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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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12/1 ☆牛乳は嫌いだが、役に立つ

晩御飯の準備をしていると、娘がふらりとやってきた。

牛乳をコップに注いで…飲み始めたぞ。


「うわ~!!牛乳飲んでる!!よく飲めるね…。」

「ナニその言い方!!」


誰にでも、キライなものってあると思う。

私は、実は牛乳がとても嫌いだ。


あの、独特の香り。

口のなかに残るもったり感。

味が有るんだか無いんだかよく分からない、気分の悪い液体。

甘いとか、苦いとか、すっぱいとか、そういう味が無いのがとにかく気に入らない。


学生時代の給食がどれほど苦痛であったことか。

鼻をつまんで飲むと香りがのどを通ったあとで一気に来るので、鼻はつままず息を吐ききったあと息を止めつつ飲むというテクニックを駆使し始めたのが五年生のときだ。

あれ以来、私の牛乳との付き合い方が一気に変わったのだなあ。

まずいものを一番初めに飲んで、あとは味の濃い給食を食べればいい。

そしたらあのまずさは秒で消えるってね!!!


「いやあ、ホント牛乳だけはね、まずくてまずくてホントだめだわ。」

「ちょっと!!牛乳美味いと思って飲んでる人の前でやめてよ!!」


なんか娘がカンカンだ。

何だ、怒りっぽいやつだな。


「いやだってさ、白いんだよ?味ないんだよ?まずいじゃん!キモイじゃん!」

「うるさいな!!黙れ黙れ!!」


怒りに任せてぐびぐび飲んでるぞ。

ちょっと待て、それは気軽に飲み干していいものでは…無い!


「ああっ!!ちょっと!!全部飲むな!!シチューに入れる分がなくなるじゃん!!」

「飲んじゃった。まあ、牛乳無しでいいじゃん!」


「牛乳無しでシチューが作れるかいっ!!今すぐ買って来てよ!!!」


娘は料理をしないというか、あまりそっち方面の才能に恵まれなかったようで、たまに恐ろしいことを恥ずかしげも無くのたまう。

この場に料理好きの弟がいたら、得も言われぬ表情で姉を見つめたに違いない。


「へいへい、牛乳嫌いって言ってたくせに、わがままだなあ、もう。」

「生の牛乳はまずいけど材料としては神だと思ってんだから悪く言うな!!」


「散々まずいだの何だの言ってたくせに…。」


飲み物としての牛乳は…存在を許しませんけれども。

材料としての牛乳は、神としかいいようがなくてですね!!


スープに煮込みに焼き物揚げ物、お菓子作りやパン作り、もうね、ホント神食材なのだ!!!

牛乳がなくなったらマジで困る!!


「三本買って来てね!明日コーンスープ作るからさ!!」

「マジで!!いい牛乳買ってこよ!!!」


娘が意気揚々と買い物に出かけた。

いい牛乳ってのが、よくわかんないんだけど、まあ任せといたらいいだろ、うん。


私は牛乳嫌いだから、味見なんかしたことがない。

材料として用意こそすれども、そこに味は求めていないのだ。

わざわざマズいと思うものを飲んでマズいという感想を得ることに生産性を感じない。


…というか。


神様扱いしてる牛乳を、マズいと思って飲むことは失礼だと思うのだ。

マズいマズいと言いながら飲むのは、絶対に間違っていると思うのだ。


だから私は、文句は言うけど、飲まないようにしているわけで。

文句は言うけど、めっちゃ使わせていただいているわけで。


はてさて…、こういう場合、牛乳に嫌われるのか、好かれるのか、どっちのパターンなのか。

ま、どっちにしても、毎日一本ベースで使いまくるんだけどさあ。


今度、牛乳の神様が現れたら…聞いてみますかね。


私はシチュー用の材料を手際よく炒め始めたのだった。

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