02
翌日、ひとつの動画が拡散される。
それは、墨の虐められたときの映像だ。
「おい!金は持ってきたか?」
ジルがその墨の顔を殴る。
その映像からはじまり……
墨が飛び降り。
そして、少年のセリフ。
「ようこそこちら側へ……」
で、終わった。
「『ようこそこちら側へ……』ですか」
そういってサングラスを掛けた男が少年に紅茶を淹れる。
「うん。
彼らは、もう立派な犯罪者だよ。
イジメは犯罪だからね……」
「そうですね。
でも、『潰れたトマト』は酷くないですか?」
「だってアレ。
潰れたトマトだもん」
「人をトマト扱いするのは――」
「いや大丈夫だよ。
墨くんは、ケロッと生きているよ」
「もしかしてあの赤い溜まりは……」
「うん、潰れたトマトだよ。
モザイクかけているから多分ばれない。
本人たちもその場で確認とかしないからね。
やっぱ子どもだね死体は進んで見ないよ」
少年は、窓から空を見上げた。
「そうですか……
嫌がらせにとトマトサラダを用意したのですが、これは必要ありませんね」
サングラスを掛けた男がそういった。
「あ、貰うよ。
トマトは、嫌いじゃないから」
「そうですか」
サングラスを掛けた男は小さく笑いドレッシングをサラダにかけた。
「ハート?」
「はい、愛情いっぱいのトマトサラダです」
「ありがとう」
少年は小さく笑ってトマトサラダを食べた。
少年の名前は、13。
それは、名前ではなく呼称である。
13には名前はない。
サングラスを掛けた男の名前は誰も知らない。
ただ、周りのものからマスターと呼ばれている。
なので、13もマスターと呼んでいる。
マスターは、マクベスバーガーという喫茶店の本店を開いている。
マクベスバーガーといえば、今は女子高生に大人気の喫茶店で中でも手作りパフェがおすすめとされている。
「マスター」
「どうしました?13」
「トマトサラダに紅茶は合わないね」
13が苦笑いを浮かべた。
「では、こうしましょう」
マスターは手際よくトマトサラダをパンに挟む。
すると……
「はい、トマトサンドの出来上がりです」
マスターが、そういうと13は表情を変えることなく。
トマトサンドを食べる。
「あ、美味しい」
「はい。
これは私の奢りですので次のお仕事よろしいですか?」
マスターがそういうと13はうなずいた。
「うん。
いいよ。マスターのお願いなら何でも聞くよ」