おれとスライムの初クエスト
「お前、いい加減働けよな。」
このスライムは俺の討伐参加を理由に居候している。
なのにコイツはただの一度も討伐に手を貸さない。
討伐したスライムを捕食して帰って、ギルドで討伐報酬を貰って宿に帰る、この生活が一ヶ月続いているのだ。
俺もそろそろスライム討伐からゴブリン討伐に格上げしたい。
なのにコイツは手を貸さない、頑なに討伐に参加しない。
「ご主人、言ったはずでおま。ご主人のレベルはまだ20。せめて30になってから手を貸すと言ったでおま。」
コイツーーーーーーーー!? 何がおまおまだふざけんなよーーーーーーー!?
コイツ今日こそ絞めてやる!
こっそりコイツの背後に回って柔らかい球体をグリグリするけど……
「 あれ、柔らかい。」
「そですよ。スライムは柔らかいでおま。」
何これクセになりそうヤバい何かに目覚めそう。
「スライムはコラーゲンたっぷりのものを好むため柔らかいのです。ご主人もスライムを食べてはどですか?」
だからそれお前にとって共食いだけどいいのか?
てゆか柔らかくなったら筋力落ちて戦えないだろ。
「おいダメスラ、討伐行くぞ。支度しろ!」
「討伐!?スライムですか!?」
コイツあくまでも討伐を食事と勘違いしているな。まあいいだろう。ゴブリンを食わせてやる。
「食ってもいいけど食えるならなーー。」
「ッ!?」
コイツは馬鹿だから今のではわからないだろう。
しかし俺も馬鹿だった、 ゴブリン討伐を甘くみすぎていた。
ゴブリンの平均レベルは17、俺のレベルは20だから余裕だと思っていたのだが。
ゴブリンは集団で生活している。
今日は運が悪く、ゴブリンが10匹も集団で固まっていた。
「チッ!これじゃ討伐不可だ。キャンセルだキャンセル。おいダメスラ、帰るぞ!」
「ご主人〜!?そんなイケズな事言わずに倒してくだせぇ。オラ腹減ってるですよ。ゴブリンはなかなかに美味しいから食べたいです。」
コイツーーーーーーーー!?ゴブリンもいける口か!?てかどんだけグルメなんだよ?なんでゴブリン食ったことあるんだよ?
「ならお前も討伐手伝えよ。そうすりゃキャンセルせずにゴブリンは食える。俺も一匹二匹なら倒せる。どうだ?」
「おおおおおーーーーーーーー!!!さすがご主人!頭がキレキレキレですねー!」
やっぱコイツアホだ。これでコイツを働かせられる。
さすがに全部だと気が引けるから半分くらい俺が倒してやるか。
「じゃ、ちょっとやったりましょう!」
「行くぞ!スライム!」
いい感じに共闘に持ち込めた。これだよコレ!この共闘感…まさに友情……
「そいや!」
トドガ! ドカッ! バキッ!
俺は、このバカスラを甘くみすぎていた。
一瞬で全部消えた……ハイ!?
何が起きたかわからない。わかることがあるとしたら…
「一瞬で全部……消えた!?」
一瞬で全部このスライムが倒した。半分どころか全部を一瞬で倒しやがった。
「あーー、ご主人?ごめんなさいです。ついついスライムの血が騒いでしまいました。あまりにも奴ら鈍かったもので…まあこれでゴブリン食べれますね。ご主人も一匹どですか?」
スライムの血ってなんだ血なんか一滴も流れてねーだろ、水しか流れてねえだろ?
俺は…とんでもないチートスライムを仲間にしてしまったのかもしれない…
「ご主人だいじょぶですか?さ、ゴブリン食べて帰りましょう。」
「あ、ああ。そうだな。ゴブリンはお前が食べとけ。」
俺はコイツの怪物性を知ってしまった。
忘れていた。 コイツはレベル300だったのだ。
目の前のバカスライムは、それはそれは幸せそうにゴブリンの亡骸を捕食していた。