し物好きだねえ…」

「キレイだね」


 むむ…一人で感傷に浸っていたら、近所のカラオケに行っていた娘と息子が帰ってきたぞ!!

 最近この人たちは親を置き去りにして、姉弟仲良くのどを枯らしにいくんだよ。三人で行くと歌う回数が減るからとか何とか言ってさあ…何という自己中心的な、いやしかし自分もヒトカラにしょっちゅう行ってるからな……。


「これはなかなか好きじゃない味だったね、なんかこのふたの部分が生魚くさいというか…でも若者の間で人気のお品らしいから飲んでみたら!!あとさあ、キミたちこの変なグミ食べない?面白そうだと思って買ったけど明らかに微妙で!!」

「ジュースなのに生魚?!…ああ、確かに、金属っぽいような…うーん、一口でいいや!!グミはいらない、晩御飯なーにー?」

「…かたいグミだね」


 ムム…派手なジュースも、カラフルなグミも…子供たちには不評らしい。こうなったら自分ですべて消化せねばなるまい。


「もうちょっとでカレーピラフが炊き上がるよ、あと冷蔵庫の中にポテトサラダが冷やしてあって、今からチーズオムレツ焼こうと思ってさあ。お父さんがもらってきたでっかいシュウマイも食べちゃおうと思ってるんだけど…」

「じゃああたし蒸し器やろ!!ついでに冷凍肉まんも作っちゃっていい?もう夏じゃん、冬のものを持ち越すのはやばいし!!いい機会だから冷凍庫の中空っぽにしたろ!!」

「僕はオムレツを焼こう」


 どうやら晩御飯の準備は子供たちが進んでやってくださるらしいぞ!!


「じゃあ、あたしはお先に食卓に着かせていただきますよ…誰も食べてくれないグミと微妙なジュースをおいしくいただくために工夫をしなければならないのでね」


 あまりおいしさを感じない飲み物は…おいしいと感じる飲み物に仕上げてしまえば問題は無いのだ。

 幸い我が家には、何でもおいしく仕上げてしまう魔法のような素材がございましてですね。


 大きめのロックアイスをお気に入りのグラスに入れ、ハサミで細かく刻んだグミを投入し、微妙な飲み物を注ぎ。


 とっておきのスピリッツ&強炭酸を混ぜ込んだら…あっという間においしいおいしいカクテルの出来上がり!!

 このさあ、グミ入りのカクテルってやつが本当にいい感じなんだよね!!色合いもキレイだしまさに映えって言うか!!ああ、飲み物とは…目で見てうまさを感じるものなのだ、ぐび、ぐび・・・・・・。 



「オムレツできたよ」

「おっ!!出来立ての熱々、いただきまーす!!うーん、これはうまい!!さすがだね!!君は良い料理人になるよ!!」


 冷たいカクテルと熱々のとろとろチーズたっぷりオムレツの相性は抜群だ!!

 スプーンが、とまら───ん!!!


「シュウマイできたー!ってお母さんあたしの分のオムレツまで食べないでよ!!シュン君、追加で焼いて!!」

「おっ!!蒸しあがりほやほやの熱々、いただきまーす!!ハフハフ!!これうまーい!!あふれる肉汁、冷凍なのにわりかしシャキってる玉ねぎ、生姜の香りも相まってからしポン酢と絡まると…うおお!!箸が、箸が止まら―――ん!!!」

「卵全部使っていい?」


 冷たいカクテルと熱々のシュウマイの相性は抜群だけど、グラスの中が空っぽだ!!うーん、こうなったらメロンリキュール出すかな!!今日は派手な色合いの酒が飲みたい日だ!!そうだ、この前買ってきたクライナーを…私はいそいそと戸棚の奥に手を伸ばしましてですね!!!ぐふふ、まんまるロックアイスも使っちゃお!!!


「ただいまー!!アッ!!もう食べてるの?!お父さんも食べるー!!まーたお母さんは変なもん飲んで!!そんなに色のついたもんばかり飲んでると、体の中で色が混じって真っ黒になるよ!!いくらもともと腹黒いとはいえ…ってゆっかこれお酒じゃん!!モー飲んじゃダメ!!」

「このお酒はね、ふたを開けたとたんに劣化するんです、一番おいしい状態で飲まれたいと願っているお酒がここにいるというのに、わざわざ風味を損ねる行為をするわけにはいかないよ…。酒好きとして、お酒が悲しむようなことは、したくない…お酒に申し訳、無い…。だから飲み干さないとね!!うーん、ぐびぐび!!」


 派手なお酒にうまい食べ物、騒がしい家族、陽気な自分!!!

 実にけっこう!!ケッコー!!コケコッコー!!!


「あーもー!!お母さんが大変な事に!!ちょっとお父さん肉まん全部食べないでよ!!!そのニラまんじゅう二個しかないから食べないで!!」

「コーンの缶詰開けていい?」



 ……いつも通りに、調子に乗ってしまった私はですね。



「ねーねー!!昨日お母さんが絶対好きなやつって言ってた新作のマックフィズ飲みに行くって話は?!あたしマックグリドルとホットケーキ食べたいんだけど!!」

「お父さんも行くー!!うんとね、ビックブレックファストデラックスにソーセージマフィン、ナゲットとアップルパイって朝からやってたっけ?」

「メガマフィン食べたい」


 安定の、いつも通りのですね。

 翌朝の、二日酔いで頭が痛すぎてうーんうーんというパターンにですね。


「もうちょっと…静かに……。」


「も~!!だからもう飲むなっていったのに!!先に行って注文しとくからね?!あたしめっちゃ頼んじゃお!!フィレオフィッシュも買っちゃお!!」

「お母さん来ないと支払えないから!!車出しとくね!!帰りについでに昼ごはんの買い物も行こ!!日曜だし昼から混むから!!」

「…大丈夫?」


 無理やり叩き起こされて、連れ出された梅雨の晴れ間の空は、それはそれは鮮やかにですね。

 大変美味しそうな水色をしておりましてですね。


 新作のドリンクは、それはそれはキラキラと輝き…爽やかにシュワシュワとはじけましてですね。


 もたれきった胃袋に、じんわりと染みわたったという、お話です……。

 


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