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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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7/27 ☆帽子

 頭のでかい私が愛してやまないもの、それは帽子。


 でかい頭にかぶれない帽子は数多くありますけれども。

 でかい頭にかぶれる帽子だって、ありましてよ、ええ。


 とりわけ、いつもかぶっているのはキャスケット。

 若いころから大好きで、帽子屋を見つけては探して回ってですね。

 おかげで未だかぶり切れていない帽子が結構あったりしましてですね。


 キャスケットの似合う年齢は少々通り過ぎてしまったけれども、そんなことは言われても聞く耳持たずで今でもかぶり続けていたりする。


 ま、深く帽子かぶったらさ、意外と年齢なんてわかんないもんなんだって!

 年を取ったらつば広帽子しかかぶっちゃいかんと、誰が決めたあああああ!!!



「このぼうし、かりていい?」


 猫をのばして寛いでいたら、息子が私の帽子をかぶってやってきた。

 今からどこかに遊びに行くようだ。


「へいよ。無くさないでね?」

「わかった。」


 思えば息子も帽子好きだ。

 生まれた時からしょっちゅう帽子をかぶせてたからね。

 彼はとにかく頭に毛が無くて…無防備な地肌を覆って差し上げたくなりがちでね。


 私は耳付きが大好きなので、いつもくま耳やねこ耳の付いたのを選んではかぶせて喜んでさあ。

 冬は手編みの帽子をかぶせたもんだ。


 ……小さくなった帽子はさ、記念に取っておこうと思ってさ。

 ガレージに段ボールに入れて、置いといたんだよね。


 そしたらさ。


 ネズミがね?!

 いつの間にか住み着いててね?!


 …ああ、アレは実にひどい事件だった。

 せっかくのいい思い出は、今やネズミパラダイスになっていてですね!!!


 いやいや、恐ろしい話だよ、全く。


 ちなみに、旦那と娘はキャップ派で、つばの長めの帽子を好んでかぶっている。

 二人とも頭小さいんだよね。

 市販のキャップでもゆるいというのだから恐れ入る。


 サイズが一緒だからか、いつもキャップの取り合いをして見苦しい罵り合いをすることもしばしばだ。

 …なんで二つ買わないんだかね。


 妙な所でけち臭いというか、なんというか。

 自分もわりとこう、帽子に関しては無駄買いはしない方ではあるけれども…。


 七月に入って、麦わら帽子を買いたい、買いたいと思いつつ…今日まで来てしまってねえ。

 多分もう買わないんだろうなあと思っていたり……。


 麦わら帽子はさ、洗えないし、汚れるし、あんまり買いたいと思わないものではあるのだ。

 イベントとかでテンションが上がって、羽目を外した時に買いがちなものであって…、わざわざ買いに行こうと思わないっていうか。買っても満足できずに終わるパターンがほぼほぼっていうか。


 去年は炎天下でバーベキューやるって言うから、安い麦わら帽子を買ってさあ。サイズが明らかに合わなくって、結局息子がかぶったし……。

 その前の年はフリンジがきつすぎてすぐに風にあおられて大変で…最後は結局、船の上から海にダイブして、そのまま漂流してっちゃったしさ。今頃どっかの人魚がかぶってるかも知れないな……。




「ただいまー!ねえねえ!イイものもらったー!」


 旦那が帰ってきたぞ!!


 またどうせ賞味期限の切れたお菓子とか、もらいもんの海外のお土産だとか、そういうものに違いなかろう……。


 そう思って玄関に行くと。


「げえ!!なにそれ!!!」


「なんかお母さん麦わら帽子買いたいって言ってたじゃん!!牧村さんの奥さんさ、アレンジやってるらしくて奥さんにどうぞってくれたんだよ!!しっかり毎日かぶってね!!!」


 確かに麦わら帽子だ!!


 しかし!!!


 つばの周りにはごてごてとゴージャスなレースがついてるし!!

 帽子の横に、造花がたんまりついてる!!

 ひまわりにバラ、あと葉っぱ!!変な実?もついてる!!

 さらにピンク色のリボンが、リボンが!!!


 ……こんなん、こんなん、かぶれるか―――――!!!


「かぶれるわけないじゃん!!こんなゴージャス帽かぶって…クマモソのTシャツ着れるかっ!!!」

「着ればいいんだよー、せっかくもらったんだしさあ!!気にしすぎだって!」


 あんたが気にしなさすぎだよ!!!


 旦那は私の頭にゴージャスすぎる帽子を乗せて…あれ。


「ちょ、これ小さいわ。私頭でかいからほら、浮いちゃうよ。うん、返してこよう、無理無理。」


 頭が小さいことで有名な旦那の頭でさえ、隙間ないフィット感。

 旦那にジャストフィットということは、絶対に私の頭には入らない。


「返せるわけないじゃん!頭削ってよ!!」

「できるかっ!!!」


 どうあがいても無理やりかぶらせたい旦那は、こちらの話を全く聞こうとしない。

 も~、仕方ないな……、かくなる上は、旦那の作業車にこっそり忍ばせて……。


「ただいま~!!…あれ!何それ!かわいい!!」


 娘がバイトから帰ってきたぞ!!!


 汗をふきふき、靴を脱ぎ散らかして…私の手にあるゴージャスな塊を見つめていらっしゃる。


 ああそうだ、これ、娘にあげればいいんじゃない?

 私がかぶりきれなかった麦わら帽子を、娘の頭にかぶせると…うん、ぴったりだ!


「はい、これ君にあげます。大切にかぶってね。」

「いいけどさあ!あたしこの帽子に合う服持ってないよ!!」


 そうだな、娘もいつもスポーツブランド系のTシャツかお笑い系Tシャツにジーンズばかりだったな。


「大丈夫だって、若いんだから多少の無茶してもみんなスルーしてくれるから。」


 若者のファッションというのはね、いつの時代もこう、前衛的で攻めててね。

 おかしいとか変だとか偏狭なことを言うのは、己の中にある正義しか認められない、自己中な守りに入ったつまんない年寄りばかりであって……。


「そんなわけないでしょ!!あ、ねえねえ、じゃあさ、この帽子に合う服買ってよ!!」


 帽子をかぶって上機嫌でくるくると回る女子を見ていたら、後ろの方からのっしのっしと地響きが。


「かわいい服持ってないんだったらさあ、買ってあげたら?」


 2Lのアイスを小脇に挟みながら、いいお父さんらしい一言を言う旦那、旦那!!!


 ……気軽に言うけどね!!

 娘は既製品サイズが入らないダイナマイト体型だからね?!

 着られる服見つけるの……めっちゃ大変なんですけど。


「じゃあ、今から店行って探してきたら。私はご飯作るからいけないけど。」

「わかったー!!」


 かくして、娘と旦那は意気揚々と出かけて行ったわけですけれども。




「「ただいまー!」」


 あ、帰ってきたな。

 ちょうど枝豆も茹で終わったし、ごはんも炊けた、西京焼きももう焼き上がるし、豚汁はすでにテーブルに置いてある。あと息子がオムレツにケチャップかけたら完成だから、すぐにご飯にしよう。


 湯気の上がる枝豆をボウルいっぱいに盛って、テーブルに行くと。


「あれ、キャップまた買ったの。……服は!!!」


 新しいキャップを買ったのか、二人ともド派手なのをかぶってるが。

 どこにも…かわいい服の入っている袋が見当たらないぞ、これはいったい。


「なんかサイズなくってさ!!お母さん作ってあげてよ!!」

「あたしフワフワのスカートがいい!よろしくー!」


 完全に目的忘れて帰ってきてたよ!!


「あんたらね!!帽子に合う服買いに行って違う帽子買ってくるとか何考えてんだ!!!」


「あ!!この豚汁美味い!!やっぱひき肉入りだと美味いんだって!!」

「オムレツチーズふりかけてー!あちあち!!枝豆ウマー!」

「おいしくできた!!」


 ダメだ!!!

 誰一人、全然、全く、人の話を…聞いてねえ――――!!!


 服を作るにしろ作らないにしろ、ゴージャスな麦わら帽子は…まだしばらく出番はなさそうだ……。


 …仕方がない。

 私はゴージャスすぎる麦わら帽子を、玄関の壁に飾ることにした。


 ここに飾っとけば、誰かが見てくれるはず。

 牧村さんが来るかもしれないし。


 ……まあ、華やかな玄関になったと言えば、なったか。

 乙女チックな割には雑然とした靴並び、置きっ放しのゴミが気になるな。

 ちょっと掃除を……。


「ねーねー!魚焦げてない?めっちゃ焦げ臭い!!」

「焦げたらお母さん全部食べてねー!!」

「焦げたのは苦い」


 ……ヤバイ!!


 私は急いで、キッチンに戻ってですね?!


 西京焼きにはとても見えない物体を……、皿の上に、のせたというお話……。


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