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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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3/8 ☆二度寝

 ピー、ピピー!


 遠くでかすかに聞こえる、少し高めの、気持ちのいい音。

 …ふふ、今日もおいしいご飯が、炊けたみたい。


 毎朝、私は、ご飯の炊ける音で目を覚ます。


 1階のキッチンから、かすかに届く、炊飯器の音。

 2階の部屋で寝ている私の耳に届く、炊飯器の音。


 しんと静まり返った、深夜から朝に変わる時間帯に響く、控えめではあるけれど確かに届く、小さな、音。耳を澄まさなければ聞こえないような貧弱な音で、私は毎朝…同じ時間に目を覚ます。


 不思議なものだ、あんなに小さい音なのに、しっかり聞こえる。

 不思議なものだ、あんなに小さい音なのに、目覚ましとして優秀だ。


 毎朝5時に炊ける、お弁当用のごはん。


 ごはんが、私を握る時間が来ましたよと、教えてくれている。

 ごはんが、私を握るために起きなさいと、教えてくれている。


 ……そろそろ、起きないとね。


 でもまだ大丈夫…、アラームは、鳴っていない。


 私は、スマホの5:00のアラームを聞いて布団を剥ぐと決めている。


 目覚ましのアラームが鳴るまで、あと2分。

 少し慌て者の炊飯器は、2分、時間が進んでいるのだ……。


 この、2分間で…今日見た夢を、振り返る。


 今日の夢は……、少し、愉快だったな。

 空も飛べたし美味しいものも食べた。


 ……今日の夢は、オチが弱かった。

 おじさんが意味不明だったし私はぼんやりしていた。


 今日の……夢は……、どんなだったっけ…。


 目が覚めてきたらしい。

 夢がフルスピードで揮発してゆく。


 私は、夢を思い返して微睡む…、この時間が、好きだ。


 二度寝とは違う、夢と現実の境目に浸かっている感じが…。

 二度寝ではない、夢を解き放ち現実に戻ってゆく感じが……。


 ズンズガ☆ズガズガ!ズッガッシャーン♪


 アラームが鳴った。


 スマホに手を伸ばし、静まり返った静寂を取り戻しつつ…シーリングライトのスイッチを入れる。

 薄暗い部屋の中に明かりがともると、寝ぼけた目玉が…ぎゅうと凝縮する。


 ……さあ、もう起きなければいけない時間だ。


 よし、起きるぞ。


 起きて、おにぎりを、作らねば……。

 起きて、おにぎりを……。


 起きて……。


 ……。




「わあん!!お母さんがお弁当作ってくれてない!!」




 キッチンの方から娘の叫び声がしたのを聞き、慌てて飛び起きましてですね?!




「わあ!!間に合う、間に合うから!!!」



 勢いよく階段を駆け下り!!!

 お弁当箱にご飯を詰め詰め!!!

 炒り卵とそぼろを作ってのせのせ!!!


「は、はい、いってらっしゃい!!」

「ありがとう!!」


 やばかった……、今日こそ、いよいよ間に合わなくなるところだった。


 どうも最近春眠暁を覚えずといいますか…、ついつい二度寝をですね?!

 おかしいなあ、疲れてるんだろうか、もしやこれが老いと言うものなのかしらん…。


 毎朝きっちり5時2分前に目を覚まし、5時ちょうどのアラームをとめ、よし起きるぞと思うはずなのに、なぜか二度寝をしてしまうんだよなあ。


 …まあ、間に合ったから、いっか!


 顔を洗い、歯を磨き、パジャマを脱ぎ捨て、洗濯機を回し、ぼさぼさの髪に櫛を通して、服を着て、水を飲んで猫をひと撫で、ふた撫で、み撫で………、ああもう、猫がわんさかと集まって来て収拾がつかないんですけど!!


 とにもかくにもですね。

 

 私は、あわただしく新しい一日をスタートさせたというお話なんですけれどもね…。

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