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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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6/24 ☆入選作品

 市報で募集していたフォトコンテストに応募したのは、半年ほど前のことだ。


 テーマは「季節外れ」、写真にセンスのいい一言を添えてとびきりインパクトのある作品にしてご応募下さいときたもんだ。

 募集期間は一月から三月まで、四月から選考開始、結果発表は六月なり。


 私、自信満々で応募したんだよね!!

 うちの近所の公園にさ、すごく良い被写体見つけちゃって!!!

 もうね、絶対入選まちがいなしってね!!


 その結果発表が今日から市役所特設コーナーに掲示されるのですよ!!

 それを本日、旦那と一緒に確認しに来たってわけ!!


「ものすごい自信だね、優勝すると何かもらえるの?おまんじゅうとか!」

「栄光という名の誇りを得ることができる!!!」


 だだっ広い市役所一階ロビーのど真ん中に特設コーナーができていて、カラフルな写真がわんさか展示されている。

 応募作品全452枚すべてが貼り出されているらしい。

 コレはさがすのが大変だぞ……。


 ……あ!!

 あれは!!


 私の写真が目立つところに貼ってあるー!!やった!入選だ!!



 …ん?!



「ちょ!!何これ!!私のだけど、私のじゃない!!!」

「…はあ?」


 木の枝に付いているセミの抜け殻に、雪がちょこっと積もってる、写真。


 私も、同じ被写体を、同じ角度で!同じ感じに撮ったんだけど!!!


 私の名前じゃない!!

 しかもよく見ると……、写真に添えられた一言が!私のと、違う!!


「これ!!私も同じ写真撮ったんだよ!!でも、一言が違う、私の応募したやつじゃないのが入選してる!!!」

「何言ってんの、ちょっと説明たんなくて意味わかんないんだけど!」


 私の、私の投稿した作品は……どこ行った!

 この会場内のどこかに貼ってあるはず…!!広い会場内をくまなく探しつつ、旦那に解説をば!


「季節外れの画像を写真にとって、一言添えて応募してくださいってのが、募集要項でね?!あの入選のと同じアングルでね?!でも私のが入選してなくてひどい!おかしいよねえ?!なにこれ!」

「なんだ、じゃあお母さんのは一言がへたくそだったんじゃないの」


 旦那の失礼な返しをスルーしつつ、さらに自分の写真を探すと…!!



 あった!!


 ……げげ!!



「ちょ……同じ写真があと二枚もある!!ちょっと何これ、なんで並べてるの?!」


 なんと、私が撮ったのと同じ写真が三枚並んでるじゃありませんか。しかも、一番目立たないボードの最下列!!!


 私の一言は「夏の忘れ物」、隣の人の一言は「さむいよう」、その隣の人のは「冬のある日」。


 金賞の人は、「雪化粧」。


「ねえ…夏の忘れ物と、雪化粧の違いを教えてよ…!!」

「まあまあ、唯一無二の作品が撮れなかったお母さんにも問題あるんだって、うん。ま、次がんばれ、ははは」


 そりゃさ、同じ写真撮っちゃう時点でさ!所詮、自分以外の誰かも思いつくような安易な作品だったんだって思うけどさ!でも、でも、でも……こんなん、納得…できん!!!


「…お母さんに足りないのはね、人脈だよ」

「芸術作品に人脈なんか関係ないじゃん!!」


 怒りのおさまらない不満顔の私に、旦那がぼそぼそと呟く……。


「あるよ…これ匿名投票でしょう。得票数で入賞決めるとかさ、こんなん知人にお願いしたら一発特賞なんだって!まあ、そんなに入賞したいなら、今後はきっちり井戸端会議に参加して、町内会役員との飲み会もニコニコ顔で参加して、市制70周年イベントでボランティアをして、新聞の意見欄にいい話を投稿して、毎朝幹線道路のごみ拾いをして、でっかい公園でウォーキングでもして名前と顔を広く知ってもらって、その上でいつどういうコンテストに参加するから投票してねってお願いして回ったらいいんじゃない!」

「そんなん八百長じゃん!!芸術なめんな!!」


 そんなこと言うから!!

 特賞が……安っぽく見えてくるじゃん!!!


 特賞は流しそうめんを雪景色の中で楽しむ子供会の写真。みんな生き生きとした顔で楽しそうで…。


 …あかん!!

 ここで投票する人多そうですねとか思っちゃだめだ!!


 なんてことしてくれるんだ!!芸術、芸術作品を素直に見る目が、目がー!!!


「まー、俺だったら同じ被写体があるのは入選させないけどね!これは企画が良くないわ、匿名投票ってのはこういう事があるからさあ…ぶつぶつ…」


 地味にいろいろとダメージを負って疲労感が湧きまくってる私をしり目に、旦那は写真展を楽しんでいる模様。知り合いの写真が結構貼ってあったんだってさ……。


 もうさ、旦那がうまいもんガツガツ食べて笑ってる写真投稿したら一発特賞だったんじゃないの…。


 かくして、栄光という誇りを得ることのできなかった私だったのだが。


 入賞を逃した私の作品は、おそらくこれから1ヶ月もの間、一番下の位置でずいぶんホコリを浴びることになるであろうと推測されるわけで……。


「まぁまぁ、そうイライラしなさんなって!そんなことよりお腹すかない?ここのレストランさぁ、食べ放題始めたって順一先生が言ってたの、せっかくだから食べに行こー!」

「ぼちぼち空いてるけど!」


 私はプンプンしながら、市役所最上階にある展望レストランに行くことになり。


 ランチバイキングをしこたま食べたら、わりかし気分がスッキリした……、という、お話。



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