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●03


 1週間程、精霊殿で過ごした。

 旅の準備がてらに精霊殿にあった本を寝室で読んだのだが、これが面白かった。


 分かった事はこの星の半分は精霊が支配していると言う事。そして、悪魔族と人族という種族が誕生しているらしい。悪魔族は精霊が作成、もしくは召喚したとの事。<悪の精霊><呪の精霊><死の精霊>等が関わっていると記述されているが本当のところは分かっていない。悪魔族は精霊に逆らえないように胸に魔核を植え込まされて管理されている。人族は精霊と悪魔族の交配で生まれた雑種になる。


 全ての生命は魔法が使え、日常的に魔法を使用しているみたいだ。人族は魔法の力が弱く、そして魔法を使えば使うほど、短命になる。

 人族と悪魔族は争っているらしい。

 人族は悪魔族に対抗する為に知恵を絞り抵抗している。又、人族に手を貸している精霊もいる。その精霊は神と言われ、信仰の対象になっているみたいだ。


 悪魔族は個体数が少なく100名程度、領土も小さい。領土拡大の為、人族に戦争をふっかけている。悪魔族は魔族を従え、人族を支配下に置きたがっている。魔族の下級魔族は魔物と呼ばれていて、個体数は多い。


 人族は土地を開拓し、領土を広め政治なるものを作り治めているようだ。

 又、人口を増やし、集団の戦闘を確立、悪魔族に抵抗している。

 ここの本ではここまでだ。

 う~ん。精霊殿の本だけでは人族の情報が少ないようだ。


 さて、どこから旅を始めようか。


 旅をするには地図が必要だ。ミーシャに地図を提供してもらった。

 ミーシャに聞くと、人族が作成した物との事。

 僕はふと思った……。もしかすると人族は雑種ではなく、精霊、悪魔族の進化した種族ではないかと。地図は測量と記録の根気、知恵がないと作成出来ない。地図がなければ、自分の立ち位置さえも分からない。僕も宙図を作成するのに苦労をしたのだ。地図は非常に重要なのだ。人族に興味が沸いて来た。


 まずは興味が出て来た、人族から旅を始めることにしよう。


 本からの情報では人族の間には、お金と言う物が必要らしい。

 魔物を売る事でお金を得られるらしいので道中、魔物を狩っていこうと思う。

 雑貨屋かギルドというところで買ってくれるらしい。


 そして、僕の容姿だ。僕は5歳程度の容姿であり、髪と目が漆黒なのは人族の中では普通なのか分からない。ミーシャに手伝ってもらい、人族らしい容姿にしてもらう。髪は白色、目は緑色にした。服装は衣装ケースにある普段着を着用し、頃合いを見計らって人族の中で買い替えたりする事にした。


 そして設定として、僕は素材を売って旅をしているという旅人にする事にした。 これは母上の意図する事にも合っている。細かいところから本質を探ると言う意味からして。草を1本1本吟味することから始めるのだ。


 次の日、準備を終え、ミーシャと挨拶をかわし別れた。


 地図を見ると、精霊の領土から人族の町迄、歩きで半年、飛行では1日の道程だ。

 学び舎入学まで4年という短さと、魔物狩りをしながらという事を踏まえ、飛行が妥当だろう。ゆっくり飛行し、上空から魔物を見つけて狩をする事にした。


 狩りは簡単だ。魔物の体と魔核を<部分転移>で切り離し、空間収納ボックスに入れるだけだ。強い魔物になるほど魔核が定着されていて、切り離すと死亡する確率が高いみたいだ。狩りをしていて分かった事だ。

 空間収納ボックスは空間スキルと時間スキルの合成スキルで作成している。

 内部は時間が停止している状態で、保存に適している。

 空間収納ボックスの容量は確認していないが、星が100個は入るだろう。

 そして現在、1時間程で500体以上の魔物が空間収納ボックスに入っている。


 魔物狩りは淡々とした流れ作業だ。ここに疑問はある。

 こんな横着をして、万物の理が分かるのだろうか? 汗水たらして苦労をし、実践しないとイメージ力は身に付かないのではないだろうか? 魔物に組み伏せられ、喘ぎ、狩りをしていく……。だが……、そんな場面に無理矢理に身を置くのもどうかと思う。


 魔道具により僕を弱体化し、魔物と取っ組み合いをしたとする。

 実践は身に付くだろうが心の中では、なぜこんなことをしないといけないのかと思い続けないといけないのだ。これはイメージを阻害しているように思える。出きる事を出来ないように見せているのは僕を誤魔化しているにすぎないのではないか。


 突き詰めると、僕が全力を出せる強者と対決する必要があるという事だ。という結論になるのだが、目的から外れているように思われる。強者と出会い勝っても負けても次を求め、追及するとキリがない。あとは戦闘狂になるだけのように思われる。


 ここで、万物の理をイメージする力とは追及する事ではなく、浅く広く見分を広げる事に行きつく。どこかで妥協し、線引きする必要があると思われる。


 と、考えながら、魔物も1000匹を超えたあたりで人族の道が見えて来た。



 人族の道と思ったのは、明らかに獣道ではなく人為的に草木が刈られて通れる道になっているからだ。道幅が広く、遠くから馬が4つの車輪がついた荷台を道伝いに引いているのが見える。


 僕は上空に飛びあがり、荷台が向かっている先を見る。

 すると、城壁らしき物が見えた。

 僕は地上に降り立つと荷台を追いかけはじめた……。


 現在、僕は先程の荷台の後ろに並んでいる。馬を荷台から操作している人らしき人物が降りてきて背伸びをしている。そして僕と目が合い話しかけてきた。


「ぼうず、1人なのか?」

 かなり怪訝な目で見られた。

 本来、僕は人族の言語を話す事も聞く事も出来ないが、鎧が自動翻訳スキルを発動して会話が成り立っている。

 頭の中で地図を思い浮かべると、確かにこの町と隣町とはかなりな距離があり、何日も野宿が必要だ。それも子供が1人とはありえないし、魔物が変装しているかもしれない。疑いの目で見て来るのも当然だ。


「親と野宿をしていたんですが、はぐれて……やっとの思いでここまで辿り着きました」


 これには無理があった。僕の服装は鎧の魔法により汚れがなく、皺1つ付いていないのだ。ますます疑われて、僕の頭に角がないか、耳は人族なのか、背に羽根はないかじろじろ見まわしてきた。


 これは正直に言った方がいいだろう。もし、兵士に突き出されそうになっても逃げればいいのだし。その場合、再度人族を観察して準備のやり直しをすればいいだけだ。そもそも小さいの子供が1人で旅に出ているのが常識ではなかったのだ。


「ごめんなさい、精霊なんです。町が見たくて来てしまいました」


「ふ~ん。精霊は頻繁に来ているが、城壁の中には入れないんだ」

 僕が悪魔族なのか、精霊なのか判断がつかないので疑いの目は晴れない。


「あそこにいる精霊も城壁を見ているだけだろう」


 男が指さす方向を見ると、精霊らしき3人が城壁を見てなにかを話していた。


「中に入れる方法はないのでしょうか?」

 これは仕切り直しが必要だろう。


「ぼうず、ごめんな。過去にも精霊の特使が町に入った事はあったが、それ以外は例外を認めていないんだ」


「ありがとうございます」

 僕は列から外れて、森に向かった。

 は~っ。考え直しだ。


 想定として考えてみた。

 この町は悪魔族と隣接している領土な為、警戒が強いようだ。それでは警戒が弱い遠くの村に行ってみるのはどうだ。そして、子供ではなく20歳位の容姿にする事。又、持っている素材が魔物ばかりだ。人族に売る場合、疑われる要素になるだろう。人族でも簡単に入手できる薬草や珍しい石を探そう。


 これで駄目なら、瀕死の人族の体を乗っ取り、なりすますと言うのはどうだろう。考えるとだんだんと楽しくなってきた。僕は考察が好きなようだ。


 早速、上空から人族の領土を見回す。

 地図と睨めっこしながら辺境の村を探した。

 上空から、塀がない村を発見し、地面に降り立つ。

 この村には門兵もいなく、道成に出来た村のようだ。


 早速、村に入り、雑貨屋を探す。

 旅人が彫刻された看板が家の端に吊るされている。

 その木造の家に入ってみた。


「何か用かね」

 ショーケース奥に老人が座っており、ぶっきらぼうに返事をしている。


「すみません、ここは雑貨屋ですか?」

「そうだが、用がないなら帰ってくれ」

「これ、買い取って貰いたいのですが」

 雑貨屋の老人に薬草と石を出した。


「ちょっと、待ってな」


 雑貨屋の爺さんはルーペを取出し、じっくり時間をかけて吟味していた。

 雑貨屋の中を見回すと、多数の素材が陳列していた。ショーケースに入っている石、壁にぶら下っている薬草、筒の中に無造作に投げ込まれている粗悪な複数の剣、戸棚にはぐるぐるに巻かれた紙が置かれている。生きているような目玉がコップの中で泳いでいる。見ていて飽きない。僕はこれらが売り物になるのかと興味津々で見て行く。


 薬草と石はたいした金額にならなかった。しかし有益な情報をもらった。

 老人の名前はマムと言い、通い詰めるといろいろな事を教えてくれた。その中でマム爺さんは鑑定の加護を持っていると話してくれた。加護とは神、すなわち精霊により与えられるギフトであり、親から子供に代々受け継がれる魔法であるようだ。だが、加護は受け継がれない場合もあり、高額な金額で精霊を呼んで加護を買う事もあるとか。


 加護を持っている人族は少数であり、持っているだけで、将来は保証されている。高位加護持ちになると、宮殿に仕える事も出来るらしい。僕も加護を与える事が出来るかミーシャに今度聞いてみよう。


 人族の加護は精霊の魔法の劣化版だと想像出来る。

 精霊と悪魔族の交配により人族は誕生したが、精霊の遺伝の方が強い人族は、精霊の魔法を加護として付与されたのだろう。それが、今日まで受け継がれたと。


 では、悪魔族の遺伝の方が強い人族はと言うと、精霊に作られた悪魔族は魔核に支配されているだけで、人族には何も付与されず、加護なしになったらしい。


 それが、悪魔族が人族を憎む原因だった。悪魔族は支配され、人族には加護が与えられたと……。しかし、これは逆恨みだろう。人族の加護は偶然なのだし、極端に加護持ちは少ないのだから。


 さて、僕はこの村に腰を落ち着け、信用を勝ち取り、村長に紹介書を書いてもらうと言う事を目的とした。

 その紹介書が身分証明書となり、人族の領内を自由に行き来できるらしい。信用の為にも、この村で信用されているマム爺さんに弟子入りをお願いしようかと思っている。


 だが、初対面のマム爺さんに弟子入りを頼み込むのは常識がないと思われるだろう。1年程は宿屋で素材採取し、マム爺さんに僕の人となりを分かってもらう必要がある。

 そして、もう1つ問題なのは弟子入りの際、マム爺さんが僕を鑑定すると思われる事だ。

 鑑定表示を偽装する必要がある。

 隠蔽スキルで僕の鑑定表示を変更する事にした。

 又、変更内容はマム爺さんの鑑定表示を参考にした方がいいだろう。


 事実、マム爺さんは僕を鑑定する事は出来ない。正しく表示されないのだ。父上や兄上が僕を鑑定した事があるが全て文字化けしていたらしい。僕が父上や兄上を鑑定すると正しく鑑定出来る。僕が僕を鑑定すると名前と種族は正しく表示されるが、その他は鑑定不能と表示される。


 幼い頃から自分が何者かと悩む原因はここにある。自分を鑑定出来ないのはなぜなのかと。鑑定に対して勝手な解釈をして鑑定出来ないのでは……。もしくはイメージ力が足りないのでは……。だが、それでは父上や兄上の鑑定も正しく鑑定出来ていないのでは。このもやもやは<鑑定の精霊>にスキルの本質を伝授してもらい、はっきりさせたい。


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