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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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5/26 ☆目玉焼きの魅力

 目玉焼きが好きだ。


 好きと言っても、そこそこ、好きな程度では、ある。


 普段の食事のメインメニューにはならないものの、外食すると、目玉焼きの乗っているメニューを選んでしまうぐらいには、好きだ。


 例えば、目玉焼きの乗っているハンバーグ。

 例えば、ハムエッグ定食。


 例えば、出店の焼きそばに目玉焼きが乗っていたら買ってしまうだとか。

 例えば、お弁当に目玉焼きが入っていたら選んでしまうだとか。


 なんで好きなのか、いまいちわからない。


 目玉焼きが特別に美味いと感じるわけではないのだ。

 それなりにうまいなあとは思うものの、最後に残しておくようなうまさはないのだ。


 食べたら、普通に目玉焼きだ。


 黄身がしっかり固まっている目玉焼きも、黄身がトロっとしている目玉焼きも、普通においしい、ただの目玉焼きだ。

 しっかり塩コショウがしてある目玉焼きも、何の味付けのしてない目玉焼きも、普通においしい、ただの目玉焼きだ。


 なぜ、目玉焼きが好きなのか、記憶を辿って、みる。


 ……。


 うどんやそばに入ってる、月見は好きじゃないから、たぶん焼いてないとダメなんだな。

 目玉焼きに見えるスイーツも思わず買ってしまったから、見た目が好きなのかも。

 卵料理はたいてい何でも好きだけど、温泉卵がわりとお気に入りのような気がする。

 ダチョウの卵の目玉焼きも食べたな、わりと普通の卵だったけど、最後は卵サンドにしたっけな。

 輪切りのゆで卵も好きだな、サラダの上にトッピングされてるとついつい手が伸びるな。

 卵サラダはそうでもないから、ぬべっと広がった白と黄色がないとダメなのかも?

 いやしかしよく焼いた黄身の上に白みのある目玉焼きも好きだ。


 ……ちょっと待て、その場合ややテンションが下がる気がする。


 そうか、わかった、私は白と黄色が好きなのか!!!


 視覚的に、目玉焼きが好きだから、ついつい買ってしまうのだな。

 視覚的に、目玉焼きが好きだから、美味しいと思ってしまうんだな。


 そういわれてみれば、目玉焼きモチーフのマスコットをけっこう持っている。

 そうだな、目玉焼きモチーフのマスコットもずいぶん作ったぞ。


 見てよし食べてよしの目玉焼きかあ!


 謎の解けた私は、ご機嫌でおやつを作ることにした。

 よーし、今日はエッグトースト、作るか!!


 食パン・マヨネーズ・卵・塩コショウ。

 トースターで6分焼いたらそのまま3分置いといて、うまいエッグトーストの出来上がりってね!


 食パンの真ん中をちょっと凹ませて、端っこすれすれにマヨネーズを絞って真ん中に卵を落とし……。


 ぐしゃ!!!


 卵割る力加減、間違えた―――――!!!


 ア、あああ!!!


 き、黄身が黄身が黄身があああああ!!!つぶれたあああああああ!!!

 黄身が丸くならずに、びみゅわよえーんって広がる、無様な光景!!!


 ……。

 ……。

 ……。


 ……なに、この、まずそう感。


 いやいや、焼いたら、美味しそうに、なるはず……。


 チーン!


 六分焼いて、三分待って。


 取り出した私が見たものは……。

 いつもより、美味しくなさそうな、エッグトーストの姿……。


 ……なに、この、まずそう感(二回目)。


 ビジュアルで食欲って、こんなにも落ちるものなの……?


 パクリと、一口食べてみる……。


 ……。


 なんだろう、いつもより、みずみずしさもなくて、どことなく、歯ごたえが……。


 ……そうか、卵の黄身が、広がってて火が通り過ぎちゃってるのか。


 目玉焼きってのは、目玉になってないとうま味が恐ろしく低下するのだな。

 あの、かじった時にてろんと出てくる、麗しい黄色のとろみがないと、こうまでうまさが減ってしまうのか。


 ……いや待て、私は黄身に火が通ってかたくなってる目玉焼きも好きだったはずだ、だとしたらこの感情はおかしい。


 ……。

 ……。


 そうか、これは、おそらく、失敗してしまった、悔しさがうま味を奪ってしまっているのだ。


 本来であれば、きれいに丸く目玉になっていたはずの黄身が、つぶれてしまった。

 本来であれば、楽しめたはずのとろみが失われてしまった。

 本来であれば、このような失態はしないはずなのになんてこった。


 やらかしてしまった、苦さを私は今、噛みしめているのだ。


 ああ、この苦みが、極上のうまみをかき消している……。


 食べ物って、実はものすごく、繊細なんだね……。

 なるほどねえ……。


 そんなことを思いながら、まだ食べ足りない私は、二枚目のエッグトーストを作る事を、決めたのだが。


「ただいま。」


 二枚目に完成した、美しいエッグトーストは、息子の腹に入り。


「なんかおいしそうなもん食べてる!ずるい!!」


 三枚目に完成した、美味しそうなエッグトーストは娘の腹に入り。


「あ!!お父さんも食べる!!!」


 四枚目に完成した、プルンプルンのエッグトーストは旦那の腹に入り。


 五枚目も、六枚目もまだ焼けてないのに、蒸らし中なのに勝手にトースターからさらわれて―――!!!


「ねーねーまた作ってー!!!」

「ちょっと生だった!でもうまいからいいや!!!」

「おいしい。」


 繊細だとぅ……?!


 そんなこと言ってたら、このうちでは、食いっぱぐれるわっ!!!!


 失敗しようが成功しようが、目玉焼きは目玉焼き!

 食えたら全部うまい!

 食えなければ腹は減るんですよ!


 晩ごはん、私は目玉焼きハンバーグを作ったわけだけど、目玉がつぶれてるのも完璧なのも、すべて食べ尽くされました、そういうお話です!

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