黒羽
今宵、君の血をいただこう。
俺は、吸血鬼。でも血がなくても生きていける。
学校にも通っている。
トマトジュースはかかせない。
毎日飲まないと命に関わる。
変な吸血鬼といえば変だが、俺にとってはそれが普通。
誰も俺を吸血鬼とは疑わない。
けど、たまには人間の血もいただきたくなる。
そう、綺麗な女を見た時なんかは。
.ふわふわのロングウェーブの髪型の女。
俺の横を通り過ぎた。
思わずゴクリと唾を飲む。
いい香りがした。
決めた今夜は君の血をいただこう。
大丈夫死にはしない。
少し血をいただくだけ。
献血したと思えばいい。
月が照らしだすビルの屋上に立つ。
夜中の2時。
バサッと黒い翼を広げる。
普段は、もちろん翼は、消している。
月に向かって飛び立つ。
獲物にめがけて一直線。
マンションのベランダにゆっくりと降り立つ。
パチンと指を鳴らすと窓の鍵が開く。
吸血鬼なのに便利な能力も備わっている。
よく眠っているようだ。
ニヤリと不適に笑い、部屋の中に入っていく。
不法侵入にも関わらず
「お邪魔します。」と小声で言ってしまう。
部屋の中は、綺麗に片づけてられている。とても清潔感あふれる部屋だ。
ベッドに眠っている女の人を見て、何故だか愛しく思ってしまう。
それでは、遠慮なく
「いただきます。」
優しく口づけをするように首筋に近づく。
「うっ…。」
思わず飛び退く。
こ、こいつ…。
俺は、獲物を恨めしそうに見て、窓から飛び出した。
俺は、女の血をいただく事が出来なかった。
何故なら、女の口から大の苦手なにんにくの臭いがしたのだ。
俺は、悲しい気持ちで大空に飛び立つ。
綺麗な女の人でもにんにくを食べるようだ。
今日の晩飯は、餃子か?にんにく入りのラーメンか?
だーっっ!そんな事どうでもいい!
俺は、吸血鬼。
普通の人間とたいした変わらない生活を送れる。
だが、にんにくは大の苦手。そこはやっぱり吸血鬼。
トマトジュースを買って我慢しよう。
fin