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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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10/29 ☆空が汚い

 晴れ渡る秋の終わりのとある日、空港へと出かけた。


 私は飛行機に乗るのは嫌いだが…、飛行機が飛んで来るのを見るのは、飛行機が降りてくるのを見るのは、飛行機が飛び立つのを見るのは、飛行機が滑走路をぬるぬると動くのを見るのは、飛行機がのびのびと羽を休めているのを見るのは…大好きなのだ。


「うーん、あの飛行機小さくてかわいいな!見てみて、あれすげえ派手!あ、なんか飛んできた!」


「なんか寒くない?あたし中の待合室でアイス食べてるわ…」

「僕も食べる」

「あーん!おとうさんもたべるー!!」


 私の大はしゃぎとは打って変わって、家族のこのやけに低いテンションは何なんだ。くそう、こういうところでもB型に囲まれたたった一人のO型の悲劇が!!

 マイペースな奴らは、本当に人の喜びに寄り添う気持ちが足りないというか!!


 こんなにも雄大な青い空が広がる空港で、何で小さなガラスに囲まれた空間から外を覗かにゃならんのだ…もったいないじゃん!!!

 美しい青空を仰ぐための展望デッキ……ベンチもあるし、心行くまで大自然の美しさを堪能できる場所だというのに!!


 少々憤慨しながら、デッキ中央にあるベンチに腰掛け、写真を撮りまくっていたスマホをヒップバッグに収納する。


 時折頬を撫でる冷たい風が、ヒートアップした私の心を心地よく冷ます……。

 ああ、実に…ここは、穏やかだ。


 幹線道路が近い我が家は、わりと交通音が頻繁に聞こえてきてうるさいし、のんびりしてると近所の人は訪ねてくるし、ぼんやりしていると猫がのっかってきてグルグルいうし、部屋の中は不要品やゴミを捨てずに新商品を躊躇せずに購入して満足する旦那のせいでモノだらけ、やりかけの仕事の段ボールやら息子の作った工作やら娘がもらってきたぬいぐるみやらが溢れてせせこましくて…うん、この広々とした空間、めちゃめちゃ気持ちイイ――――!!!


 私はベンチに凭れたまま、大きく背伸びをして、美しい青空を、見上げ……。


 ………。


 ……青空、きったねえええええええええ!!!


 いや、確かに、青空は限りなく真っ青で、雲一つなくて……めちゃめちゃ美しい!!

 だがしかし、その青空を無る私の目は…その美しさを、美しいままに映してはくれないのである!!


 ……かなり相当めちゃめちゃ目の悪い私は、いわゆる飛蚊症という奴がですね。


 ……ああ、背景の美しい青が、キタねえ浮遊物の影で台無しにされて…視線を動かすたびにゆらゆらと揺れて…実にうっとおしい、腹立たしい、不愉快極まりない!!


 ごちゃごちゃした景色を見ている分には、まあ気にはなるけどそこまではっきりくっきり汚れが見えるわけではないので、ダメージは少ない?のだけど、明るい場所で一色の空間を見ると、それはそれは目の中の澱みっぷりが際立つのだな……。


 そういやあ…そろそろ眼科に行く頃だった……。

 飛蚊症はわりと恐い疾患なので、半年に一度瞳孔を開いて検査をしているのだけれど、これがまた目玉の中を直接覗きこむ恐ろしい検査で……。あーあ、老いというものは本当に……。


 なんだか、さっきまでのハイテンションが嘘のようにがっくりと沈み込んでしまった……。

 ダメだ、一度己の水晶体の濁りっぷりに気が付いてしまうと、眩しい世界を見るのがきつい……。


 思わず…ド派手にため息をついてしまった私はですね。


 視線と肩を落とし、せせこましいガラスに囲われた場所へと向かったという、お話……。


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