2‐9 勇者と誰かと、捕獲。
これとあと一話と鋼の会で第二章は終わりです!
勝利後。
俺はリアを呼び寄せる。
「あのワーム、冒険者たちのところに運んで、解体してくれないか」
リアはコクリと頷き、ワームのところへ向かっていった。
リアは「かなり大きいアイテムボックス」を持っているらしいので、カオスワームといえど入るだろう。
後は……
「数家。……久しぶり」
順也か。
リアは一応「呪われた巫女」なので勇者達に会わせないほうがいいかと思った。
というかなんか変わったな?原因はよくわからんけれども。
吹っ切れた?
「おう……どうした?」
「生きてたんだ」
「まーな」
その後、スキルやレベルの話をして、順也とは別れた。
いやー、大漁大漁。いい話を聞けた。
帰ったら早速ノートに書いておこう。
っと、リアと合流するのが先か。
リアはどこに──
「……あんたね」
「……どちら様ですか?」
「……は!?」
黒髪だからクラスメイトだとは思うが(この世界の黒髪は珍しい)、俺は知らない。
去年違うクラスだったやつの顔は覚えていない。
杖持ちだから魔法職かな……
「まあいいわ。<獄炎>」
「<高速移動>5倍速」
一応二桁までなら高速でも動けるが、5で十分だろう。
相手の魔法の熟練度は低いみたいだし。
って、こいつ俺を最初に殺そうとした奴か。名前知らんけど。
確かリアが操られてるとか。洗脳だっけ。
俺は洗脳を解く方法を知らないので、放置でいいか。
支障なさそうだし。
「なんで避けられるのよ!?」
「いや、そんなに遅い初動。誰でも避けられるって」
兆候があるからな。とても避けやすい。
さらに出始めが遅いというおまけつき。
AGIが2000を突破した俺に避けられないはずが無かろう。
リアは俺よりレベル高いので抜きでお願いします。
「んぐ……! これよ! <水槍>×5!」
「おー、速い速い。操作性が悪いなそれ」
ほとんど直線に飛ぶ。せっかく早いのに。
「なんで俺こんなの相手にしてるんだろ……」
「は!? 私はクラスメイトNo.2よ!? こんなのとはなによ!?」
「勇者が一番かー。基礎ステータスで言ったら俺が一番強いけどなー」
「嘘よ! 私のINTは1000を越えるのよ!」
「俺のAGIは2000越えしてますが何か?」
あーもーこいつほんとうるさいな。早くリアと合流したいのに。
「だから、さっさと逃げる! <転移>!」
はー。やっと逃げれた。
あ、名前聞くの忘れた……まあいいか。
とりあえずリアと合流……
あれ?いない……
冒険者たちに聞けばなにかわかるか?
「リア知りませんか」
「リアちゃん?えーと……解体が終わったから向こうに行った」
「ありがとうございます」
やっぱ初対面の人にはあんまり喋れないな。こっちに来てからサタン様とか神様とか心を読む方が増えたからか、ましにはなったけど。
あとリアも大きいな。元々の無口が幸いして話しやすいし。
「こっち?」
あの人の情報によるとこっち。のはずが……
「いないな」
その時、声が聞こえた。
「あいつ、本当にこんなとこに入りやがった」
「バカなんだろ」
「違いねえ」
「……<擬態>」
どう考えてもいい奴ではなさそうだ。ていうかあいつグルだったのか。
まあギルマスの例もあるし、見つかる可能性もある。
ここは一本道。さらに向こうは行き止まり。……あれ?
「リア?」
「……カズヤ。どうする?」
「どうする、って言われたってなぁ……隠れるスキル無いの?」
「時間が切れる。他は夜限定」
夜限定か。無理矢理夜にするとか?いや、そういうスキル持ってないしな……
かといって隠れてるのバレたらまずいし、声を出すスキル類は使えないし。
あれ、積んでね?
転移は一人(一つ)だけしかできないし。
「<おとなしく捕まる>?」
「それしかない……いや<実力行使で脱出>とかは?」
今は<隠密の願い>がある(らしい)からいいけど、もう少しで解けるらしい。
その前に作戦を立てておこう。
「レベル50は超えてる。無理」
「ならおとなしくするしかないか」
俺の今のレベル25あるかないかです。無理です。
仕方ないかー。
「いたぞ! こいつらだ!」
【数家の性格】「リアを残して脱出」という案が浮かばないほどにはお人好し。地球よりコミュ障が治っている。認識:知り合い……勇者 友達……リア 尊敬する相手……サタン、暇神達
クラスメイト並びに王族は「どうでもいい他人」です。
ちなみにサタンは「心で思った単語を拾う」ことができます。完全に心を読むことはできません。