内乱の終結
お久しぶりです。しばらく大学の定期試験だったのもあり、しばらく投稿をお休みしていました……
「一体このクソッタレた騒ぎはいつ終わるんだろうな?」
「さぁ、殿下次第といったところでしょうか」
「全く、綱渡りするのは構わないが臣下の気分も考えてほしいものだな」
「若気の至り、と言うやつでしょうか」
「かもしれんな」
西部反乱地域。反乱軍の攻勢は破砕され、ガルベスはそろそろ反撃を伺うべきかと思案していた。そんな折、司令部に急報を知らせる使者がやってくる。
「シルパス大尉、失礼します!」
「どうした、反乱軍のクソッタレどもがまたちびって白旗でも上げに来たか?」
「いえ、いえ違います。それが――」
伝令兵が報告を言い終える間もなく、ガルベスは彼の言いたいことを理解した。何故なら――
「ようやくですか。重役出勤は嫌われますよ、殿下」
彼の主が、そこに立っていた。
――――――――――
「遅れてすまなかったな」
感動の再会――のはずなのに出会って早々減らず口を叩くガルベスに苦笑いしながら、俺は司令部へと入った。
首都を奪還してから、少数の監視部隊だけを残して評議会警備隊といくらかの私兵を編制して急行しても、2日かかってしまった。と言うか諸々の改革を放置してきてしまったので、早急に反乱を鎮圧してこのふざけた茶番劇を終わらせる必要がある。
「それで、反乱軍の様子は?」
「援軍を連れてきてくださった殿下には申し訳ないですが、正直腑抜けているというレベルではありません。すぐに反攻をかけたいほどですよ」
「相手が侵略者だったら、そう命じただろうよ。残念ながら今回の相手は領民だ。殺さないで済むならそれに越したことはない」
「……まどろっこしいというべきかなんというべきか」
「為政者の苦労ってやつだ。我慢してくれ」
俺は肩を竦めた。
「……まぁいいでしょう。先ほど申した通り、反乱軍は無茶な攻勢で今やもう戦闘能力は皆無と言ってもいい状況です。少し攻勢を仕掛けるだけで崩壊すると見てもいいでしょう」
「なるほど……すぐに攻勢の準備を始めてくれ。それと同時に、宰相らの決起が失敗したことも大々的に喧伝するように」
「了解しました、殿下」
俺の言葉を聞いたガルベスは、すぐに部下たちに指示を出し始めた。公国を揺るがした内乱は、終わろうとしている。
――――――――――
「公国軍が降伏勧告を寄越してきました」
保守派によるクーデターが鎮圧されて1週間がたったころ、チザーレ西部メニアレーゴに所在する反乱軍司令部。そこには悲痛な雰囲気が漂っていた。
「宰相閣下らは既に捕縛され、前線の農民兵たちも相次いで投降しています。そうこうしているうちにここメニアレーゴに到来するでしょう」
報告を受け、反乱軍を実質的に統括するリーダーであるバルンカ子爵が歯軋りする。
「我々は負けた、そういうことか」
「残念ながら、そうなりますね。もはや我々に抵抗の術はないと言ってもいいでしょう」
「……新大公は寛大な人間と聞く。彼の慈悲に、我々の首を賭けるしかない、か」
バルンカがそう言うと、同調する声がぽつぽつと表れ始める。
「勝ち目のない戦をやらされるより、幾分かマシでしょう」
「もともと宰相閣下が始めたことだ。彼の道連れになるくらいなら……!」
彼らは自分たちが敗北すると分かっているからこそ、諦めの境地に達していた。しかしそんな中、一人の男が立ち上がる。反乱軍の中でも地位が高くない、騎士階級の男。彼は、元公国軍の将校として反乱軍に参加していた。
「こんな結果、承服できるわけがない!」
「なっ……」
突然立ち上がった男を、その場の全員が注視する。男は血走った目をぎらぎらと光らせ、拳を握りしめていた。
「自分の保身が優先されるなら、端から反乱なんて起こさなければいいだろう!それが、不利になった途端相手の寛大さに甘えるだと!?恥知らずにも程がある!!」
「貴様、黙って聞いていれば――」
「俺は決して降伏なんぞせん。最後まで戦い抜いてやる!」
怒気を含んだ声は、その場を威圧するのには十分だった。
「……腑抜けた貴様らにはもう何も期待はせん。俺は決してこの日を忘れん。俺と志を共にする者はついてこい」
それだけ言い残し、男は部屋を出ていった。残された者たちの間に沈黙が流れる。
「あの、大丈夫でしょうか?」
「……どうせあの者にできることは何もない。白旗を掲げさせよ」
不安げに尋ねる兵士に、バルンカは投げやりに答えた。
その後すぐに、メニアレーゴの街には白旗が掲げられ、程なくして公国軍を率いてメニアレーゴに入城したハンスに、バルンカ以下の反乱貴族は降伏した。
1708年3月22日午前7時、こうしてチザーレ内乱は終幕を迎えた。




