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プロローグ



なぜおれの異世界生活はこんなに味気ないのだろう。


今日もこのまん丸い生き物と生活しなきゃならんのか。



異世界に来て一ヶ月も経つのにどうしておれはこいつと毎日当たり前のように暮らしているんだ。



いつもいつもご主人ご主人懐いているけど飯を食うだけでロクに討伐もしないし、飯のタイミングが不定期で寝ていようが討伐していようが関係なく邪魔してくるし、オマケにこいつコラーゲンたっぷりの飯しか食わねえし。






「ああああーーーーーーーー!マジでお前働けコンチクショウ!?」


「ご主人どうしましたか?お腹が空いたのですか?何ならスライム討伐に行ってスライム食べますか?おいしいですよー!」







はぁぁぁーーーー、てかこいつスライム食うけどそれ共食いだからな。




こいつが付いてくるようになったのは一ヶ月前の事、俺の初クエストの時だ。





俺は前世の記憶がない。



覚えているのは自分の名前、出身は日本だったということ、そして何故かこの世界の言語を話せる事だった。



俺はギルドで職業選択した後、さっそくスライム討伐に向かった。



スライムはありふれているクセに討伐が難しい、それもそのはずだ。



スライムとは昔から生きる由緒正しき魔物。



数日前に発生したスライムならまだしも2、3年経つだけで魔物もかなりの成長を遂げる。



スライムに至ってはポイズンスライム、デビルスライムなど様々な種類に進化する。



俺たち初心者に倒せるのは数日前に発生したばかりのレベル5以下の弱スラと呼ばれるものたちだ。



俺はスライムを三匹討伐する事に成功し、ギルドに戻ろうとした時だった。



何かただならぬ気配を感じ、背後にいたそれは何かを捕食していた。



そう、スライムだ。スライムがスライムを食べていたのだ。



意味の分からない俺を他所にあっという間に三匹のスライムを完食したそいつは、唖然としている俺に喋りかけてきた。






「何してるのですか?」






こっちのセリフだーーーーー!てかなんで喋れるんだコイツーーー!?



俺はこの世界で目覚めて三日しか経っていないがスライムが喋るなど聞いたことがない。



そもそも喋る魔物というのはレベル300を超えたドラゴンやゾンビマスターなどという超鬼畜モンスターだ。




俺は冷静さを取り戻し、逃げる事を決めた。



こいつは異様で怖すぎる!






「お前がスライムだからだ。」






目の前のスライムが怖くなり、そう吐き返して逃げ出そうとした俺の空気を読んでくれず、そのスライムは間髪入れずに即答した。






「ならだいじょぶですねー!私、人は殺さないので。それよりあなた、私のご主人になってくださいますか?」






コイツは何を言っているのだろう。



なんでモンスター討伐しに来たのにモンスターのご主人になるの?



そもそもこいつスライムだろ?何なのこのスライム。もうマジわかんない。






「だいじょぶですよ。私レベル300超えてるからご主人の討伐の助けになると思うので。私のご飯はコラーゲンがたっぷりなのと水分の多い果物、寝床はふかふかの毛布がいいです……」



「まてまてまてまてちょっと考えさせろ!」






何コイツ?レベル300!?意味わかんない。



なんでこんなおかしな奴がレベル300なの!?おかしいでしょ!



そもそもこんな平和な土地になんてバケモノがいるんだよ!?



怖い、嘘だろうとなんだろうと今の俺はとてつもなくこいつが怖い!



俺の職業は盗賊。こういう時のために脱走と呼ばれるスキルにかなり振り込んだ。



決意の固まった俺はその場から一目散に逃げ出した。




逃げるためにスキルポイントを振り込む奴はまあ臆病な奴くらいだろう……俺みたいにな!!



気づけばもうギルドの前に立っていた。



どうやら脱走成功、と思いたかった。






「なかなかはやいですねーご主人。私も三年ぶりにここまで頑張って走りましたよ。」






はぃぃぃーーーー!?怖ッ!?何コイツなんで付いてきてるのー!?



さっきの所からここまで3キロ、スライムならおよそ五時間かかるであろう距離を俺と同じく二分でつきやがった。



いや、息を吐いている分俺の方が劣っている。何者なんだコイツは!?






「ご主人、どうです?ここは長期契約するしか無いでしょう?レベル300超えのスライムが仲間に入るのですよ?お買い得ですよ?さらに言えば報酬は討伐時のコラーゲンに果物、お水にふかふか寝床……」






周囲の視線が異様だ。だってスライムと盗賊が話をしているのだから。


魔物と人間が仲が良い例は少なくない。



実際この三日間でも魔物と共に討伐に向かう人を見るのは百を超える。



ギルドの前という事で誰も警戒はしていない。



警戒はしてないが驚いた様子で固まっているのだが……



先程の速さがコイツの力量なら俺じゃコイツは倒せない。



しかもこんな危険な奴はこんな街中に置いとくのは危険だ。



俺の選択肢は決まってしまった。






「わかったよ!ご主人になればいいんだなそれでいいんだな!?知らねーからな貧乏生活しても知らねーからな!?」






もう周囲の目が痛い!もういいや。腹が減ったら勝手に食いに行くだろう。






「さーっすがご主人!私もがんばるですよ!」






もういやーーーー!コイツとの生活超不安!




俺の予感は的中し、この選択を今でも後悔している。









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