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●05


 現在、僕達はまだ森の中にいた。野宿をして日が昇ってから2時間程だ。小鳥が賑やかに囀り、木漏れ日が差し込み、若干ひんやり肌寒いが晴やかな朝だ。


 さて、今後の事だが、人族領内で旅をする事は変わらない。セラが大人になるまで付き合おう。セラを違う拠点に連れて行く事も考えたが、慣れ親しんだこの星で生活するのがベストだろう。最初は……、そうだな。村の村長のところに行ってセラの紹介書をもらおう。


 僕が考えていると、セラが僕の顔をじーっと見つめていた。

 そして、ふと見るとセラの服は出会った頃のボロボロの服のままだった。

 いかんな。これでは衛兵に呼び止められ、町に入れないかもしれない。


 僕の鎧に試作品があったはずだ。おもむろに空間収納ボックスから紅色の鎧を取り出した。


「セラにはこれを着てもらうぞ」


 この鎧は僕の鎧より劣るが、精霊殿の魔道具よりは遙かに性能面で凌駕する。なんせ、宇宙中の素材を探し、僕の全てを使い作成した一品なのだ。


 僕は紅色の鎧に触れた。

 僕の手の平には紅色の鎧が変化した指輪が残り、セラ専用に設定、それをセラの指に嵌める。僕はこの指輪を<鎧の指輪>と呼んでいる。

 この<鎧の指輪>はセラの思念により形状が変化し、鎧になり、武器にもなる。いかなる攻撃も無意味であり、死ぬ事はありえない。宇宙規模のアイテム。コスモアイテムと言ったところか。


 そしてセラに<鎧の指輪>の使い方、性能を教えた。

 これで、セラの安否は大丈夫だ。

 <鎧の指輪>を外さないかぎり。



 現在、僕とセラは町の城壁門前の列に並んでいた。

 目前には商人の馬車を入れて50人程が並んでいる。その向うには高い城壁があり、町の中は見えない。

 城壁の上は空は晴れ上がり、早朝とあってか少し肌寒い。

 遠くにある山は紅葉が見栄えて綺麗だった。

 僕とセラの服は人族に紛れても目立たない服装に鎧を変化させていた。

 僕の服装は黒のズボンに、上はワイシャツ、くたびれている感じの蒼いコートに紺のマントを羽織っている。

 セラの服装は、薄青色のロングスカートに髪は後ろ手に縛ってある。

 2人共、茶色の皮のバックを背中から掛け、旅人のように装っている。

 又、セラの紹介書は村に行き、村長に魅了をかけて入手済だ。


 僕とセラの設定は兄妹と言う事にした。その為、セラを僕と同じ白髪にして目は薄緑にしている。


 セラの思念は弱く雑念が入る為、僕の思念を鎧に定着させていた。


 やっと町に入れるのだ!!! 入る迄にいろんな事があり過ぎだろう。

 もし、衛兵に入るのを拒絶された場合は魅了を掛けよう。強硬突破だ。


 街の中に入った後、どうするのかを決めないといけない。セラを保護すると言う事は教育が必要になるだろう。だが、僕はこの星の事も分からないので家庭教師を付ける事になる。そして、セラがなりたい仕事があれば援助するつもりだ。


「セラは何になりたい? 目標はないのか?」

 腰をががめ、目線をセラに合わせて聞いた。


「私、魔法が使えないから、使えるようになりたい」


 んっ!!! 人族は精霊と悪魔族の交配で生まれた種族だ、魔法が使えないなんてあるのか? それとも使えない訳があるのか? しつこく聞くにも幼いセラには酷なのかもしれない。


「魔法が使えるようになって、どうしたいんだ?」


「普通の暮らしがしたい」


 普通の?

 普通に魔法を使って生活する事を言っているのか? 火を起こしたり、洗濯で水を使ったりする事を生活魔法と言うらしいが。

 取り敢えず、魔力が低くてもいいから魔法が使いたいと言う願いは、既に叶っている。セラに与えている鎧には通常では有りえない魔力を保有している。

 あとは思念の使い方を教えるだけだ。


 セラに魔力がなくても、セラの思念で鎧に命令するだけで、強力な魔法を発動する事が出来る。

 反対に明確な思念制御が必要になる。つまりイメージ力が必要になるが、軽く思っただけで大変な事になってしまうのがこの鎧のデメリットといったところか。

 直近で教える事は、セラの思念制御の訓練になるな。


 そう、考えている間に衛兵の前に辿り着いていた。


 衛兵にセラと僕の紹介書を見せた。

 衛兵は僕らと交互に紹介書を見比べている。


「よし、通っていいぞ」

 簡単過ぎて、拍子抜けしてしまった。もっと何かあるだろうと想定していたが、無駄足になってしまった。そのまま門を潜ったが、本当にいいのかと後ろを振り返ってしまう。が、頻繁に後ろを振り返ると怪しまれるので自重した。


 前に広がる光景は多くの人族がいて、活気に溢れていた。

 大勢の人族が行きかっていた。親子が買い物をしていたり、家の前では騎士がたむろしている、あちこちに荷台があり、商品を並べていた。ある荷台の前には子供が集まり、なにやら美味しそうに食べ物を食べていた。道行く人族の服は、バラエティに溢れた服装を着ていた。それぞれの職業に合わせた服なのだろうか。


 町の作りは、石畳みの大通りが真直ぐに延び、向うまで地平線が見える。大通りの途中には噴水があり、子供達の遊び場になっていた。その両脇には大小の家が立ち並び、突当りまで続いている。突当りには小さく屋敷が見え、屋敷の後ろの丘の上には白い城が建っていた。丘を中心に町並みが広がっているのが分かる。


 後ろに付いて来ている、セラをちらっと見る。<鎧の指輪>で全く疲労はないだろうが、精神的な疲れは見た目では分からない。宿屋を見つけてゆっくりさせてあげたい。


 僕がきょろきょろ町を見ながら歩いているのに対して、セラは町に興味がないみたいだ。町に慣れているのか、僕の後をもくもくと歩いていた。


 マム爺さんにもっと町の事を教えてもらうべきだったと後悔した。宿屋を見つけようにも、分からないのだ。家には看板らしき物がぶら下がっていて、絵が描かれている。商売の目印に使っているようだが、看板に描かれている絵では分かりずらいし、入りずらい。


 大通りをぶらぶらと歩き、日が傾きかけた噴水の縁にセラと腰を掛けた。セラには大通りで売られていた串をあげていた。おいしそうにむしゃむしゃ食べている。


 僕は盗聴スキルで町中の人々の声を集めて、有用な情報を得ようとしていた。

 声の中に地図というキーワードがあった。その地図はある家で販売されているようだった。


 早速、地図を検索スキルと転移スキルで手元に転移させた。

 申し訳ないので、金額は地図があった横の棚に置いた。


 突然現れた紙にセラは興味津々だ。

 地図は大きく、僕が両腕を広げる程だ。


「ニイ、それは何?」

 セラには『ニイ』と呼ばせている。兄上、兄様、おにいちゃん等、考えたが堅苦しくない『ニイ』にしていた。


「地図だ。これがあれば迷いなく、町の行きたい場所に行けるぞ」

 地図には沢山の小さな看板の絵が描かれていて、右上には凡例として絵と絵の意味が記入されていた。


 よし、今日は宿屋に泊り、明日は素材を売りに行こう。


 噴水の近くにある宿屋に行き、宿を取る。取り敢えず、10日程。


「すみません、10日間泊まりたいのですが」


「はい、御二人、食事付きで銀貨7枚になります」

 この星のお金の事はいまいち分かっていない。

 2メートル程の魔物が、金貨2枚程度で売れるというくらいだ。

 今は、適当にお金を出して、店の人族が数えている状態だ。

 これで問題が起きた事はない。


 2階の部屋に行き、セラはベッドに飛び込み、そのまま寝てしまった。

 僕は部屋の隅にある椅子に座り、目を瞑る。そして盗聴スキルで町中の人族の声に耳を傾けた。まだまだ情報が足りないのだ。


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