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6/1 ☆四葉のクローバー

毎朝近所の公園へウォーキングに出かけている、私と息子。


「おはよう!今日も頑張ってるね!」

「ぼく!今日も朝早いのにえらいね!」


 公園ですれ違う人たちとずいぶん顔なじみになり、あいさつを交わすのが日常化している。


「おはようございます」


 小学一年生の息子はぷくぷくとしていて、絶賛減量中だったりする。小さな子供が朝五時半から毎日一生懸命ウォーキングをしているのはちょっと珍しいため、よく声をかけていただけるのだ。


「おお!ちょっとやせてきたな!すごいぞ!!」

「カッコよくなってきたねえ、モテるよー!」


「ありがとう」


 口数は少ないもののキチンと目を見て挨拶を返せる息子は、おじいちゃんおばあちゃんたちのちょっとしたアイドルになっていたりするのだ。


 今日も今日とて、てくてく歩いていると、顔なじみのおじいちゃんが前からやってきた。


「おはよう!」

「おはようございます」


 歩き初めのころは恥ずかしがって挨拶もできなかったのに、今は堂々と挨拶を返す、息子。


「ぼく、毎日がんばってるから、おじさんがいいことおしえてあげる。こっちおいで!」


 なにやら横道にずれることになった。トコトコついていくと、子供遊具のコーナーの一角を指さして……、ゆらゆら揺れるシーソーの下が、雑草でぼうぼうなんだけど…。


「ぼく!! ここ見てごらん! ほら!! 四葉のクローバー!」


 シーソーの下を良く見てみると…わあ!! これ全部四葉のクローバーだ!!!


「わぁー!」

「うわぁあああ!! すごい!! はじめてみた!」


 息子大喜びである!! いや、私も!!!

 すごい!!群生してる!!


「すごいですね!! 教えてくれてありがとう!!」

「イヤイヤ、喜んでもらえてよかったよ。じゃあね!」


 大喜びで一本ずつ摘ませてもらい、ホクホクしながらテンション高く家に帰った。


 その日、息子は学校でクローバーのことを話したのだそうだ。自分もほしいと言うお友達が何人もいたため、学校から帰ったあとみんなでクローバーをいただきに行くことになった。


「いいですか!!根こそぎ採ってはなりません!みんなのクローバーだからね!一人二本まで!」


「「「「はーい!」」」」


 偉そうに指導しつつみんなを引き連れて公園に向かい、大切に摘ませていただいた。



 次の日から、梅雨ということもあり、雨が続いて公園にいけなくなった。


 学校では、クローバーの話で持ちきりだった模様だ。

 用事があって公園に行けなかった子もいたため、晴れたらみんなでいこうねと話をしたらしい。


 連日の雨が止みようやく晴れた日、6人の子供たちを引き連れて公園に向かうことになった。


 ……意気揚々と、出かけたのだが。



「ああああ!!!ない!!!ぜんぜんない!!!」



 なんと、シーソーの下のクローバーが、ひとつもないではありませんか!!!


 根こそぎ、ない!

 土が見えている!


 よく見ると…、遊具コーナーがすっきりしている?


 どうやら、夏が来る前に雑草をすべて刈ったようだ。


 確かに、雑草には虫も集まるしケガにつながるかもしれないし、刈るべきだとは、思う。


 でも、子供たちの落胆振りといったら、もうね……。


 気の毒だけど、仕方がない。


 また生えて来るよと慰めて、足元のスッキリした公園の遊具で遊んで帰宅した。



 ……あれから五年が経つけれど、いまだ四葉のクローバーの群生は、生えてこない。


 あの公園で、四葉を見かけたことすらない。

 それどころか、クローバーの姿さえ見かけることがなくなってしまった。


 ……あの群生は幻だったのか。

 あんなに幸せがあふれていた公園だったのに。


 今は、クローバーに取り囲まれていたシーソーすらなくなってしまった。

 さらに、公園の縮小まで決まってしまったという……。


 ……もしかして、四葉のクローバーを根こそぎ刈り取ったから?

 イヤイヤ……、そんな、バカな。


 あの日積んだ四葉のクローバーのラミネートカードがあるのだけれど。


 私は、絶対に、大切にしようと心に決めている。



 ……むしろ。



 なくしたらやばそうなので。



 きっちり、デスクマットに挟んで……保管しているという、お話。


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