1-01 目覚め
あたしは、ひどい頭痛とともに目を覚ますと、愛船キシャールの甲高い鳴き声に迎えられた。
声が頭に響くよ!二日酔いかね~、そんなに深酒した覚えは無いんだけど・・。
『ウ~ン、もう朝かい?あったま痛ったいネ~、キシャール!二日酔いの薬を出しておくれ・・』
[アッ、起きた~!?マスタ~マスタ~~] ・・涙声・・
『何だい何だい、湿っぽいね~。
お前さん宇宙船だろう、泣くやつがあるかい・・って、何だいこりゃあ~?』
あたしゃ手のひらを見てびっくりしたよ、枯れ木の様にシワシワだった手がぷにぷにの子供の手になっていたのさ。
[やっと目を覚ましたんですね!そろそろ諦めようかと思っていたんですよ~♪]
『あんた、あたしに何をしたんだい?これじゃまるで・・子供じゃないか、って分かるね!何だいこりゃ?』
いきなりズームアップした手のひらが視界一杯に広がり、顕微鏡サイズにまで拡大された。
まだまだ倍率が上がりそうだ・・分子構造までがハッキリ分かるよ。
こりゃ~、ナノマシンの集合体だね・・とうとう人間ヤメたんだね、あたしゃ!
[ご覧になって分かったと思いますけど、マスターに生身の部分はありません。
完全にナノマシンに置き換えられています。
イヤ~苦労しましたよ。遺伝子まで忠実に再現しましたからね。
ましてやスピリチュアルパターンを維持したまま、身体の改変作業をするのは気の遠くなるほど、時間の掛かる作業でした。
私じゃなかったら、途中で匙を投げているでしょうね!エッヘン!!]
『そうかいそうかい、それはありがとうよ。
それであれから何年経ったんだい?』
[ざっと250年ってところですね。
イヤ~ほんとに長かった~]
『それで・・他に何か云う事は無いのかい?』
[・・そうですね~、・・アアッ!材料が少し足らなかったので、子供の体になってますね!]
『それでかい・・納得したよ。
また、あんたの悪ノリの悪戯かと思ったじゃないか。
ま~そう云う訳じゃしかたが無いね。
そのうちマテリアルは調達するとして、あたしたちの現在位置はどこ何だい?』
[このままあと1月も飛べばアンドロメダ銀河ですよ。
ゆっくり飛んできましたから。
(ハ~、バレなくて良かった、子供マスタ~可愛い♪)]
『フ~ン、アンドロメダか~・・。
何か面白いモノが有るといいね~』
こうして2度目の人生、あたしと相棒キシャールの凸凹道中が始まったのさ。