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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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5/8 ★文句の多いスプリングベッド

 ベッドを新調する事にした。


 元々、木製ベッドの上に布団を敷いて寝ていたのだが、新入りの猫が派手に粗相をしてしまい破棄せざるを得なくなり、急遽新調する羽目になってしまったのである。


「うわあ!!何これ、ベッド?!丸まってる!!ウケる!!!」

「すごい。」


 最近のベッドどいうものは、丸くロール状になって販売しているらしい。真空パッキングしてあって、ビニールを破ると、瞬く間に膨れ上がり厚み15センチのスプリングベッドになるとのこと。

 何気にスプリングベットの購入は初めてだ、いい睡眠が取れるに違いない。…結構いいお値段だったし。


 どうよこの重厚感!!

 …つか、めっちゃ重い!!

 配達のお兄さん、よく持ってこれたな…。


「ちょっと君ら手伝ってよ、これ地味に重い!!!か弱い私じゃ、持てないよ…げほ、げほ…。」

「さっき三時間もウォーキングに行ってたのは誰!!」

「弱くない。」


 くそう、健康的な鍛えられた体の持ち主であることがバレバレだ!!

 だがしかし、気のいい子供たちは二階の私の部屋までベッドを持って行ってくれましてですね。なんていい人たちなんだ、私に似たに違いない。


 ベッドのすのこの上で、ビニールにはさみを入れて伸ばすと…。


 べりんべりん、ぶよん、びち、びち!!

 ばちんばちん!!


 おお!!!

 みるみる膨れ上がっていくではありませんか!!!

 しまった、動画に取っとけばよかった!!


「うわあ!!すごい!!」

「これはいい。」


 子どもたちが大喜びだ。

 しかしこれは私のベッドになります、なんかごめん。


「いいな!!あたしもベッド欲しい!!!」

「欲しい…。」


「君らこの前新しい布団に変えたばっかじゃん!そもそもね、資金的に無理!一気に買える金額じゃ…ない!!!」


 もうちょっと大きくなったら、パイプベッドごと新調して差し上げようと思ってはいるんだけれども。


「今日からいい夢見るんだ~♪」


 大喜びで、新しいもこもこシーツをセットし、ついでに枕も新しくして。




 安眠快眠生活が送れると、思っていたのだが。


 …どうも、調子がよろしく、ない。


 やけにこう、体がきしむ?

 朝起きると、背中が痛い?


 しかもこう、寝返りを打つたびに、ベッドの中からコイルの金属音っていうのかな、バリンとかバチンとか言う響きがね。

 やけにこう、気になってしまって、仕方がない。


 私って意外と繊細なのかな、そのうち慣れるかなあと、思っていたのだが。




 三日たち、一週間たち。


 いよいよ悪夢を見るようになってきてしまった。


 ・・・ベッドがお怒りなのだな。


 曰く、乗せてやっているのに文句を言うんじゃない。

 曰く、俺はババアを乗せるために生まれたんじゃない。

 曰く、木製ベッドは通気性が悪くて不愉快だ。

 曰く、せっかく圧縮されてまで旅に出たのにこんな目に遭おうとは。


「スプリングベッドはね、使い慣れてない人が手出すと、体壊すことあるよ。若い人なら順応性もあるだろうけどさ、あんた年寄りじゃん、諦めて娘か息子に譲った方がいいよ!!」

「年寄っていうな!!同じ年のくせに!!くっそー、シップ多めに出しといて!!!」


 二週間に一度通っている整形外科の先生から年寄り扱いされて相当に憤慨しつつ、シップくさくなった全身でベッドに横になる気もわかず。




「え!!!もらっていいの!!!」

「その代わり君の布団ちょうだいよ…。」


 娘とトレードすることになった。


 …どうだ、布団での寝心地の良さは!!!

 久しぶりに快眠を貪り、派手に寝坊してしまうありさまである。


 日曜日でよかった…。




 三日たち、一週間たち。


 またもや悪夢を見るようになってきたのは…なぜだ!!!


 ・・・ベッドがお怒りの模様だ。


 曰く、寝ながら菓子を食われてかなわん。

 曰く、寝言がうるさくて落ち着けない。

 曰く、ベッドの下がホコリだらけで腹立たしい。

 曰く、休みの日に10時間も寝られては湿気が溜まるではないか。


「なーんか、調子悪いんだよね!肩凝るし!!!」

「もらう!」


 娘は、弟の布団とトレードをすることになった。




 三日たち、一週間たち。


 またもや悪夢を見るようになってきたのは…なぜだ!!!


 ・・・またもやベッドがお怒りなんですけど。


 曰く、子供たちが飛び跳ねてスプリングが痛む。

 曰く、寝相が悪すぎて毎晩気になって仕方がない。

 曰く、ゲームをつけっぱなしで寝落ちするのがうるさくて耳障りだ。

 曰く、フリースのキグルミを着て寝られると静電気がすごくて気が休まらない。


「布団にしたい…。」

「なに、どうしたの。」


 弟は、寝相の悪さが幸いし、ベッドから落ちてしまったのである。

 ベッドの厚みが15センチ以上あるため、今まで25センチの高さから落ちていたのが40センチの高さから落ちることになってしまい、ダメージを負ったらしい。


「もうさ、これ呪いのベッドなんじゃないの!!!」


 そうかもしれないな…。


「じゃあお父さんがもらう!!!ちょうど良かったよ、マットレス高くてさあ、諦めてたから!!」


 このところ部屋の中を大掃除していた旦那はようやくベッドを置けるスペースが確保できたようで、週末にも注文したベッドが届く手筈になっていたのである。

 旦那の買ってきた、ペラペラの布団とベッドがトレードされることになった。




 三日たち、一週間たち。


 ははーン、またまた悪夢を見せるつもりですか、なるほどなるほど。


 ・・・そりゃベッドも怒るだろうよ。


 曰く、重くてかなわん。

 曰く、いびきがうるさすぎてかなわん。

 曰く、電気をつけっぱなしで寝るので眩しくてかなわん。

 曰く、裸で寝るなら毎日シーツを変えてほしい。

 曰く、風呂に入らず寝転がるのはやめて頂きたい。

 曰く、ジュースをこぼしたら拭いてもらわなければ困る。

 曰く、俺は苦行するために生まれたんじゃない。


 曰く、曰く、曰く、曰く、曰く…。


 残念ながらうちにはもう、ベッドをトレードする人はおりませんのでね。


 あなた、自分で持ち主を選んだ結果が今の状況なんですよ。

 どうにもならないので、ベッド人生に邁進してください、ではごきげんよう。


 ―――そんな!!!


 殺生なー、

 なー、

 なー、


 なー!!!




 一か月たち、半年たち。

 悪夢を見ることはなくなったのだが。



「ぐぎゃああああ!んごぉおおおおおお!!!ぐ、ぶひっ!!むにゅむにゅ・・・!!!!」


 旦那の部屋の前を通りかかるとですね。


「んぶー、ぐへ、ぐへへ、もーたべるっていったじゃーん、ぐう・・・!!!!」


 ものすごいいびきと寝言の合間にですね。


 ―――ぐぇえエエエエ…。


「ぎゅぎぎぎぎぎ、ぐがあああああ、ぎりぎり、う、うーん???」


 ―――ぎぇえエエエエ…!!!


 叫び声のようなものが、聞こえるように、なったのは。


 ―――ぅおぇええええ!!!


 …気のせいじゃないかも、しれない。

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