●01
「はー、だるい、だるいぞ」
ラーシは宇宙空間で1人、ポツンと嘆いていた。
ラーシは大精霊の3男であり、父上、兄上共に<創造の精霊>と呼ばれる精霊である。<創造の精霊>は全ての物を創造できる精霊であり、精霊王と呼ばれていた。
精霊は以下の精霊格に分類される。
大精霊、精霊王、最上位精霊、上位精霊、中位精霊、下位精霊。
ラーシの年齢は3億歳以上になるが、見た目は5歳程度の子供で髪も目も漆黒である。そして全身漆黒の鎧を着ていた。鎧は先程戦闘してきたかのようにぼろぼろになっていた。
無理だろうに……。
大精霊の父上から、宇宙を創造しろと言われたが、どう考えても無理だろう。
まず、創造するには、実践、研究して物事を全て把握しないといけない。
そして、<創造魔法>で解放する。その解放だけでもどれだけの魔力が必要になるのか……考えても、頭が痛くなる。それも、宇宙規模で……。
魔法は親から子に受け継ぎ、スキルは長い年月をかけて経験値より取得する。
僕の魔法は<創造魔法>が1つあり、スキルは2000を超える。
<創造魔法>はあらゆる魔法、物を創造する事が出来るらしいが、宇宙という物を創造するには至ってない。
父上はこの宇宙が誕生すると同時に生まれたらしい。100億歳は超えているとの事、今は数えていないのだとか。2人の兄上と僕は、父上と<時の精霊女王>との子供だ。母上は体調を崩し、ある空間で療養中である。
1億年の間、父上と兄上で宇宙中を飛び回り、僕達は生命の創造まで辿り着いたが、宇宙の創造迄には達していない。そしてここからは手探り状態になった。父上にも分からず、父上は兄上と僕に丸投げでどこかに行ってしまった。
兄上2人は自分の住処として、あらかじめ自分の銀河を育成していた。そして父上から勅命が下された時点で住処へと飛び立ってしまった。今の僕は途方に暮れていた。
どうしようか……。
母のところに見舞いがてら行こうか……。うん、そうしよう。そして今後の事を相談してみよう。
「転移」
◇
「転移」は、魔力脈を辿れば、どこにでも行ける魔法だ。魔力脈は、全ての精霊が持ってる魔力の性格であり個性だ。精霊は800種がいると言われ、万物全てに精霊が宿っているとされる。
現在、母上の精霊脈を辿り、ある空間にいた。途中、防御系の精霊に足止めされたが、僕の精霊脈で通してくれた。
「母上、お久しぶりです、お元気そうでなによりです」
「ラーシ、大精霊から話しは聞いています」
空間内にぽつんと豪華な椅子があり、その椅子に母上はふんわりと座っており、微笑んでいた。姿こそ見えないがそこら中に監視の目があった。護衛の精霊なのだろう、いつでも戦闘に入れる気配だ。
僕も空間より椅子を取り出し、母上の正面に座った。
「ラーシは今後について悩んでいるようね」
母上は僕の心を読んだかのように微笑みながら言った。
「兄上は父上の勅命を理解してるみたいです。僕は今後どのようにするのが良いのか分かりません」
「大精霊の願いは自分が成しえなかった、宇宙の創造を子供に託したと言う事よ」
「そうですが、宇宙創造のイメージが思いつかないのです」
「ラーシは頭が良いのね。分からない事があれば年長者に聞くのは優れた者の証だわ」
「全部とは言いません。ヒントを頂ければ、行動に移せます」
「そうね、旅の原点を見つめなおす事がいいと思うわ」
「初心に立ち戻れと言う事ですか?」
旅の原点……最初の拠点の星から旅が始まったのだ。
「宇宙創造とは大局を見がちだけれど、本質は細かいところにあるのよ。草1本ですら、そこまでに至る過程とその後の進化は実際に体験しないと分からないわ。つまり万物の理を正確にイメージする必要があるの」
「万物の理とは?」
「万物の理は800種の精霊が持っている魔法の事よ。精霊は万物に宿っている種族であり、精霊の魔法は万物を行使する手段よ。全ては精霊を知る事で万物の理を理解できるでしょう」
「僕は精霊全ての魔法を創造できますが、それでは足りないのでしょうか?」
「使用出来るのと、本質を理解しイメージする事は別の事だわ。ラーシはどうやってスキルを発動しているの?」
「自分のイメージです」
「そのイメージは間違ったイメージかもしれませんよ」
「それでは800種の精霊に出会い、精霊の本質を伝授してもらい、正確なイメージを確立すると」
「そうよ、道のりは長いわ」
ラーシは目下の目標は分かったが、やはり無理な物は無理だと憂鬱になった。だが、やる事は分かった。こつこつとやってみよう。
800種の精霊といっても全てを把握しているわけではない。僕が知っている種族は最上位精霊の<時の精霊><空間の精霊>と上位精霊の<水の精霊><土の精霊><火の精霊><風の精霊>あと、守護精霊くらいだ。
「母上、ありがとうございます」
母上には1億年の旅の土産話と、母上に入用な魔道具を渡し、別れた。