表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/198

7/18 ☆耳がかゆい

 耳の穴がかゆくてかゆくてたまらない。

 特に右耳。


 なんだ…これは。

 むずむずするというか。

 もぞもぞするというか。


 …病院行くか。


「ああ、こんにちは、めまいの調子はどうです。」

「落ち着いてますね。」


 この耳鼻咽喉科の先生はめまい治療の権威だったりするので、目が回るたびによく通っていて…すっかり覚えられているのですよ。ちょうど薬が切れたので、ついでに診察してもらうことにした次第。


「あの、なんか耳がすごくかゆいんですよ。見てもらっていいですかね。」

「よしきた。」


 診察椅子がぐるりとまわって、先生が私の耳をのぞき込む…。ついでに反対側も。


「なんともないよ?気のせいじゃないの。あんまり触ったりしないで様子見てね。」

「はあ。わかりました…。」


 なんだかあんまりすっきりしないけど、なんともないなら、まあいっか。


「なんかいいお知らせあるかもね。耳がかゆくなるといい知らせが舞い込むって言うから。」

「え、何それ。じゃあ、そう思っときます、ありがとうございました。」


 薬を抱えて家に帰ると、娘がいた。

 何やらやけにいい笑顔でこちらを望んでいるぞ。


「ちょっと!お帰り!ねえ、カラオケ再開したって!!!」

「うお!マジか!!よし行こう!!」

「僕もいく。」


 いいお知らせキター!

 このところの騒ぎで営業自粛していたカラオケ店が営業を再開させたらしい!!


「耳が早いね!!」

「ふふん、アプリのお知らせ入ったからね!!」

「僕歌いたい。」


 さっそくカラオケに行くと、ボチボチのにぎわい。

 広めの部屋をゲットして、はりきってマイクを握る!


 三か月ぶり?

 いやもっとかも!

 カラオケパーティーが始まった!!


「うおお!!粗品のカラオケ入っとる!!!」

「あたし歌うよ!!」

「歌選びたい。」


 大喜びで大音響鳴り響く中、カラオケを堪能していると。


「あれ、旦那から電話だ。…はいはい?今日遅くなるって言ってたよね?」


『なんかキャンセルになったー、今どこいるの。』

「カラオケがははにいるけど。」


『じゃー俺も行くわ!ピザ注文しといて!!―ブツ』


 娘の歌唱が終わった。

 曲の合間に、静けさが漂う。


「なんかお父さん来るらしいよ。」


 ピザを注文してしばらくすると、旦那がやってきた。

 ピザ屋もちょうど来たぞ。ピザと一緒に入室かい。ピザピザうるさいなあもう‥‥。


 か ら の 。


「♪ボ―エ――――ボエボエ、ボ―――エ――――――!!!」


 ノリノリで歌う旦那がここに!!!

 その隙にピザを食べる子供たち!!!


 私はというと…。


 あんなにかゆかった耳が今はどうだ!!

 耳が、痛くて痛くてたまらないんですけど?!


 耳の穴に容赦なく突き刺さる、ボエー!!!


 ……うん、ちょっと外行ってジュース買ってこよう。


 部屋に戻ると、旦那の採点が画面に映っていた。

 72点…まあまあの点数だな……。


「俺さあ、歌いたい曲が女性ボーカルのばっかでさあ!うまく歌えないのがネックなんだよね!!」


 ハイハイ、耳にタコができるくらいその言い訳聞いてますから。

 旦那の声のでかさは、宇宙一有名なガキ大将をも凌駕するのだなあ……。



 ずいぶん歌ってずいぶん色々食べた結果、久々の歓楽は結構な出費となり!!

 支払いを済ませて店を出ると…、旦那と娘と息子は先に家路についているではありませんか。

 ……人に支払わせておいて、置いていくとは何事!!


 道の先にまるまるとした三人の姿が見える。

 追いつこうと、走り出す…。


 ………。

 すごい歌声の中にいたからか、耳が…ぶわーんとしびれている。


 まずいなあ、これじゃあいい知らせを聞き逃しちゃうかもしれないぞ。

 そんな事をふと思った、その時。


「…ちょっと、それまずいって、お母さんには…」

「…秘密にしておこう…」

「…分かった…」


 なんか聞き捨てならない感じの言葉が聞こえてきたぞ?!


「ちょっと!!!何言ってんの!!!!」


 旦那と娘がびくついてこちらを振り返る。

 息子はにこにこしている。


「地獄耳の人が後ろに!!!」

「なんも言ってない!!」

「お寿司買ってあるって。」


 息子以外は説教パターン突入だな…。


「さっき散々食ったのは何なんだ!寿司があるなら追加しなきゃ良かったじゃん!!」


「あれは食前ピザ?」

「いやいや、あれはおやつだって!!」


「ピザは食事だろうがアアアアアアア!!!!」


 さんざん騒がしく騒ぎ立てながら家に着いたら、まーた耳がかゆくなってきた。


 私は…地獄耳らしいですからね!!

 いい知らせ、多分聞き逃すことないと思うんですよ?!


 あとは知らせを聞くだけなんですけどね!!

 早く私の耳に届いてほしいもんですね!!!


 私は憤慨しながら、旦那の買ってきていたスーパーの半額のお寿司をモリモリ食べたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ