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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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5/7 ☆1000000円札

「…ありがとうございます、お会計1680円になります!」

「はーい…、えっと…うん?!」


 娘と美容院に行った帰り、コンビニに寄ってお昼ごはんとデザートを買おうとレジに向かった私は…財布の中に小銭しかないことに気が付いた。


「あああ!!やば、お金が…ない!!!」

「ええ、マジで!あたしお金持ってないよ!!」


 …しまった、シャンプーカットブロー二人分で財布の中がすっからかんになってたんだった。さっき散々美容院のレジでお札足りてよかったと騒いだのに、新作のもちウサギが並んでいるのを発見してはしゃぎまくって…全部忘れてしまったらしい。あああ、こういうとこだよ、ホント……。

 おにぎりサンドイッチお茶二本にデザートが三つ、合計1680円。今更やめますと言い出しにくい、売り場に戻すのも申し訳ないし。いやまて、小銭で足りる可能性が無きにしも・・・ぐへえ、全部合わせても1485円しか…ない!!!


「く、こうなったら仕方がない、隠し財産、使うか…。」


 私は、スマホのカバーに入れてある、千円札を…抜いた。


「ああ、へそくり?…ええ?!ゼロ、多っ!!!なにそれ!!!」

「千円札だよ!」


 キッチリと折り目の付いた千円札を見て、大ウケする…娘!!

 それをクールにスルーして、折り目を伸ばし、マネートレイの上にのせる。小銭を追加…よし、ちょうどあるな。


「1680円ちょうどですね!ありがとうございまーす!」


 はい、無事お買い物終了と。よかった、よかった。


「はい、荷物持って!!」


 一銭も出さずにニコニコしている娘に、商品の詰め込まれたエコバッグを手渡す。支払わぬのであれば、君が荷物を持ちたまえ。


「ねえねえ!!さっきのお札何なの!!」

「百万円札だけど。」


 先ほど私が伸ばした千円札は、実にごく普通の千円札ではあるが、見た目におかしな千円札だったのである。


 ピン札の千円札が、きっちりと折りたたまれて、左上と右上の1000と1000の数字がですね、絶妙に重なってくっついてですね。パッと見、1000000円に見える、魔法のお札だったんですよ。


 あれだよ、昔さあ、お札で折り紙とか流行ったじゃん!ターバン諭吉とかさあ、飯炊き女子とかさ、ハートだったりさ!!!


 その延長線上にですね、金運アップ的なね?

 おまじないっていうかね?

 百万円札を持ってるとお金が喜んでやってくるらしいってのがありましてですね。


「もう!!お金で遊んじゃダメなんだよ!!!みんなが使うものじゃん!大切にしなきゃだめじゃん!」


 わりと真面目な娘はやけに正論を言う。

 おかしいな、なんで私は娘に路上で怒られているんだ。


「だって金運アップしたらうれしいじゃん!普段使いのお金じゃないんだからいいじゃん!!」


 どうせ折りたたんでスマホケースのポケットに突っ込むんだからさあ、どう複雑に折りたたまれようが良いではないか…。

 余裕があるならば、一万円札を使って10000000円札作って持っておきたいと思っているくらいなんだけど。


「そういえばおかあさんゲーセンで金色のお札取ってたよね、そういうの、好きだねえ!!」

「昔一回取っただけじゃん!大昔の事をいつまでもいつまでもー!」


 別に金の亡者ってわけじゃないけどさあ…金運良くなりそうなもんには、目がないっていうか。ゲーセンで取ったのは、取れそうだったから取っただけであって、決して狙って乱獲したわけでは…ない!!


「取ったことには違いないでしょ!!なんか怪しげなお札の元も取ったじゃん!!」

「あれはメモ帳になったじゃん!一万円札二枚用意しないといけないから割高だったんだって!!」


 そう、百万円の元ってのがね、昔あってね。

 他愛もない、お札の色したお札の大きさのメモでさ、上下を一万円札で挟むとね、百万円に見えるって代物でね…うん、わびしいね、さもしいね、何やってんだ私は。


 ああだこうだと言い訳をしつつ、歩いて20分の距離を騒がしく進んでゆく。


 途中、すっからかんになってしまった財布の中身を補充するべく、銀行ATMへ。


「ちょっと寄ってくわ!!」

「へいへい。」


 平日の中途半端な午前、ATMには人の姿がない。ヒップバッグから財布と通帳を取り出し、手早く現金を下ろした。


 ちなみに、財布の色は…金色に輝いていたり、する。

 …ええ、金運が良いと言われているタイプのやつですね、ハイ、恥ずかしい奴ですね。


「おおっ!!すごい!!全部ピン札だ!!」


 出てきたお札は、全てピン札で20枚、これは再び100000円札を折れと、作れと、持ちなさいという神の思し召しに違いない!


 大喜びで家に帰る、私、私―!



 家に帰って、コンビニで買ったうまいものを食べつつ、千円札をぱったぱったと、折る。…レタスサンドをモリモリ食べる娘の目がしらけているのはなんでだ。


「そんなことするよりも地道に働けばいくらでも…うん、何でもない。」


 なにやら言いたそうだな。


「なんだ、君は臨時のお小遣いはいらんのかね。せっかく君用にへそくり1000000円札を作ってあげたのに、残念です。」


「ごめんなさい、ありがとう!」


 かくして、1000000円札は、娘のスマホにも、装備されることに、なった。



 …金運が良くなったのかどうかは、わからないが。



「なんかさあ、困り果ててた人いたから、あげちゃった!また作ってー!」

「なにそれ!!!」



 娘が、手渡した…そのお札が。



 まさか、ねえ?


 ……縁を、結ぶとかさあ。



 思いもよらなかったって、言う、お話がですね。



 ……あったり、なかったり。

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