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1/7 ☆当たる人

 冬休み最終日、お昼ご飯でも食べに行こうかと息子と一緒に繰り出した近所のショッピングモール。


 何やら人だかりができているので覗き込んでみたら……おっ!千本引きやってる!!


 なになに、一回1000円、500円分の商品券付き、引いた紐の先についているアイテムをゲットとな!


 吊り下がってるものを見ると、……おお〜!


 私の好きなキャラクターぬいぐるみやカードゲーム、お菓子の詰め合わせに目録?あれは何だろう、クッションか、ちょっと待って自転車まである、あれはドローン?みかんひと箱なんかもある、お米10キロはなかなか魅力的だ!!


「やってみたい。」

「よし!!並ぶか!!!」


 イベントは始まったばかりらしく、並んでいる人数はかなり少なめ…参加を躊躇するほどではないな。


 10人ほど並ぶ列の最後尾に息子と一緒に並ぶ。


「あれ欲しい。」


 息子は赤青黄色、カラフルなビニール製の巨大ハンマーが欲しいようだ。


「お母さんはそうだな、米か餅セットか…いや、持って帰るのが地味にきついな、商品券一万円分がいい!ぬいぐるみもいいけど邪魔になるしなあ、うーん……。」


 順番待ちをしながら、イベントブースで吊り下げられている景品に目を向ける。


 一等から三等までは目録になっていて、紐の先についている札の裏に名前を書いて掲示する仕組みになっているらしい。


 三等は微妙だな、ゲームソフトが五本並んでるけど、いずれも興味のないタイトルばかりだ。

 二等は…空気清浄機、ミニ洗濯機、ワッフルメーカー、クレープメーカー、たい焼きメーカーの中から先着で選べるらしい。

 一等は自転車、人をダメにするソファ、商品券一万円分が三本。


 目録以外の景品は…みかん箱が二つ、リンゴバケツが二つ、メロンが一つに焼きそばのカップ麺の箱、カップうどんの箱、ぬいぐるみが五個、ええとクッションにブランケット。お菓子の紙袋に美味い棒のお菓子……ムム、わりと大きな景品ばかりに目が行っていたけれど、小さな景品もたくさん釣り下がってるな……なんか申し訳程度のハンカチとかずいぶんあるようだ、あれで500円?ああ、人気アニメのやつか、まあ、ハズレだよね……。変なマグカップもいっぱい釣り下がってるなあ、あんまりほしくない…っていうか、一昔前に流行ったゆるキャラのへんてこなキーホルダー、めっちゃあるじゃん!いけ好かない表情のゆるキャラと目が合って些か不愉快なんですけど。ぐおお、これ絶対に在庫処分的な奴だ!……よくよく見ると、外側に大物がたくさん釣り下がってて、真ん中あたりはこう…地味でしょぼいものがわんさかと……なんか、うん、世知辛い、でも今さらやっぱやーめたとはいいにくい……。


「大当たり―!三等のゲームソフトでーす!」


 前方で大きな声が聞こえる。五人ほど前のチビッ子が三等を引き当てたらしい。あたりがやや騒めく……。


「うちあれ本体持ってないから当たったらどうしよう?」

「本体買うならお年玉をつぎ込まないと。」

「ええー!ねえママ、本体買って!」

「当たったら考えようね。未開封だし、売った方がいいような気もするけど。」

「売ったところで…買い取り1000円くらいだろ?」


 前に並ぶ親子が捕らぬ狸の皮算用というやつをしていらっしゃる。


「うちは本体ある!」

「まあ、あるけどさあ…でもあれみてみ、サッカーにプロレス、レースもの、うちのやらないゲームばっかだよ、もらってもやる人いないからなあ。当たるなら商品券一万円分一択だね!当たったら何買おうかね、新しい靴も欲しいし洗剤もなくなってたから買いたいでしょ、晩御飯でいい肉食べたいな…本とかも買えるんだろうか、確か新刊が出てたはず、そうだ車のキーホルダー割れちゃったから新しいの買いたいんだった、買い置き無くなったしお酒欲しいけどダメかも?買いだめ用のお菓子を買うか、イヤそんな事してもお父さんに今日中に食われるな……。ここは直に晩御飯のおかずを買うべきだね、うん。」


 うちも負けじと捕らぬ狸の皮算用というやつをしてみたりして……。


「チーズフォンデュ食べたい。」

「ああ、いいねそれ!じゃあくじ終わったら材料買って帰ろう…ほら、次の次だよ!!」


 前に並ぶ家族が紐を引いている…一本目のお母さんはハンカチ、二本目のお姉ちゃんはお菓子の福袋、三本目のお父さんはマグカップ…最後に男の子が、引いたのは!


「大当たり―!一等の自転車でーす!おめでとーございまーす!!!」


「うわあすごい!!」

「えっ…誰が乗るのこれ?!」

「僕が乗る!!」

「あんたこれピンク色だよ?!」


 目の前で一等が出て、少々驚きの目を向ける。


 どこぞの縁日のぼったくりとは違い、しっかりと一等が出るんだななどと、少々失礼な感想を持つ私がここに。


「はい、それではお次の方!何本引きますか?」

「え、えーと!!二本で!!私とこの子ね!!」


 いよいよ順番が回ってキタ━(゜∀゜)━!!二千円払って、五百円分の商品券を二枚いただきましてですね。


「はい、じゃあ一本ずつ引いてください!」


「ああ…いよいよだ、うちらの番!どうぞ、君から引きなさい!」

「当たるといい。」


 なにやら神妙な顔をした息子!


 束になっている紐を選んで、引いてみると……。


「当たった!」


 何と息子の引き当てたのは……先ほど欲しいと言っていた、大きなハンマー!!


 ちょ!!相変わらず引きのいい人だ!!


 普通…自分の欲しいものを当てるってなかなかできないことだと思うんですけど?!


「はーい、おめでとうございまーす♡」

「ありがとう。」


 グぬぬ…純粋に願えば、神は必要な物を与えるという事なのだろうか。


 ならば、私も!!!


 ……当たれ。

 当たるんだ、必要な物!


 当たるといいな、今私が必要としている商品券!


 当たってくれ、エンゲル係数限界突破でひもじい思いをしている我が家に必要不可欠な商品券!


 当たれ、当たってえええええええ!!!


 願いを込めて、紐を一本、引く!!!


「はーい、おめでとうございまーす!」


 ニコニコとしたスタッフのお姉ちゃんから手渡されたのは。


 ……いけ好かない、ゆるキャラの…キーホルダああああアアアアアアア!!!!


 お前は、お前は……ついさっき、私と目が合った奴じゃないかあアアアア!!!


「さっきキーホルダー欲しいって言っていた。」


 忌々しくキーホルダーを睨み付けている私に、大きなハンマーを抱えた息子が、ニコニコしながら声をかける!!


 ……そう言えば、言っていたような、気がする。

 アアア、しまった、なんでそんなことを口走ったんだ、後悔先に立たずぅうウウウウウウウウウ!!!


 こういう願いばかりがきっちりと聞き届けられてしまう、己の微妙な運の良さ、良さっ!!


「キノコ買いたい。」

「ああ…うん……、この千円分の商品券で、ちょっといいキノコを、買って帰ろう……。」


 その晩食べたチーズフォンデュは、ずいぶん美味しかったという、お話です……。


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