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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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8/10 ☆がり

 私は、すしを食べるとき、必ずガリをバリバリと食べる。


 回転寿司だろうが、回らない寿司屋であろうが、ガリがおいてあったら必ず食べる。

 スーパーの寿司コーナーにご自由にお持ちくださいと表記されているガリの小袋があったら、必ず三つほど貰って帰る。


 しょうがの時期になると、手作りでガリを作ることすらある。

 毎年11月から12月は、我が家の冷蔵庫の野菜室はガリの瓶で埋め尽くされるレベルだ。


 ……なんでこんなにも、ガリが好きなのか。


 確か、私は子供の頃…ガリがあまり好きではなかった。


 すし屋で出前を取った時、スーパーで寿司パックを買った時、家族全員から押し付けられた茶わん一杯のガリを…食べては、いた。家族がいらないと言って差し出したものを、断ることもできずにもしゃもしゃ食べる…そんな子供だった。


 私にとってガリとは、ウマいとは思わないけれど、私以外に食べる人がいないから、私が食べなくてはいけない、強迫観念のもと進んで食べていたものだったのだ。


 実家を出て自分で寿司を食べに行くようになった時、私はガリを食べていなかったと思う。スーパーで寿司パックを買ってガリが入っていた場合は食べるけれども、別添えで自由に持って行くスタイルの時は手をのばさなかったと思うのだ。


 いったい、いつから、こんなにガリが好きになったのか。


 ……そうだ、妊娠中に、つわりがひどすぎてどうにもならなかった時、ガリだけは食べることができたんだった。


 腹の減りやすい旦那と娘のために、ご飯を作ろうにも気持ちが悪くてたまらず、一時期外食ばかりしていた時期があった。

 ご飯の匂いがダメ、魚の匂いもダメ、肉もダメだし甘いにおいも受け付けない。せっかく出かけても、店内の匂いでダウンしてしまい、車の中で待つことさえあった。


 いよいよ水を飲んでも気持ちが悪くなってしまったとき、たまたま入った回転寿司のお店で、ガリに手をのばしたのだ。


 何か口の中を変える味が欲しいと、何の気なしに手をのばしたガリが…、めちゃめちゃおいしかったのだな。

 たまたま、つわりの辛い時期をちょうど乗り越えただけなのかもしれないが、その日以降、私はものを食べることができるようになったという。


 ガリを食べながら、他のものも少しづつ食べられるようになり、ずいぶん減ってしまった体重も増え始めたんだった。

 他によく食べていたのは、体重増につながらないキノコ類と、大好物の納豆、ホウレンソウに、卵雑炊などなど。


 ガリをバリバリ食べながら、おなかはどんどん大きくなり、やがて息子が生まれたのだ。


「ガリ食べたい。」

「はい、どうぞ。」


 ガリのおかげで2800gまで大きくなり、無事生まれてきた息子は、今、ガリが大好物なのだなあ。いつも回転寿司に行けば、ガリを皿に盛ってもっしゃもっしゃと食べている。


 妊娠中は、おなかに入っている子どもが好きなものを好きになる事があるらしい。……娘を妊娠していた時は何かに固執するようなことはなかったんだけどな、これはいったいどういうことだ。


「あたしもガリもらお!うーん、美味しくない!もう一口!!」

「気に入らないなら食うんじゃない!」

「ガリに失礼。」


 ……娘は嫌いな食べ物がないんだよなあ。

 離乳食もなんでもパクパク食べて、一度だって食べなくて困る事態に陥ったことがない。


 ……息子は小さめで生まれたくせにうどんしか食べなくて往生したんだよ。

 手を変え品を変え、離乳食でひーひー言って、食べ残しはいつだって娘がおいしくいただいてくれてさあ。


 一歳を過ぎたあたりから、卵雑炊がお気に入りになって、この辺りからどんどん増量が勢い付いて……。


 そうだなあ、息子妊娠中は、確かに息子の嗜好に支配されていた気がしないでもない。


「人体というものは、摩訶不思議なものよのう……。」


「なにいってるの?」

「ねーねー、デザートも頼んでいいよね!」

「お父さんはかき氷食べよ!!!」


 娘にも支配されていたのかもしれないが、どのあたりが支配されていたのか、見当もつかない。娘の時は食欲がすごくて、体重増で何度も注意されて、結局出産二日前に緊急入院する羽目になってですね。


 ……しっかり支配されてるな、娘は食欲魔人なのだ、生まれる前も、今も!!!


「ちょっとあんたそれ何皿目だと思ってんの!!!」

「キリがいいから20枚でやめとくわ!!!」


 …うん?

 なんか店員さんがやって来たぞ?


「はい、どうかされましたか?」

「すみません、ガリの追加ください。」


 どうやら息子が店員さん呼び出しボタンを押したらしい。たんまりガリが入っていたケースが…すっからかんになっとるがな!!!


 息子までも、食欲魔人になりつつある、今日この頃―――!!!


 目の前でケーキを二つもガツガツ食べている旦那の食欲魔人遺伝子が、しっかと息子と娘に受け継がれているとしか思えない。


 おかしいな、ごく普通の食欲を持つ私の遺伝子は、いったいどこに消えたというのだ……。


「どうしようかな、プリンも食べたい、よーし食べちゃお!」

「帰りコンビニ寄ろうね!クレープ食べたい!」

「グミ買いたい。」


 なんだかとってもげっそりしてしまった私は、温かいお茶をぐびりと飲んで、財布の中の確認をしたという、お話……。

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