再会〜a hasn't feelings person
あ……由紀。
帰ってたんだね。
どうしたの?
そんなに暗い顔して
由紀らしくないよ。
そんな顔見せないでよ
由紀?
行かないで……。
深夜2時。
「嫌な夢だ……。」
少し怖い夢を見た。
やっぱり精神的に参っているのだろうか。
俺は気持ちを落ち着けるため廊下を渡り、リビングへ水を飲みに向かった。
冷蔵庫のドアを開くと、まばゆい光が瞳孔を心地好く刺激してくる。
少し冷や汗も引き、部屋に戻るため再び廊下を通ると、俺の部屋の隣からうっすらと月明かりが漏れていた。
俺が一人暮らしのため、由紀が気兼ねなく泊まりに来れるように用意された部屋。
窓……しめ忘れたか?
この部屋には由紀との思い出が沢山溢れているので、入った覚えが無いのだが……。
それに、さっき通った時は月明かりに気がつかなかった。
俺は、ドアをゆっくりと開いた。
「!?」
ドアを開けた瞬間俺は驚愕した。
祈りが届いたのか……?
開いた窓から風が吹く度に揺れるカーテン。
月明かりに照らされたベッド。
その上に座る……由紀!?
「ゆき…?」
そこには死んだ筈の由紀がいた。虚ろな表情で、窓から空を見上げている。
幽霊でもいい……俺は彼女によびかけて、近づいていく。そして強く抱きしめると、彼女はゆっくりと俺を見て、また窓へと視線を戻した。
「なぁ、由紀……会いにきてくれたんだろ?寂しかったよ。
由紀……こっち向いてくれよ、抱きしめ返してくれよ……由紀?」
それでも由紀は窓から視線を外さない。何かがおかしい……。そう感じた俺は違和感の正体に気が付いた。
体は冷たいが、心臓の音がする。
彼女は生きている?
でも、彼女は俺が知らない由紀だった。
彼女からは感情が感じられず、まるで生きたマネキン……。
問い掛けにも答えず、由紀独特の温かさを俺は感じることができなかった。
「由紀…どうして帰って来れたの?
これからはずっと一緒にいられるの??」
「……。」
「ごめんね由紀……。俺由紀が死んだなんて思ってた。
そうだよな……悪い夢だったのかなぁ、由紀?」
「……。」
「どうして答えてくれないんだよ……?由紀?由紀?」
「……。」
訳も解らず涙が溢れてくる。由紀の体を揺すって、叫ぶ。
「なぁ……どうしてだよ!?
こんな由紀知らないよ……。
俺の由紀はいつも優しく微笑んでくれるのに……!
貴方はいったい……誰なんだよ……。」
由紀はそれにすら答えず、窓の外の星達をじっと眺めていた。
俺は彼女をベッドに寝かせ、自分も隣で横たわった。
彼女は何も言わずに眠り、俺は夜通し一人で彼女を抱きしめ泣いていた。
いつの間にか寝ていたらしい。
目を醒ますと、彼女はまた窓から空を見上げている。
「帰して……。」
立ち上がり彼女に駆け寄ろうとしたとき、不意に彼女が言葉を発した。
俺はその言葉の意味を理解することができない。
「由紀…?帰してってどういうことだ?
由紀は帰って来てくれたんだろ?
俺の祈りが通じて、帰って来てくれたんだろ?」
それっきり、彼女はまた空を見上げてしまった。
無表情な彼女の頬に、一筋の涙がそっと流れ落ちた。
彼女の言いたいことが少し、判った気がした。