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5/14 アクリルたわしは汚れがよく落ちる

 祖母が知人からアクリルたわしをもらってきた。

 なんでも、編み物が趣味の人が配っていて断り切れなかったのだそうだ。


「これで洗うとね、洗剤がいらないんだって!!アンタにやるから使いなさい!いっつも洗剤を大量に使うからね、今後はこれで節約しなさいよ!!」


 太めの毛糸で編んだ、ブドウの形の…手のひらサイズのシートっぽいものを手渡された。

 パッと見はマスコットっぽい、お守り代わりにかばんにつけてもお洒落な感じの代物だった。


 これで洗うのか…ちょっとかわいそうな気がしないでもない。

 せっかくかわいいのに、汚れちゃうんだな、そんなことを思った。


 その日の晩、晩御飯の洗い物の時にアクリルたわしを使った。


 電気ジャーのお釜のご飯のこびり付きは…若干取れやすいような気がした。

 みそ汁の鍋も、若干汚れが取れやすいような気がした。

 ちくわと玉ねぎの煮物の小鉢は、いつもと変わりなかった。

 きゅうりの小皿は、いつもと変わりなかった。


 次の日、昼御飯の洗い物の時にアクリルたわしを使った。


 冷や麦を茹でたの鍋のこびり付きは…若干取れやすいような気がした。

 つゆの鍋も、若干汚れが取れやすいような気がした。

 ネギの小鉢は、よく洗ったけどにおいが残っていた。

 つゆのグラスは、いつもと変わりなかった。


 その日の夕方、親戚のおばさんがやってきた。

 出張で九州に行ったので、おみやげにカステラを持ってきてくれたのだ。

 カステラを切り分けてお皿にのせ、紅茶を入れて、飲んで、後片付けを命じられたら、おばさんが手伝ってくれた。私が洗って、おばさんが布巾で拭いてくれることになったのだ。


「あ、アクリルたわし使ってるの?これ、よく落ちるよね!!」

「うん、ばあちゃんが昨日もらってきたの」


 最近の出来事を報告しつつ、手早くお皿とカップをアクリルたわしで洗っていく。

 私は洗ったものをシンクの中に重ねておいて、最後に一枚ずつ丁寧に水で流してかごの中に入れるタイプだ。自分ルールのもと、お皿を水で流して洗い物かごに入れたのを見たおばさんが、得も言われぬ顔をした。


「え、まさか…あーちゃん、洗剤なしで洗ってるの?」

「え?洗剤なしできれいになるって、ばあちゃんが…違うの?」


 いつもは洗剤を使っていた事、アクリルたわしは洗剤がいらないと言われたこと、昨日の夜から洗剤は使っていないことを言うと、おばさんは祖母のところに向かい、間違いを正してくれた。


「油ものとか洗う前に気付いてよかったねえ!!」

「ふん!!おかしいと思ったんだよ!!あーあー、昨日の洗い物が全部パアだ!!アンタ、今から洗い直しといて!!」


 何をどう話を聞いてきたのか知らないが、祖母はアクリルたわしは洗剤なしできれいになると思い込んでいたのだった。おそらく、洗剤をたくさん使わなくてもいい=洗剤なしでOKという認識になった?たわし制作者が使い心地の良さを大げさに吹聴したのかもしれない。


 洗剤を含ませたアクリルたわしは…わりとすぐにほどけてしまって、それ以来実家のキッチンにお目見えする事はなくなった。


 久しぶりに再会したのは…娘が保育園の時に出向いた、バザーの会場だったかな?

 なんだか無性に自分も作りたくなって、余っている毛糸でせっせと編んだことを思い出す。


「洗剤なしでもよく汚れが落ちるんだって!!!そう聞いたんだってば!!!」

「グぬぬ…あんたもどっかの愚かしい婆さんとおんなじことしてるよ!!てゆっか、こんなこってりとした脂が残ってんのにわからいでか!!!あほじゃん、めっちゃ目が節穴じゃん!!」


 ゴールデンウィークも明けた本日、仕事から帰って軽く何か食うかとキッチンに向かってみれば!!!


 バザー帰りの旦那がおかしなことを吹き込まれ…ぺらっぺらのアクリルたわしで表面だけちゃっちゃと撫でて、てっかてかに輝くフライパンと皿、フライ返しにフォークどの他もろもろ、もろもろぉおおおおおおおお!!!


「洗い直そう…」

「も~!!だから言ったじゃん!!お母さんに聞こうって!!乾いたら脂が蒸発するわけないじゃん!!」

「だってー、だってー!!!」


「君ら責任もって洗って下さい!!あたしゃ近所の寿司屋で軽く食ってくるんで、あとはよろ!!ま、洗い終わったらデザートぐらい食べに来れば!!」


 夕食を食べ終わって腹いっぱいの人々が、まさかあれほど寿司をね?!デザートをね?!


 食うとは思いませんでしたって、話なんですけどね?!

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