__ねぇ、本好き?
※これはフィクションです
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__ねぇ、本好き?
そう言って、私に微笑みかける君。
「うん、好き」
私は君に笑顔でそう答えた。
「よかった」
と、君は安堵した表情を浮かべる。
今でも、鮮明に覚えている。これが君と私の、初めての会話。
放課後、君……美嘉と二人で教室に残っていた
「でね、お母さんったら…って、雫! ちゃんと聞いてるの?」
と、頰を膨らませて私に問いかける美嘉。
こんな、怒っている仕草までもが愛おしい
「っふふ、ちゃんと聞いてるよー」
と、私は笑いながら相槌を打つ。本当は聞いてなかったんだけど…ね!
「本当に? 怪しい」
美嘉はそう言って私の顔をまじまじと見てきた。
「もー。そんなことより! バドミントンしようよ」
私は、嘘を貫くのが苦しくなり、話題を変えるため、美嘉が好きなバドミントンに誘う。
「うん! やろう」
美嘉は目を輝かせながらそう言った
ほんと、美嘉は子犬みたいだ。全力で振っている尻尾が見えてくる。
私たちは、机の横にかけておいたラケットを手に取り、校庭へと向かう。
誰もいない、放課後の校庭。
最近、私たちは放課後、二人でバドミントンをやるのがブームとなっている。
誰もいない、二人っきりの空間で打ち合うのがとてつもなく楽しいのだ。
「今日も無で打とうか」
私が、そう提案すると美嘉は「了解」と頷く。
『無』っていうのはお互い、無言でただひたすら打ち合うことを言う。
私と美嘉だけの合言葉になりつつある。
ポンッ ポンッ
無の空間に、シャトルを打ち合う音が響く。
私はこの音が好き。
私と美嘉で奏でるメロディー。とても心地よい。
では、少し時間があるので皆さんに「過去」の話をしましょう。
私と美嘉が出会ってから今に至るまでの話を__……
4月。
新しい学校生活に、私は緊張と不安の波に襲われていた。
友達、できるかなって。
誰に話しかけようかな?
そんなことを考えていたとき、美嘉は私に話しかけてきた。
「ねぇ、本好き?」
ってね。
優しい笑顔を私に向けながら。
「うん、好き」
と、私も笑顔で答える。
「よかった」と美嘉は安堵の表情を浮かべながら言う。
美嘉はもし私が本を好きじゃなかったらと不安だったらしい。
なんで私に本が好きか聞いたの?
って聞いたら美嘉は「何となく」と笑いながら言った。
全く、変な子だ。そして、面白い子。
何回か会話を交わすにつれて、美嘉が小説を書いていることがわかった。
私は身を乗り出し、興奮気味に「私も、小説書いてるよ!」と言った。
まさか、こんな共通点があるとは…私は思ってもいなかった
それから、私と美嘉は行動を共にすることになった。
移動教室も一緒、登下校だって。
ずっとずっと、四六時中一緒。
心地よかったんだ、美嘉と一緒にいると。
私たちはお互い書いた小説を見せ合う仲にまで発展した。
お互いの小説の面白いところ、悪いところ。
たくさんのことを話したよね。
君と話していると、時間なんかあっという間に過ぎていった。
一時期、関係がギグヂャグしていた時もあったけど
でもやっぱり、美嘉のことが嫌いになれなかった。
やっぱり好きで好きで仕方なくて。ほんと、まいっちゃうよ
魔法にかかったよう
美嘉は私のこと、好きなのかはわからないけどね
でも、美嘉が私のこと好きじゃなかったとしても、やっぱり私は美嘉のこと嫌いになれないと思うな。
きっと、そうゆう運命なんだよ
【私は、美嘉のことを嫌いになんかなれない】
それが私の宿命なのだ
___じゃあ、そろそろ「今」に戻ろうか
ポンッ ポンッ
こうやって打ち合ってる時間が私の一番の楽しみ。
君とつながっている気分になれるから
スカ
美嘉が空振りをしてしまった。
「あー! ラリー結構続いてたのに…!」
と、残念がる美嘉。
私はそんな様子をみて
「今度はもっとラリー続くよ」
と励ましの言葉を送る。
こんな日常が、私にとってはとても幸せなこと。
ずっと、こんな日々が続いてくれるといいなって思う
これからも、よろしくね。
そして、あの時話しかけてくれてありがとう