8/11 花火大会(ただしショボい)
近所の公園が、花火を楽しめる場所として開放されることになった。
毎年公園で花火をしてはゴミを散らかす人がいるので、今年から試験的に…開放することで人の目を増やし、けん制することになったらしい。
一昔前まで、自宅の庭で手持ち花火をやっていたら近所の人たちが飛び入り参加をして…てんやわんやになっていたことを思い出す。
マンション住まいの人とか、景品で花火セットを貰ってもやる場所がなくてさあ。子供も大きくなったのに花火セットを貰っちゃってどうしたものかと思ってた人も少なくなくてさあ。
ここぞとばかりに一緒にやらせてってお願いされて、イイよって二つ返事して…あっという間に花火させてくれる家として認知が広まって、毎日のように花火大会をやってたんだよね。
何気に花火大会のお供になる美味しいものの差し入れや、ぼうぼうになった雑草の手入れなんかもしていただけちゃったりして、こちらとしては大喜びでさあ。
それきっかけで仲良くなった人とはいまだにお世話になっていたりしてですね。
……皆さん、もううちには来ないのかな。
グぬぬ…、伸びまくった雑草の手入れが…!!!
毎年飲んでいた、花火酒が…!!!
仕方ない、今年は自分でやるか。
久しぶりに甘ったるいカクテルでも買い込んで、娘と地味に楽しみますかね。
「お母さん!!なんかみんなで花火大会やるって!!誘われたから行きたい!!なんかうまいもんつくってー!!!」
どうにか雑草だらけの庭に足の踏み場が確保できるようになったある日、旦那がバッテリー切れの空調服を着こんだままキッチンに乗り込んできた。
なんでこの人はホントいきなり急にこっちの都合も気にせず言いたいことをポンポン投げては返事も聞かずに…ちょ!!冷蔵庫を開けてカット済みのスイカを食うんじゃ、ない!!!
「ちょっと!!!それフルーツポンチ用なのに勝手に食うな!!!急に言わないでよ、晩ごはんのおかずしかないよ!!!」
「急に誘われたんだもん!!関山公園でみんなの持ってきたもんも食べるからさあ、冷蔵庫の中使っちゃっていいし!!あ、秘蔵のスペアリブも使って!!二時間後に集合だからね、ヨロ!!!お父さんはお風呂入ってこよ、あ、これお願い!!明日休みだし、半額になってた中古の金魚運動器買ってあげるから!!!」
バッテリーとファンがついたままの空調服を手渡され!!
これはもしや危機を取り外しバッテリーを充電し、服をネットに入れて洗濯機に入れておけという事?!くっそー、金魚運動機一台で…こうもこき使われるとか、なんか私ってめっちゃイイ人じゃない?!
……まあいいや。アイスの食い過ぎで増量したこの身が、この忌々しい瞬間を乗り越えさえすれば…引き締まって来るのだ。そう考えればうん…よきことかな。
二時間後…圧力なべを使えばスペアリブも作れるな、卵もいっぱいあるし…賞味期限も近いから全部使っちゃお。山ほど生ってるキュウリもぜんぶもいで即席一本漬けにして配ろう、ご飯は全部おにぎりに…いや、酢飯にすべきか?日が暮れた時間帯とはいえ、まだまだうだるような暑さだ、腐敗が恐ろしい。よし、てまり寿司風にしよう。デザートはフルーツポンチ…ちょっと足りないからみかん缶に桃缶、ナタデココ缶に…バナナも入れるか。あ、しらたま入れちゃお!
なんだかんだで料理がわりと好きな私はですね、俄然やる気がわいてきましてですね!!
「ただいま。…なんか作るの?」
友だちと市民プールに行っていて帰ってきた息子とともに、わんさかうまいもんを作りましてですね!!
「うまーい!!」
「ねえねえ、キュウリもうないの?」
「奥さん、これね…家で取れた梅で作ったの!!」
「骨はここに捨ててね」
「このパンね、うちの嫁が焼いたんだけどうまいでしょ!!!」
「めっちゃうまい!!ナニコレ、もっちり感がすごくてスゴイ!!」
「この骨、うちの子のお土産にもらってってもいい?」
「氷の追加買ってきたよ~」
「これはね、あたしが焼いたクッキーなの、どお?」
「めっちゃうまいな!!また食べさせてね!!!」
「はーい、次は仕掛け花火やるよ!!」
「アーン、おじさんがあたしがやりたいやつ、取った!!!」
「見てみて、このへび花火面白いよ!!」
「あ、うちのあたり明日燃えるゴミだからもらうわ!!」
「ほら、このレモン絞るとね、めっちゃ合うの、このウイスキー!」
「皆さんここらへんの方なんですか?」
「酒を酌み交わしたらも~仲間!!」
「あの、ご一緒しても…実は引っ越してきたばかりで」
「あの人ね、町内会長なんだよ!」
「この人、駅前の居酒屋の店長なの、衛生面にうるさいくせに…」
「このデ…大きいおじさん、体育振興会の会長でオヤジの会もやってて、駅前商店街の…」
ショボい手持ち花火なのに…なんかめっちゃ盛り上がっとるがな!!!
「これさあ、地域イベント化できないかな?」
「できそうだなあ、梶田さんに言っとくわ」
「キッチンカーとか呼べない?」
「いや、うちの店の手羽先を…」
「私物販の仕事をしてるんですけど…」
「うちの冷凍餃子…」
「じゃあうちのクラフトビールも…」
「うちの売れ残ったフルーツでジュース…」
なんかやけに…目の光っている皆さんがいらっしゃるがな!!!
これはもしや…ゆかいなイベント開催の、予感?!
ヒャッホウ!!!
これでまた…美味い酒が、のーめーるー!!!
うーん、人からもらった酒、ウマー!!
多分人から買う酒もウマイに違いないぞー!!
大盛り上がりの花金の夜は、更けていきましてですね!!!
「お母さん!!!いつまで寝てんの?!も~、早くいかないと金魚運動器、売り切れちゃうかもよ!!!朝ご飯も食べたいし、早く!!」
「冷蔵庫の中、カラだね」
「あたしゼリー食べたいんだ!!ねえねえ材料も買いに行こ!!てゆっかスイカもっと食べたいな、あとねチーズたっぷりのピザも食べたい、昨日合流が遅れてさあ、一口しか食べられなかったし!!」
「……もうちょっと、小さい声で…。あたま、いてえ……」
体調不良を押して向かった、中古ショップにはですね。
狙っていた金魚運動器が、どこにも見当たらずにですね。
「も~、売れちゃったんだから仕方がないじゃん!!!」
「残念だった…」
「てゆっかさあ、そもそも楽して痩せようってぬるい考えがダメなんじゃん!!めっちゃ運動したら痩せるんだって!!そうだ、今からスポッチュ行こ!!あたし最近バッティングにハマってて―!!!」
このクソ暑い真夏に、慣れない運動に手を出してですね。
数日後…全身筋肉痛で、動けなくなった人がですね?
動けないくせにしっかり腹が減って…普通にご飯を食べて、しっかり身を肥やしてしまった人がですね?!
どこかの町にいるっていう、お話ですよ……。