2-09 眷族
「お姉ちゃん、寝ちゃったよ~?」
『疲れたんだろう。
みんなでベッドまで運んでおくれ』
「「「「「ハーイ♪」ワッショイ!」」」」
[ナウ~ン(既に、この星系の人類種の解析は終了しております。どんな風に改造しましょうか?それにしても、弟子を取った事の無いマスターがどういった心境の変化ですか?)]
『取り敢えず、あんたの乗船資格ぐらいからランクアップしていこうか。
長い付き合いになるだろうからね♪
まあ、故郷も同胞も無くなったしね、運斬技牙の残滓ぐらいは残しとこうかと思ったのさ』
[ナナ~ン(一番弟子ですか!この娘は、苦労しそうですね~)]
『ケケケケケッ、どう扱こうかね~楽しみだよ♪
今のうちに良い夢を見ておきな・・』
「・・苦ッ・う~んう~~ん・・」
[ナァオ~ン(見てるのは悪夢みたいですけどね~)]
◆
瞼の裏にまぶしい明かりを感じる。
私は、肌触りの良いベッドに寝かされているようだ。
目を開けると視界に入ってくるのは、何処までも白い部屋・・。
「・・知らないお部屋・・って、ここは何処?」
ガバリッと起き上がってみると、そこは見知らぬ白い部屋だった。
窓もドアも無い・・壁や天井、床までが白く光っている。
でも、目に痛くは無い、柔らかいあかりだ。
『目が覚めたかい?
随分とノンビリ寝ていたね♪』
背後から声がして上半身で振り返ると、寝そべった黒い獣に靠れるようにして寛ぐ、Dr.アンだった。
「ここは何処ですか?
私はあの後、どうなって・・」
『ここはあたしの相棒、船の中だ。
あんたは5日、鼾をかいて寝ていたのさ。
可愛い寝顔だったよ♪』
「かわっ・・、私に何をしたんですか?」
『まさか、忘れてはいないだろうね?
あんたは、弟子入りしたんだよ!この天の川銀河1のMadDr.アンにね。
取り敢えず不便がないように、あたしの眷族に成ってもらったからね、もう取り消しは効かないよ!
5日じゃまだ完全とは云えないけど、問題ないだろう~』
「眷族ですか?」
『ああっ、自分の髪を手にとって見てみな、あたしと同じ色になってるだろ』
横目に自分の髪の毛を手で摘んで、しげしげと眺めるサリナ。
段々と顔色が白から蒼白になって、手が震えだすサリナ。
『あたしの一族は運斬技牙と云ってね、黒頭の民と自らを云うんだよ。
あたしの一番弟子と成ったからには、無条件で運斬技牙の因子を植え付けさせて貰ったよ、ケケケケケッ♪』
「そんな、私の髪が・・戻して下さい!お願いします。
問題、大有ですよ~。
私、なんて上に報告すれば良いんですか~!」
『そりゃ~そっちの都合だ、聞けないお願いだね!
でも、慣れるとこんな事も出来るよ、精進するんだね♪』
Dr.アンの髪の色が黒から茶色に、そして銀髪から金髪、最後には虹色に輝いた。
『そんなに難しいことじゃないよ、半日も頑張れば出来るようになるさ。
ただ、気を抜くと黒髪に戻るけどね、ケケケケケッ♪』
「・・ヒ~ン・・」
『サリナ、よくお聞き!
弟子のあんたには、覚えて貰うことが星の数ほど有るんだ。
ノンビリなんてしてる暇は、一時だって無いよ。
まあ、もう寝なくても疲れたりなんかしないから、心配要らないけどね。
ああっ、寝れない訳じゃないからね。
寝なくても良くなったって事さ、扱き使うから覚悟しな!』
「・・ヒ~ン・・」
『一応確認するよ。
あんたは、ザイン聖堂騎士団の第4騎士団諜報部に所属する間諜で間違いないね?
名はサリナ、ハーフエルフ。
父親はヒューマンで母親はエルフ、どちらも死別しているね。
兄弟も無く、現在家族は1人も無し。
どちらの親族からも縁を切られて天涯孤独。
親しい男性も居ない、その齢でまだ処女、男性経験無し。
何か訂正は、あるかい?』
「・・ありません・・そんないつの間に・・」
『ここは、あたしの相棒の中だって云っただろう』
[ウナ~ン(この惑星および周囲の星系には、既に私のインセクターに依る情報ネットワークが構築されています。私の目と耳から逃れるのは容易なことでは無いとご理解下さい。何処に居ても私の目が光り、耳が聞いていると思って間違いありません)]
「・・獣が喋った!」
『この娘は、私のガーディアンでありキシャールの船外端末個体、所謂インターフェースだよ。
弟子には、あたしらの因子を植え付けたからね、言葉が分かるように成っているだろう』
[ウナ~ン(知識の蓄積と共に自分がどれだけの叡智と力を得る事に成るのか分かってくると思いますが、分からないことは私にお聞き下さい。そうですね、一番弟子様には私の仔端末を差し上げましょう。名をお付け下さい)]
キシャールが言った直後に、ベッドに半身を起こして呆然としているサリナの膝の上に、黒猫が落ちてきて鳴きました。
肩に乗るぐらいの黒猫ですが、背にはキシャールと同じ触手が揺れています。
[ニャ~ン(名をつけるニャ!)]
「グッ、かっ可愛い♪」
『ほう♪随分と気に入られたじゃないか。
始めてだよ、キシャールが人の機嫌を取るなんて』
[ウナ~ン(当たり前です。マスターは今まで一人もお弟子を取らなかったじゃないですか。機嫌を取りたくても相手が居ませんでしたからね。眷族と成ったからには逃しませんよ]
[ニャ~ン(ご主人様を守るニャ!)]
黒猫は、サリナの身体をつたい右肩に乗って頬ずりし、一声鳴いた。
「ウウウッ~、可愛いすぎる!え~と~名前、名前?」
『落ちたね!』
「あなたの名前は・・ノワール、ノワールにしましょう♪
よろしくね、ノワール!」
[ニャ~ン(我はノワール!嬉しいニャ!)]
『ケケケケケッ♪』




