7/15 ☆〇〇がデカくてかなわない。
どうにもこうにも、重い。
……重たすぎる。
「はあー。」
あたしは机の上に……、やや小さめの手と、どかんと重量感あふれる部分を、のせた。
あたしのド真ん中で、堂々と存在感をあらわにしている、この、部分。
「ちょっと!!そのくせ……外では絶対やらないようにね?!」
お母さんがあたしの姿を見てチクリと一言。……外ではやらないってば!
でも、家の中ぐらいは勘弁してよ…。
あたしの胸部にはクッソ重たい枷がね。
体の一部がね、すんげえでっけえのさ。
「へいへい、気をつけますよ〜!」
私の2つの張り出しすぎた部分の下にあるはずの両手は、どこにも見えない。
なぜなら!肉の下に完全に埋もれているからだよ!!
…ああ、指先が、しびれてきた。
あたしの胸部が、重すぎる。
あたしの胸部が、でかすぎる。
そもそもなんでこんなことになってしまったのか。
ごく普通に暮らしてきて、ごく普通に成長してきたはずなのに。
なぜ、こんなことになってしまったんだ…。
思えば小学6年生、あのあたりから怪しかった。
下着がきつい、そう思うたびにサイズをあげていく日々が続きに続きまくってさあ!!
友達は年に一回くらいの購入ペースだと言っていたが。
「下着を買うペースが速すぎて金が続かん!!!」
ようやっと巨大化のスピードがおさまったと思いきや、今度はじんわり全体的に大きくなり始め。
「あんたのサイズの下着が……どこにも売ってない!!!」
普通の量販店で、見つけることができなくなって。
「専門店の下着は高いな…。でもこれしかない、うぐぐ…。」
いつだってお母さんの財布をすっからかんにしてきたのは、あたしの下着だった。
……この、この胸部が……!憎くて、ならん!!!
プールに行けば注目を集め!
風呂屋に行けば注目を集め!!
縄跳びをすれば注目を集め!
マラソン大会の次の日にはの胸上部下部横部がダメージを受け!
体育の授業で全力疾走するたびに視線を浴び!
汗ばむ季節にはあせもができ!!
おしゃれな服はすべて入らず!!
だというのに羨ましがられる、この理不尽さよ!!
おかしい。
この世は何か間違っている!!
ボストコのみすじステーキを買ったときに驚いた。
一パックが、私の胸部重量と、同じ重さだったのだ!!!
……私の体には、みすじステーキ二パック分が張り付いているという事実!!!
みすじステーキはいいよ!!
あの一パックで腹いっぱいになれるからさ!!!
私の過体積過重量箇所はただ揺れるぐらいしか、能がない!!
ただ揺れる?!
揺れることでどれほどの害があると思ってんだ!!!
下着のひもがブチっと切れたことだってあるというのに!
一枚いくらすると思ってんだあああああ!!!
なぜ……なぜ誰もわかってくれない!!!
この憎しみを!
この苦しみを!
この、重さをおおおおお!!!
はあー、肩も痛いし、心も痛い、そして言動すらあいたたただよ!!
「なんだ、そんなに嫌ならダイエットすればいいじゃん!」
「運動するとチチが痛いんだってば!!」
少々体格が良すぎることは、まあ、認める!
でもね、この重さに耐えるにはね、頑強な体も必要であって…。
そもそも運動すると弊害がでるしさあ、膝は痛いし揺れる肉のダメージハンパないし!!
「じゃあいつも食ってる飯半分にしたら。」
「それは嫌だ!」
重量級胸部保持者はさあ、3キロのダンベル抱えてるようなもんだからさ!
正直めっちゃ腹が減るんだわ!!!
飯は減らせんなー!!!
「じゃあ無理だわ、あきらめてブルンブルンさせとくしかない。」
「ちょっと!!いい方!!!」
♪ブーン、ブーン
ああ…バイトの時間だ。
「行って来まーーーーーす!」
あたしは重いチチをあげ、足どりくらいは軽くしようとテンションをあげて家を出た。
ばゆん、ばゆん……。
バイトに向かう私の体の中心は。
ぼよん、ぼよん!
相も変わらず、揺れに揺れ。
だぶん、だぶん!!
「おはよーございまーす!」
「おはよう~。」
バイト先のロッカールームで、先輩に挨拶をして、着替える。
ま、着てきたブラウスの上から、エプロン着るだけなんだけどね。
三角巾をかぶり、エプロンを着て。鏡で、チェック…。
かちゃん!
おっと、エプロンの胸ポケットからボールペンが落ちちゃった…。
拾おうと、かがんだ、その時!
過重量箇所が、重力に忠実に従って!
勢い良く!!
形を!!
変形させっ!!!
その衝撃を真正面から受け止めた、貧弱な、ブラウス生地。
びッ!…ブチっ!!
ブラウスの、胸のボタンが、はじけた……。
……糸で繋がってる、はじけ飛ばなかっただけ、今日はついてるよ!!!
あたしはそっとボタンを取って、ズボンのポッケに忍ばせた。
……ブラウスのボタンなくてあっぱらぱーだけど、まあ、エプロンしてるしなんとかなるか!
うん、バレないバレない!
胸部は重いが、気持ちはあかるく!
それがあたしのモットーさ!
あはは!
まあ、ヤケクソだけどね!
「いらっしゃいませ~!」
準備万端のあたしは元気よく!
従業員出入り口で一礼して!
週末でこみ合うスーパーの中……、デカい体を揺らしながら、レジへと向かったのだった。